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12 婚約破棄
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サリントン殿下はパステルピンクのドレスに伯爵家には不釣り合いな豪華なピンクダイヤモンドのアクセサリーをつけたヒロインを舞台袖に残し壇上で徐ろに口を開く。
「マリエッタ。おまえとの婚約は破棄させてもらう。」
そう声高に叫んだ。
「何故とお聞きしてもよろしいかしら?」
こうなることを知っていたからか、冷静な声でマリエッタ様は応えた。
「第二王子である私は卒業したら結婚し夫婦で兄の補佐として活躍するのだ。その私に婚約者のおまえは苦言ばかりで寄り添おうとしなかった。側近候補のおまえ達も候補から外れてもらう。」
どうだ。と言わんばかりに鼻息荒く言い終えたサリントン殿下をチラッと見てマリエッタは冷静に
「苦言とは『婚約者を放っておいて1人の女生徒に肩入れするのはやめた方がよろしいのでは?』と言った事でしょうか?」
「そうだ。おまえは私だけでなく…アデリーナおいで。」
と舞台袖に向かい呼びかけた。呼ばれたヒロインは頬を染めてサリントン殿下の横に来ると自ら指を絡めて手を繋いだ。
それをサリントン殿下は微笑ましく見ている。そしてマリエッタに向ききつく眦を上げて
「この心優しいアデリーナに言ったそうだな。人の物を取る恥知らずな泥棒猫、卑しい雌猫などと。」
周りの生徒はざわめいていた。突然の婚約破棄。そして淑女の鑑とされているマリエッタがそんな言葉を言うとはとうてい信じられない。
それに、泥棒猫。言われてる言葉そのままではないか?婚約破棄宣言している途中なのに、見せつけるような態度なのだから。恥知らずと言われても無理はない。周りの人々は口々に話している。
孤立無援の状態なのをわかっていないのはサリントン殿下とヒロインだけだ。
マリエッタは冷静に二人を見据えて言った。
「わたくしはそのような言葉や態度で自分の価値を下げるような事いたしませんわ。それはいつの事ですの?わたくしの、いいえマキナイル侯爵家としてそこはしっかりと確認させてもらいたいのですが。」
マリエッタのその態度にイラついたサリントンはマリエッタを憎々しげに睨み顔が歪んでるヒロインに気づかず話しかけた。
「おまえのそのような態度が気に入らないのだ。アデリーナ、怖がらずとも良い。私が側にいるからいつの事か言っておやり。」
アデリーナは上目遣いでサリントンを見てから意を決したように話しだした。それを殿下は目を細めて見ている。
あ、あざとすぎる。これは見ている人たちの感想だ。それに気づかない殿下の株は下がりに下がってこれ以上下がれないだろう。
「あ、あの悪口は以前から何度も言われてましたが、泥棒猫と言われたのはマリエッタ様お一人の時で2日前の放課後です。」
ヒロインはがんばって言えたとばかりにサリントンを見上げ二人で微笑み合う。光景だけ見たら微笑ましいが、内容は微笑ましくない。
現にマリエッタは汚いものを見るように
「あら、その頃なら泥棒猫と言うはずがありませんわ。
だって、その頃は婚約の白紙撤回が成立しておりますもの。」
そしてゆっくりと口もとが弧を描く。
対称的にヒロインと殿下はキョトンとした顔になった。サリントンは激昂し
「婚約の白紙撤回?何を言っているのだ。そんな事私は聞いていないぞ。嘘も大概にしろ。」
それまで黙っていたジェイドが近寄り
「1週間ほど前に国王からお手紙が来ておりましたよね。見ておられないのですか?」
サリントンは「公務が忙しくて見る暇もなかったのだ。」と言っているが、生徒会の仕事も放ったらかしにしてヒロインと遊び歩いていたのは生徒会だけでなくここにいる生徒達は知っている。
そんなサリントンを無視してジェイドが手にしていた書類を渡す。
「恐れながらサリントン殿下。こちらに陛下より書面を賜っております。」
ひったくるように書類を見るサリントンの顔色は悪い。
「それは殿下が見られていないだろうと予測していただいてきた我がマキナイル侯爵家の長女マリエッタとサリントン第二王子の婚約の白紙撤回の書類です。」
「こちらから婚約破棄しようとしていたので好都合だ。マリエッタを傷物にしてしまったが、婚約は破棄されたのだから私はこのアデリーナと婚約する。」
持ち直した殿下とヒロインはひしっと抱き合う。そこに感情のない目を向けたジェイドが
「婚約破棄ではなくて婚約の白紙撤回です。この婚約自体はなかったことになっております。なので妹は傷物にはなりません。
