隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

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1年生編:1学期

第16話 期末テスト発表

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 午前中の授業が終わり、昼休みのチャイムが鳴り響いた。
 澄んだ電子音が途切れた瞬間、それまで静かだった教室の空気が一気に“昼休みモード”へと切り替わる。

 椅子が床を滑る音、弁当箱を取り出す音、友達同士の笑い声。
 廊下では、購買へ向かう生徒たちが勢いよく駆け出す足音が重なり、月曜とは思えないほどの活気が満ちていた。

 晴は身体を大きく伸ばし、背中の関節を鳴らすようにしてから、深い息をついた。

「……お腹減ったー」

 間延びした声に、すぐ近くからくすっと笑い声が返ってくる。

「やっぱり言うと思った」

 向かいの席に腰を下ろした美羽が、軽く頬を緩めて晴を見つめる。
 ふわりと揺れた桜色の髪が窓から差し込む昼の光を反射し、晴の机に淡く柔らかい影を落とす。

「晴、午前中ずっとぼーっとしてたよ?ノート、途中から書いてなかったでしょ?」

「う……見られてたか」

「見てなくても分かるもん。“心ここにあらず”って感じだったよ?」

 指摘されるほど、午前中の晴は集中力が散漫だった。
 ここ数日の出来事──ライブの余韻、紗耶の転校、美羽に言われた言葉。
 全部が頭の中でぐるぐる回って、授業の内容がまるで入ってこなかった。

 美羽に苦笑いしようとしたそのとき、教室のドアがガラリと開いた。

「はい、みんな座れー。昼休みだけど大事な連絡があるぞー」

 担任の先生ののんびりした声が教室中に響き、生徒たちのざわめきが波のように静まっていく。

「来週から期末テストだ。範囲のプリント配るから、しっかり確認しろよー」

「「……うわぁ」」

 クラスのあちこちから、小さな悲鳴とため息が同時にこぼれる。
 賑やかだった空気が、まるで重しを乗せられたように一気に沈んだ。

 晴は渡されたプリントを開き、目を細める。

「範囲、広……。ていうか覚えるところ多すぎだろ、これ」

 隣でプリントを見ていた美羽は、淡々と確認しながら「ふーん」と肩をすくめた。

「うん、中間テストの時より範囲が広いね。でもまあ、このくらいなら普通かな」

「なんでそんな余裕なの……?」

「焦る必要ないよ。ちゃんとやれば点取れるし。晴も……ちゃんと“やれば”ね?」

「ぐっ……」

 完全に正論。反論の余地がない。
 晴は肩を落としつつ、プリントから目をそらした。

 一方で、少し離れた席では、紗耶が配られたプリントを真剣に見つめていた。
 金色の髪が窓からの光を受けてふわりと揺れる。

「……仕事との両立、大丈夫かな。最近撮影続きで、あんまり寝れてなくて」

 ぽつりとこぼれたその声は弱々しく、どこか不安を帯びていた。
 晴は隣へ体を傾け、心配そうに声をかける。

「黒瀬さん、午前中も何回かあくびしてたし……無理はしないようにね」

「うん……。でもね、学生でもあるから。テストはちゃんと受けたいの!」

 疲れが見える顔なのに、笑みだけは前向きで強かった。
 その真っ直ぐさに、晴は胸の奥が少し熱くなる。

 担任の先生が話を終えると、教室のあちこちで机を寄せる音が響き始めた。

「今日から勉強計画立てようぜー!」
「ちょ……数学の範囲多すぎん?」
「うわ、これ無理だって……!」

 悲鳴と笑い声が入り混じり、テスト前特有の混乱と活気が広がっていく。
 美羽は弁当箱を開け、箸で卵焼きをつまみながら晴へ問いかけた。

「ねえ晴。テスト勉強、どうするつもりなの?」

「どうするって……まあ、ギリギリでやる……とか?」

「はい出た。毎回それで後悔するやつ」

「うっ……」

 ぐさっと刺さる言葉に、晴は目をそらす。
 しかし、美羽はくすっと笑い、少しだけ優しく言葉を続けた。

「でもね。今回は私、しっかり勉強しようと思っているんだ。だから放課後、ちょっと残って勉強するつもりだよ」

 その言葉に晴は目を瞬いた。

「え、放課後……?」

「うん。晴も……もし分かんないところあったら教えるよ?」

「え、教えてくれるの?」

「もちろん。晴、数学は得意だけど英語は壊滅的だもんね?」

「聞こえないふりしたら怒る?」

「怒るよ?」

 美羽の声はいつもより少し柔らかく、どこか楽しそうだった。
 晴は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じる。

 その二人のやり取りを静かに見ていた紗耶が、二人に声をかけた。

「……よかったら、私も一緒に勉強したいな」

 その言葉に、美羽がぱっと顔を向ける。

「紗耶は忙しいでしょ? ほんとに大丈夫?」

 紗耶は小さく首を振り、穏やかな笑みを浮かべた。

「今日はこの後、予定ないから大丈夫!私、一人だとすぐ考え事しちゃって.....だから、誰かと一緒のほうが集中できると思うんだ。」

 その控えめで、けれど素直な弱さを見せる姿に、晴は胸が締めつけられるような気持ちになる。

(……すごい人なのに。でも、ちゃんと悩んで、ちゃんと不安も抱えてるんだ)

「じゃあ……三人でやるか。美羽が教えるの上手いし」

「ちょ、晴……“上手い”って、なんか恥ずかしいじゃん」

 美羽の頬がうっすら赤くなる。その反応に、紗耶がふわっと笑った。

「ふふっ……私、二人と一緒なら頑張れそう」

 期末テスト。
 嫌な響きのはずなのに、なぜか少しだけ違って聞こえた。

 晴は期末テストの範囲が書かれたプリントを見下ろし、ゆっくりと息を吐く。

(……まあ、悪くないかもな)

 めんどうだと思っていたテスト勉強。
 でも、晴は美羽と紗耶が一緒なら、きっと乗り越えられる。
 そんな根拠のない自信が、晴の心に静かに芽生え始めていた。
 
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