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くもいの館 前編
5.
しおりを挟むまーたデカイ屋敷きたよ。
職場の屋敷とまではいかないが、此処も大きな洋館だ。敷地をぐるりと囲った高い鉄柵は総長何メートルなのか。手入れの行き届いた庭を眺めながら遠い目で思う。
玄関の横のインターホンを押すと、リンゴーンとこれまた映画とかドラマの中でしか聞かないような重厚な音が鳴った。
屋敷の中から軽い足音がだんだんと近付き、扉ががちゃりと開かれた。
「いらっしゃい。お待ちしていたわ」
ふわりと長い髪と丈の長いスカートの裾が揺れた。
おわ、美人…。
現れたのはひとりの女のひとだった。ふわふわと波打つ腰までの亜麻色の髪に、小さな顔に収まるパーツの配置はすべて完璧。まるで西洋人形のようだ。おそらく日本人ではない。日本語で出迎えられたし、ハーフだろうか。
思わず見惚れていると、猫のように大きな目が私を向き、それこそお気に入りのオモチャを見つけた猫のようにキラキラと光った。
「まああ…! 可愛らしい。気に入ったわ。ちょっと年齢はくっているけれど、気にしなくてよ」
「あ?」
今なんつった? 可愛らしい声ですげえ失礼な事を言われた気がするけど、幻聴か?
私が物騒な気配を発する横で、ひつじさんがにこやかに言った。
「こんにちは。御機嫌麗しく」
彼女が今初めて気付きました、とばかりにひつじさんを向く。途端に花びらのようなくちびるがつまらなそうにツンと尖る。
「あら…、あなたも来たの。呼んだ覚えはないけれど?」
ここに来るまでの迷いのない足取りからも感じていたが、ひつじさんはどうやらこの屋敷に来るのは初めてではないようだ。美女の口ぶりから、彼らが顔見知りであることがわかる。
「彼女は新入社員の方ですので、何かあれば大変ですから」
明らかに歓迎していない態度の美女にも表情ひとつ崩すことなくひつじさんが言う。
美女は面白くなさそうにつんと顔を背けた。
「まあいいわ。さあ入ってくださいな」
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