りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!

ひつじのはね

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137話 一石何鳥?

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「おいおいおい、いたいけな幼児が頼んでんのによぉ、血も涙もねえな?!」
「困ります、ちゃんと決まった条件がありますから」
「だからそこをなんとかしてくれって、頼んでるんだろがよぉ」

因縁をつけるラザクの口元に、ぺちりとファエルを貼り付け、向き直って頭を下げた。

「めめなさい……知やなかった」
「ううん! 大丈夫大丈夫、ぼうやはいいのよ! でもごめんね、決まりがあるから入れてあげることはできないのよ。魔法を使うところだから、危ないしね」

困った顔をする『儀礼の間』職員さんに、こくりと頷いた。
ラザクに連れられるまま儀礼の間に入り込んだはいいものの、ほどなくして見つかって、こうして文字通り摘まみだされた次第だ。
なぜ、こそこそ人目を忍んで行くのだろうと思ったけれど、どうやら儀礼の間に入っていいのは、きちんと申請し認められた人だけらしい。もちろん、金銭の支払いも必要。

支払いだけならなんとかなると思ったのだけど、ラザクは魔法を使えないのでそもそも資格なし。なんて使えない大人なのか。そして、6歳以上でなければ、大人同伴でもダメと言われてしまった。
ある程度魔力を認識して、魔道具などが使える年齢でないと、儀礼の間で魔力が混ざったりして悪影響を及ぼす懸念があるからだとか。

私は魔力を認識できるようになったし、問題ないのだけど。
でも、そういうルールだと言われれば仕方がない。
……それに、必要なものは見た。
ラザクもたまには役に立つ。リトなら決して儀礼の間に入れなかっただろうから。
一瞬悪い笑みを浮かべた私に、職員さんが訝し気な顔をする。

「危ないから、もう入っちゃダメだよ」
「でもりゅー、召喚じゅちゅしようと思って」
「あらあら、そうなのね。だったら、もう少し大きくなってからね。待ってるからね」

にっこり微笑んだ職員さんを見上げ、可能な限り情報を得ておこうと話を引っ張った。

「りゅー、魔法陣かける。でも、詠唱しやない」
「そっか、魔法陣ってカッコイイもんね。私も練習したなあ。詠唱なら……ちょっと待ってね」

一旦事務所の部屋へ戻った職員さんが、紙切れを手に戻って来た。

「読めるかな? お家の人に読んでもらったらいいよ。召喚の詠唱は一回使いきりだからね、一応売ってるけど安いし、施設利用料に含まれるものだから……あげるよ」

はい、と渡された紙をまじまじと見て、職員さんを見て。
目をまん丸にした。
くれる……これを?!

