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第一章 僕の外れスキルは『うし改』 ~タウラス公国のアルデバランの場合
第12話 崩壊が残したもの
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森の中を走り亀の甲羅の家に向かう途中に、さっきの自称『狩人』の男の後姿が見えた。
ん? こんな森の中に何の用だろう? でもこんな所まで来られると言う事はある程度の実力はあるみたいだ。僕は気になり『ミニプチタウロス』に変化して後を付けた。ある場所に来るとたき火を始めた、何かをそこに投げ入れると少し色の付いた煙が立ち昇った。
暫くすると三人の男達が突然現れた。長い耳に弓を持ったエルフ達が……。
さっき適当に言った事が当たっていたみたいだな。
「呼び出されて来てみれば、うまくいった、と言う訳ではなさそうだな」
「すまない、もう少しだったんだが邪魔が入った」
「邪魔? そろそろ領主が村に来るって話だったが、それか?」
「いや、邪魔したのは領主じゃなく牛の魔物だ」
「牛の魔物、ミノタウロスの事か?」
「ああ、だが、ただのミノタウロスではない、喋るミノタウロスだ」
「喋るミノタウロスだと! もしかして魔人族の生き残りか?」
ん? 魔人族? 生き残り?
「違うと思う、本人はスキルだと言っていた」
「なんだ、ただのスキルか、『獣化』や『魔獣化』のたぐいだろ」
「でも強いぞ、全滅だ、領主の騎士共が手も足も出なかった」
「ふん、たかが下等種族同士の戦いだろ、恐るるに足らずさ、まあ、領主が村に来るって事で大事を取って、フェンリルだけを連れ出す作戦だったが、その領主が死んだのなら、最初の予定通りその村を襲って奪うか。これで去年に引き続き俺達ケアエノ班が狩り大会優勝だな。去年レッドドラゴンに食われたエレクトラ班の奴等も草葉の陰で喜んでくれるだろ、ぎゃはははは」
「……」
「どうした、ああ、お前も人間族だったな、下等種族呼ばわりされて不機嫌になったか? でも俺達はお前の才能を買っているんだぜ、『魔物鑑定』という魔物の詳細や弱点が分るスキルをな。しかも稀有種の判別も出来る優れものじゃないか」
なるほど、エルナトがフェンリルだと分かったのはそのスキルのおかげか。すると突然、後ろに居た一人のエルフが僕に向かって矢を放ってきた。素早く回避し、とっさに木の陰に隠れた。
「ネズミかリスだと思って、放置していたが、どうやら違うようだな。私のスキル『転移』で村に行く前に少し遊ぼうか」
前に戦った三人もそうだけど、エルフ族ってやっぱり感がいいというか、感知能力が高い人なぁ。まあでも話も聞けたし、ましてやクレタ村を襲うつもりのようだし、もういいか。
「出て来いよ、何者だ! 出て来いならそこら中の木を切り倒してもいいんだぜ」
「あっ!? 今のは、くそっ、つけられて居たのか」
「つけられて居ただと?」
僕は奴等の前に姿を現した。
「はっ? 牛の赤ん坊だと? いやお前がさっき言っていた喋るミノタウロスって、もしかしてあれの事か? ぎゃははははは、こんなのに騎士共は負けたのか? さすが下等種族は笑わせてくれるぜ。ぎゃははははは」
「いや、そうなんだが、そうじゃないんだ」
「はっ? 何を言っている?」
「だから、あの姿が全てじゃないんだよ」
「『クイックタウロス』!」
「なっ!? 黒いミノタウロスだと――もしかして冒険者殺しか?」
僕は『クイックタウロス』に変化し、地面に置いていた『プレイオネの槍』を奴等に投げつけ、それと同時に高速で走り出した。
……………………
…………
……
人間の姿に戻った僕の前には四体のミノタウロスが正座している。
「ねぇそこの元エルフのお兄さん、聴きたい事が有るんだけど、これなんだか分かる?」
僕は、道具袋の中から一本の赤い矢を取り出した。これは前に三人のエルフがレッドドラゴンの居場所を知る為に刺していた矢だ。
「ブモ? ブモ(そ、それはエレクトラ班に居た『風の精霊魔法』持ちがよく使っていた矢か? そうかお前がエレクトラ班の三人を……、詳しくは知らないが矢羽に付いている小さな石の中に精霊を閉じ込めて、位置を知ることが出来ると聞いた事が有る……くそ、何で俺はこんなのに素直に答えているんだ)」
「へー、精霊をねぇ、それでこれ僕でも使えるのかな?」
「ブモ、ブモ(俺達の中に『精霊魔法』持ちが居ないから分からない、それより、元に戻せ! この下等種族め!)」
「下等種族ねぇ……なんでそんなに偉そうなの?」
「ブモ、ブモ(それは、お前達人間族と違い、エルフ族、ドワーフ族、獣人族などの俺達亜人はジョブと言う概念がなく、ジョブがないとステータス補正が付かないのでスライムとすら戦えないお前等と違い、俺達は最初から強いからだよ)」
「そうなの? 亜人はジョブがないんだ?」
「ブモ、ブモ(そうだ、信仰する神が違うからなのかは知らないが、お前達と違ってスキルも複数持って居る。だから俺達は子供の頃から魔物と戦っているし、その魔物ですらスキルも複数持って居るんだからな!)」
「え? 人間族は一人に付き一つしか持って居ないのに?」
