婚約破棄されたストレスで女装した僕が聖女の力に目覚めた。

ねお

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女装と勘当

「わぁ・・・僕じゃないみたい」

 僕は、姿見に映った自分の姿を見つめていた。

 そこには美少女が映っていた。

 僕は、出来心で、二つ年下の妹の服を着てしまったんだ。
 薄い化粧までほどこして、髪をヘアピンで止めたその姿はどこからどう見ても女の子だった。

 ・・・なんで化粧の仕方を知ってるのかというと、フラン嬢の化粧を僕が手伝っていたからだ。僕は彼女の付き人のように扱われていたから、ダンスパーティーとかに一緒に出席した時とかで化粧が崩れた時には僕がちょくちょく直していた。その結果、僕のメイク技術はなかなかのものになっていたのだ。


「はぁ・・・。本当に僕が女の子だったら良かったのに」


ガチャ


「え?」

 不意に部屋のドアがノックも無しに開けられた。
 僕は思わずドアの方を見ると・・・

 硬直した父がいた。

「あ、父上・・・」
「お、お前・・・スレイか!?なぜ女の恰好している!!!」

 僕の女装姿に驚いた父は、今度は顔を真っ赤にしていた。
 さっきよりも激怒していた。

「こ、これは・・・」

 言い淀んだ僕に対して、父は怒鳴り声を上げた。

「お前はもう俺の息子ではない!家から追放する!とっととここから出ていけぇ!!!」



・・・



「う、うううう」

 僕はそのまま父に家を追い出されてしまった。駆け付けた母も烈火のごとく怒り、擁護してくれなかったんだ。

 そして僕は、女装したままの恰好でとぼとぼと街中を歩いていた。

 これから僕は・・・どうすれば・・・。

 肩を落として下を向いて歩いている僕の足取りは重い。
 伯爵令息として生きていた僕だが、そんな肩書を失ってしまうと無力だ。悪名高いフランの婚約者であった僕は友達もいなかった。


「キャアアア!」

 路地裏の方から、女性の悲鳴が聞こえてきたんだ!
 街の人もただならぬ様子に、そちらを見ていた。
 僕は気づいたら、悲鳴の上がった方へ走っていた。身体が自然と動いていたんだ。



 そこには、お婆さんが倒れていた。近くには小さな女の子がお婆さんの身体にしがみついていた。

「お婆ちゃん!しっかりして!お婆ちゃあああん!」

「お婆さん!大丈夫ですか!?・・・あぁっ!!」

 2人に駆け寄って、お婆さんの身体を起こした僕だったが、思わず悲鳴を上げてしまった。
 お婆さんのお腹から、血がドクドクと流れていたからだ。

「う、うぅぅ。お婆ちゃん・・・スリにバッグを・・・取られて・・・ナイフで・・・」

 お婆ちゃんの孫と思われる女の子が涙を流しながらそう言っていた。

 ・・・これはナイフの刺し傷か。この血の量では、もう・・・・

 お婆さんの顔色はどんどん土色に変わっていく。

 この傷では、助からないだろう・・・。

「お婆ちゃん!お婆ちゃああああん!」

 女の子もお婆さんが助からないことがわかっているのだろう。
 お婆さんに抱き着いて泣きじゃくっている。

 ・・・僕には、このお婆さんを助けることができない・・・!

 僕にできることは神に祈ることくらいだった。

 神様!どうか・・・お婆さんの命を助けてください!

 目をぎゅっと瞑って、そう念じる僕。神様にお願いしても、どうしようもないことはわかっている。わかっているけど・・・他にどうすることもできないんだ。だから・・・

 そう思っていた僕だったが、不意に、眩しさを感じた。

 目を瞑っているのにも関わらずだ。

 異変に気付いた僕は目を開けると・・・・


 天からキラキラとした光が、お婆さんに降り注いでいた。
 そして・・・

「・・・おや、私は・・・」

 なんと、お婆さんが目を開けたんだ!土色だった顔色には赤みが差していた。

「お婆ちゃん!お婆ちゃあああああん!」

 お婆さんが目覚めたことで、女の子は今度は嬉しさで号泣していた。
 なんでかはわからないけど、お婆さんは助かったようだ。

 僕の目からも、女の子がお婆ちゃんに縋りついて泣く姿を見て、ホロリと涙が零れた。
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