「お目目が零れて落ちそうだよ?! そんなにビックリすることじゃないから!」

大笑いする職員さんに、深々と頭を下げた。

「このご恩、決ちて……」
「あはは、大丈夫大丈夫。あっ、こんにちは。ご利用予約の方は――」

丁寧に礼を述べようとしたら、どうやら利用者が来たらしい。対応の合間にまたねと手を振られ、邪魔を察してすごすごその場を後にした。

安いのなら、私にも支払えたのに。
でも、好意で渡してくれたなら、お金を渡さない方がいいのかもしれない。
わくわくする心地で、もらった紙を眺めた。

「ほーら、間違いなく儀礼の間には入っただろ? 条件達成とみなしていいな! 次、本だろ、行くぞ!」
「りゅー、歩ける」

抗議を無視して私を小脇に抱え、ラザクは小走りで本屋を目指す。
だけど、今思えば魔法書があっても高いと買えないのでは。私もラザクも。

ほどなくして到着した、暗くて小さな店。
紙と皮と、インクと木の匂い。
図書館にも似た匂いに、ホッと表情を寛げた。この匂いは好きだ。

「ほらよ、てめえで探すんだな。今回は連れて行くっつう条件だったろ。さっさとレシピ寄越せ」

確かに、そう言った。だけど、以前は魔法書を入手したら、という条件だったのだから探してくれてもいいのに。本当にそういう所ばかり、細かく抜け目ない。

「後で」
「なんでだよ?!」
「れちぴ、説明ひちゅよう」

さっきの職員さんに渡せる何かにしよう。そうすれば一石三鳥だ。
レシピについて考えを巡らせながら、視線は忙しく棚を辿る。

「ふぁえるも、探ちて」
「よしきた! 我も久々に人の魔法書見たい!」

パタタッと飛んで行ったファエルは、こういう時は頼もしい。
よし、私も可能な限り視覚と処理能力に意識を集中して。まずは背表紙の情報だけでいい。
ひと目で視界に入る棚三段分、かかる時間は……一秒。
ない、ない、ない。
ない――あ、『買うべき魔道具七選』、『暮らしに通ずる生活魔法の知恵』。望むものと違うけれど、一応覚えておこう。

ス、ス、スと視線を動かしながらそこらへ置かれている本もチェックしつつ、移動する。
それっぽいものもあったけれど、開いてみると実践方法ではなく謎の独自理論だったり。なかなか、実技本はないものだ。

「「あ!」」

伸ばした手の先に、ファエルがぺたっと貼りついた。
気付いたファエルと頷き合って、その一冊を抜き出してみる。
『ゼロから学ぶ、魔力操作ステップアップ』。薄くて文字が大きいところを見るに、低年齢向けなのだろう。大分使い込まれた雰囲気がある。
いそいそカウンターへ持って行くと、寝ている人を揺さぶった。

「りゅー、これほしい!」
「……うぅん? 随分小さな客だな。ああ……魔法教本か。兄弟が使ってんのか? よく見つけたなあ」

大あくびした店員らしき人が、私の指し出した本を裏表返して見て、そう言った。
やはり、教科書的な用途で使われていたものらしい。そう珍しいものでもないから、と告げられた値段は思ったより手の届く範囲だ。

「りゅー、今、お金ない」
「はあ? ねえのかよ。シッシ、親に金もらってから来い」
「お金、もってくるから、本あじゅかってて」
「そうそう売れねえから心配すんな。まあ、明日までなら取り置いてやるから、早く金持って来な」

店員はやる気のなさそうな様子で再びカウンターに伏せてしまったけれど、私は大きく頷いて店を飛び出した。

「らざく! りゅー、お金ひちゅよう!」
「は? なんだなんだ?!」
「りゅー、だから、らざく雇う」
「はぁー? 何様のつもりだよ、おっけーバッチ来いやぁ! このラザク様、金になるなら身だって売ってやらあ!」

ラザクの身はいらないけど、腕はいる。
ギルドでチェックしていた依頼用紙を思い浮かべ、適切な値段を計算しつつ、必要経費と時間の算段をつける。
レシピ、としては微妙かもしれないけど、使える知識だろう。
これで、一石四鳥。私は、結果を思い浮かべてによによ笑みを浮かべたのだった。





「リトさん、助かりました! あの、魔物素材は本当にいいんですか?! 時価によってはお支払いした以上になるかもしれませんよ?!」
「ああ、別にいい。それより、こっちの方が喜びそうだしな」

礼に、とたくさんもらった食べ物袋を掲げて、リトは手を振った。
少し遅くなったが、これだけ土産があれば上々だろう。
既に日の落ちた港は、まだたくさんの人で賑わっている。
今日は屋台ですませるか、と足を向けて、ふと既視感を覚えた。

屋台の並ぶ一角で、一体、何が売られているものか、やたらと人の集まるそこ。
蛇行する長蛇の列とは別に、野次馬で店の周囲が埋まっている。
そんなはずはない、と思いはするものの、まさか、とも思う。
大きな体で人波をかき分け、リトは嫌な予感をひしひし感じつつ店へと歩み寄った。



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