余談ですが、妹は殿下との婚約の白紙撤回と同時にこちらにいるマイケル殿と婚約が結ばれております。
更にこちらが…」
と胸元から新たな書類を出した。
「マリエッタ。おまえとの婚約は破棄させてもらう。」
そう声高に叫んだ。
「何故とお聞きしてもよろしいかしら?」
こうなることを知っていたからか、冷静な声でマリエッタ様は応えた。
「第二王子である私は卒業したら結婚し夫婦で兄の補佐として活躍するのだ。その私に婚約者のおまえは苦言ばかりで寄り添おうとしなかった。側近候補のおまえ達も候補から外れてもらう。」
どうだ。と言わんばかりに鼻息荒く言い終えたサリントン殿下をチラッと見てマリエッタは冷静に
「苦言とは『婚約者を放っておいて1人の女生徒に肩入れするのはやめた方がよろしいのでは?』と言った事でしょうか?」
「そうだ。おまえは私だけでなく…アデリーナおいで。」
と舞台袖に向かい呼びかけた。呼ばれたヒロインは頬を染めてサリントン殿下の横に来ると自ら指を絡めて手を繋いだ。
それをサリントン殿下は微笑ましく見ている。そしてマリエッタに向ききつく眦を上げて
「この心優しいアデリーナに言ったそうだな。人の物を取る恥知らずな泥棒猫、卑しい雌猫などと。」
周りの生徒はざわめいていた。突然の婚約破棄。そして淑女の鑑とされているマリエッタがそんな言葉を言うとはとうてい信じられない。
それに、泥棒猫。言われてる言葉そのままではないか?婚約破棄宣言している途中なのに、見せつけるような態度なのだから。恥知らずと言われても無理はない。周りの人々は口々に話している。
孤立無援の状態なのをわかっていないのはサリントン殿下とヒロインだけだ。
マリエッタは冷静に二人を見据えて言った。
「わたくしはそのような言葉や態度で自分の価値を下げるような事いたしませんわ。それはいつの事ですの?わたくしの、いいえマキナイル侯爵家としてそこはしっかりと確認させてもらいたいのですが。」
マリエッタのその態度にイラついたサリントンはマリエッタを憎々しげに睨み顔が歪んでるヒロインに気づかず話しかけた。
「おまえのそのような態度が気に入らないのだ。アデリーナ、怖がらずとも良い。私が側にいるからいつの事か言っておやり。」
アデリーナは上目遣いでサリントンを見てから意を決したように話しだした。それを殿下は目を細めて見ている。
あ、あざとすぎる。これは見ている人たちの感想だ。それに気づかない殿下の株は下がりに下がってこれ以上下がれないだろう。
「あ、あの悪口は以前から何度も言われてましたが、泥棒猫と言われたのはマリエッタ様お一人の時で2日前の放課後です。」
ヒロインはがんばって言えたとばかりにサリントンを見上げ二人で微笑み合う。光景だけ見たら微笑ましいが、内容は微笑ましくない。
現にマリエッタは汚いものを見るように
「あら、その頃なら泥棒猫と言うはずがありませんわ。
だって、その頃は婚約の白紙撤回が成立しておりますもの。」
そしてゆっくりと口もとが弧を描く。
対称的にヒロインと殿下はキョトンとした顔になった。サリントンは激昂し
「婚約の白紙撤回?何を言っているのだ。そんな事私は聞いていないぞ。嘘も大概にしろ。」
それまで黙っていたジェイドが近寄り
「1週間ほど前に国王からお手紙が来ておりましたよね。見ておられないのですか?」
サリントンは「公務が忙しくて見る暇もなかったのだ。」と言っているが、生徒会の仕事も放ったらかしにしてヒロインと遊び歩いていたのは生徒会だけでなくここにいる生徒達は知っている。
そんなサリントンを無視してジェイドが手にしていた書類を渡す。
「恐れながらサリントン殿下。こちらに陛下より書面を賜っております。」
ひったくるように書類を見るサリントンの顔色は悪い。
「それは殿下が見られていないだろうと予測していただいてきた我がマキナイル侯爵家の長女マリエッタとサリントン第二王子の婚約の白紙撤回の書類です。」
「こちらから婚約破棄しようとしていたので好都合だ。マリエッタを傷物にしてしまったが、婚約は破棄されたのだから私はこのアデリーナと婚約する。」
持ち直した殿下とヒロインはひしっと抱き合う。そこに感情のない目を向けたジェイドが
「婚約破棄ではなくて婚約の白紙撤回です。この婚約自体はなかったことになっております。なので妹は傷物にはなりません。
余談ですが、妹は殿下との婚約の白紙撤回と同時にこちらにいるマイケル殿と婚約が結ばれております。
更にこちらが…」
と胸元から新たな書類を出した。
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