年下研修医の極甘蜜愛

虹色すかい

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第一章

親友、由香(3)

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「で、ちゃんとつき合うの?」


 由香が胸まである巻き髪を耳にかけて、彩の目 を覗き込むように見る。彩は、その視線から逃れるように、グラスに残ったハイボールを一気に飲み干した。


 ――本当に、わたしが悪かった。


 おいしいはずのハイボールが、ただシュワシュワと炭酸の刺激だけを残して喉を落ちていく。


 ――医局秘書として、大切な初期研修の二年間をしっかりサポートしなきゃいけないのに、わたしは一体なにをやっているのだろう。

 カラン、と空になったグラスの中で、小さくなった丸氷が鈍い音を立てる。


「つき合わない」

「なんで?」

「先生には、研修に集中してもらわないといけないから」

「仕事熱心な医局秘書さんだ。じゃあ、藤崎君のこと、嫌いってわけじゃないんだね?」

「嫌いじゃないよ。だけどわたし……、藤崎先生をそういう対象として見てない」

「藤崎君は、彩をそういう対象にしか見てないよ」

「よく分からない。わたしなんかよりいい人がたくさんいるはずなのに、なんでだろうね」

「でた、わたしなんか論。彩ってさ、なんでそんなに自己肯定感が低いわけ? あれだけ仕事もてきぱきこなして、見た目も性格もなんら問題ないのに」

「それは由香が親友の目で見てくれてるからだよ」

「あのね、彩。最近は、不眠だけじゃなくて病気でもいっぱい悩んで泣いたでしょう? だから私、彩にはたくさん笑ってほしいって思ってるんだよ」

「ありがとう。由香の優しさがしみて、涙が出そう」

「こんなことで泣かないで。涙がもったいないじゃないの」


 照れるように笑って、由香がカクテルを注文する。ほどなくして、オーナーがカクテルとハイボールをカウンターに置いた。二人が「ありがとう!」と元気な声を揃えると、オーナーは「ゆっくりしていきなね」と言い残して厨房に入っていった。


「藤崎君に病気のことは話したの?」

「ううん。不眠については成り行きで話したけど、そこまで重たい話はさすがに……」

「話してみたらいいのに。彼、全力で受け止めるんじゃない?」

「そう……、かな。でも、迷惑にしかならないと思う」

「頑固だなぁ、彩は。五年も片想いするって、彼の精神力を考慮しても並大抵じゃないよ。なにはともあれ、一線をこえたら一瀉千里。これから覚悟しておいたほうがいいわね」

「ど、どういう意味よ」


 彩が、動揺をごまかすように髪を触る。その時、スマートフォンの着信音が鳴った。画面に「藤崎先生」と表示されている。それに気づいた由香が、早く出なよと肘で彩を小突く。


「病院でなにかあったのかな。ちょっとごめんね」

「いいよ、気にしないで。ほら」


 覚悟なんて物騒な言葉を聞いたからか、さっき飲んだハイボールが喉に引っかかってごろごろいう。彩は咳払いをして画面をタップすると、「はい、廣崎です」と仕事用の声で電話に出た。

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