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番外編
大雨の日
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お墓参りが終わって斎藤の家についた頃、突然大雨が降ってきた。僕たち3人は雨を見ながら少し寂しくも懐かしい表情をしていた。「懐かしいわね。あの時も大雨が降ったもの。」
お茶を運んできた斎藤のお母さんが僕たちに語りかけてきた。
「懐かしいです。私たち皆大泣きしました。」
「そうだったの。響香、愛されていたのね。」
そういって微笑むと
「よかったら、あの子の部屋、見てってください。あの時から時間が止まったままなんです。」
そうして言われるがままに斎藤の部屋に行った。お母さんが言った通り、あの頃から何一つ変わってないようだった。ただ僕たちは呆然と立っているだけだった。すると斎藤のお母さんから一冊のノートが手渡された。
「他の二人には申し訳ないけど、田辺くんに読んでほしいの。家に帰ったら読んでみて。」
そう言われて僕は音羽と楽の方を見た。二人は笑顔で頷いてくれた。
「分かりました。」
そしてお母さんは一礼して、下へ行ってしまった。僕たちは斎藤の部屋であの頃の話をした。
「あの時の光景とか、気持ちは今でも忘れないわ。」
「そうっすね。」
「天はいじのわるいものだな。まるであの頃を思い出させるかのように雨をふらせて。」
そうして三人は窓を見上げた。
10年前…
大雨が降っている。2月に雨なんてなかなかない。退部したはずの僕と音羽はいつもの部室に集まっていた。斎藤のことを心配しながらも僕たち三人はひたすらにピアノを弾いていた。しばらくして部室に来たことがない顧問の先生がきた。なぜか、嫌なことに斎藤のことが脳裏によぎった。
「斎藤さんが…亡くなったって。」
そのまま空間が凍りついた。誰もなにも話さずにただ呆然と先生の顔を見つめていた。そしてやっと楽が口を開いた。
「嘘でしょ?先生。」
「本当よ。」
それを聞いた音羽は顔を覆って泣き出した。
「嫌…嫌よ。響香ちゃんは、死んでないわよ!!」
「そうだ!響香ちゃんは死んでない!生きてる!!もう少ししたらまたここに来て、またピアノ弾いてるって!先生も冗談が上手いんだから。」
そう言いながら楽は涙を流していた。僕はなにも言えずに目にたくさんの涙をためながら下を向いたままだった。拳をギュっと握って
「斎藤は…戻ってこない…。」
そう言うと二人は僕を見た。
「何言ってんの!?あんたが一番響香ちゃんのこと大好きなんでしょ!?!?そんなこと言っていいと思ってんの!?」
「そうだよ!センパイ、ずっと響香ちゃんのこと気にしてたじゃないっすか!!」
「うるさい!!!!」
そういうと二人は黙り混んだ。
「仕方ないだろ。僕だって信じたくない。彼女に会いたいよ…。」
それっきり涙が邪魔をして何も話せなかった。二人も僕の涙を見てまた泣き出した。大声で、これ以上涙が出ないぐらいに。いつも活気に満ち溢れていた部室はその話を聞いた瞬間、悲しみと絶望と寂しさが部屋に広がってしまった。
お茶を運んできた斎藤のお母さんが僕たちに語りかけてきた。
「懐かしいです。私たち皆大泣きしました。」
「そうだったの。響香、愛されていたのね。」
そういって微笑むと
「よかったら、あの子の部屋、見てってください。あの時から時間が止まったままなんです。」
そうして言われるがままに斎藤の部屋に行った。お母さんが言った通り、あの頃から何一つ変わってないようだった。ただ僕たちは呆然と立っているだけだった。すると斎藤のお母さんから一冊のノートが手渡された。
「他の二人には申し訳ないけど、田辺くんに読んでほしいの。家に帰ったら読んでみて。」
そう言われて僕は音羽と楽の方を見た。二人は笑顔で頷いてくれた。
「分かりました。」
そしてお母さんは一礼して、下へ行ってしまった。僕たちは斎藤の部屋であの頃の話をした。
「あの時の光景とか、気持ちは今でも忘れないわ。」
「そうっすね。」
「天はいじのわるいものだな。まるであの頃を思い出させるかのように雨をふらせて。」
そうして三人は窓を見上げた。
10年前…
大雨が降っている。2月に雨なんてなかなかない。退部したはずの僕と音羽はいつもの部室に集まっていた。斎藤のことを心配しながらも僕たち三人はひたすらにピアノを弾いていた。しばらくして部室に来たことがない顧問の先生がきた。なぜか、嫌なことに斎藤のことが脳裏によぎった。
「斎藤さんが…亡くなったって。」
そのまま空間が凍りついた。誰もなにも話さずにただ呆然と先生の顔を見つめていた。そしてやっと楽が口を開いた。
「嘘でしょ?先生。」
「本当よ。」
それを聞いた音羽は顔を覆って泣き出した。
「嫌…嫌よ。響香ちゃんは、死んでないわよ!!」
「そうだ!響香ちゃんは死んでない!生きてる!!もう少ししたらまたここに来て、またピアノ弾いてるって!先生も冗談が上手いんだから。」
そう言いながら楽は涙を流していた。僕はなにも言えずに目にたくさんの涙をためながら下を向いたままだった。拳をギュっと握って
「斎藤は…戻ってこない…。」
そう言うと二人は僕を見た。
「何言ってんの!?あんたが一番響香ちゃんのこと大好きなんでしょ!?!?そんなこと言っていいと思ってんの!?」
「そうだよ!センパイ、ずっと響香ちゃんのこと気にしてたじゃないっすか!!」
「うるさい!!!!」
そういうと二人は黙り混んだ。
「仕方ないだろ。僕だって信じたくない。彼女に会いたいよ…。」
それっきり涙が邪魔をして何も話せなかった。二人も僕の涙を見てまた泣き出した。大声で、これ以上涙が出ないぐらいに。いつも活気に満ち溢れていた部室はその話を聞いた瞬間、悲しみと絶望と寂しさが部屋に広がってしまった。
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