「ブモ、ブモ(だから下等種族なんだよ、しかも俺達は種族ごとに固有スキルを持って居る。俺達エルフ族なら『風の導』という探索系能力とか、『弓命中率アップ』だな、ドワーフ族なら『武具精製』、獣人族なら『獣魔化』などを持って居る)」
「そっか……だから強いのか。そうだ! あともう一つ。魔人族の事について教えてよ」
「ブモ、ブモ(世界中の大陸が囲んでいる海の真ん中にある、古の魔大陸と呼ばれる場所に住んでいた種族で、言葉は話すが見た目はさっきのお前の様に魔物の姿をしている者が多い、ただもう滅んだと聞いた、『勇者』に攻め込まれて『魔王』共々全滅しその時の戦いで古の魔大陸も人が住めない不毛の地になったそうだ)」
「おとぎ話で聞いたことはあるけど『勇者』に『魔王』かぁ、ちなみにその大陸に行くにはやっぱり空を飛んで行くか海を渡って行くしかないのかな?」
「ブモ、ブモ(さあ、でもそうなんじゃないのか? 俺達も別に古の魔大陸に興味がある訳じゃないからそこまで調べてない、なぁ、俺達の知っている事は話した、だから元に戻してくれよ)」
「それは出来ないよ」
「ブモ、ブモ(た、頼む、村からもフェンリルからも手を引くから、お願いします)」
四人のミノタウロスは土下座をしてきた。
「だからぁ、戻し方知らないんだってば、そうそう元人間のおじさん、『ヒアデスの街』の場所は知っているかい?」
「ブモ、ブモ、ブモ!? (あ、ああ、知っているが、まさか!?)」
「そう、じゃあ領主だったタイゲタと同じように、あの人達の後を追って一緒に街を破壊しに行って来て」
「ブモ、ブモ(な、待ってくれ、『ヒアデス領』の首都である『ヒアデスの街』なんかに行ったら騎士団に殺されてしまう)」
「んー、すぐには殺されないんじゃない? だってヒアデス領最強の騎士団長や騎士副団長も居ないし、おじさん達入れると全部で七体ものミノタウロスがいるんだから頑張れば『王都』まで行けるよ、さぁさぁ急いで行ってよ」
「ブモ、ブモ……、ブモ(くそっ、なんでこんな事に……そうだ、きっかけはあの占い師がクレタ村に行けば金を稼げると私をたきつけたから、あの人間族のフリをした獣人族の女狐め、私のレベルアップした『魔物鑑定』ではお見通しだったんだよ、それなのになぜ私はあんな奴の言葉を信じたんだ……くそっ今度会ったらぶっ殺してやる)」
四体のミノタウロスは文句を言いながらドタドタと走って去って行った。
僕は落ちている武器や装備品などを回収し目的地の亀の甲羅の家に戻った。
そして『パワータウロス』になり、またクレタ村に向かった。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「ただいま!」
ドスンッ!
もの凄い勢いで土埃が舞う、僕はクレタ村に戻り広場に僕の家、ロックタートルの甲羅を置いた。スキルが上がったからなのか僕が強くなったからなのかは分からないけど、いつの間にかロックタートルの甲羅を持ち上げられる力がついていた。
「お、おかえりなさい、ところでバラン君これ……何?」
出迎えてくれたメローペちゃんや村の人達が驚いていた。エルナトだけはそんな事を気にせず僕をベロベロ舐めているけど……はっ!? もしかして牛だから? 美味しいのか?
「これは僕が前に倒したロックタートルの甲羅だよ、森の中に置いて今までこの中で暮らしていたんだ」
「そ、そうなんだ」
「この甲羅の中にレッドドラゴンの凍らせた肉に鱗や爪や牙、あとはエルフ族が使っていた装備とか、普通の魔物の素材も沢山入っている、全部村で使っていいよ、甲羅ごとあげるよ、これでちゃんとした『狩人』を雇ったり、街で売って食料を買ったりすれば暫くは皆生活できるでしょ?」
「レ、レッドドラゴン!?……暫くどころか、これだけあれば……」
「でも、ドラゴンを倒したら領主様や王様に報告しなきゃいけないとか聞いた事が有るけど」
「しかし領主様はもう……それに今『王都』に行くのは……ほら」
「そうそう言い忘れていた、レッドドラゴンの肉は毒が混ざっているから、この特性の毒消しと一緒に煮こんで毒を取り除かないと食べちゃダメだよ」
「毒か、分かった」
「とりあえず色々小出しで近くの町に売りに行こうか」
「そうね、ついでに街から人を募集しよう」
「食べ物もあるし、これで希望が見えてきたわ」
村の皆が盛り上がっている。笑顔も戻って来た。――そろそろ僕は行こうかな。
「じゃあ皆さん、僕はこれで……もう行くね、エルナトおいで!」
「……そうか、気をつけてな」
「頑張って!」
村人達が僕にお別れを言って来る。
「バラン君、ありがとう、あっ、そうだ大事な事を伝えるの忘れていたわ」
「大事な事?」
「うん、バラン君のお母さんの事」
「母さんの? 実は僕、あの日遠くから見ていたから知っているんだよ……」
「遠くから? じゃあ声は聞こえて居なんだね」
「声は、うん聞こえなかった」
「あのね、バラン君のお母さんは最期にこう言ったの『バラン、貴方のスキルは外れスキルなんかじゃない、貴方ならきっと誰よりもうまく使いこなせる。だから生きて、そして強く優しい人になって弱い人達守ってあげてね』って」
「そうなんだ……母さんがそんな事を……」
――メローペちゃんありがとう、僕は君のおかげでまだ人で居られそうだよ。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
僕はクレタ村を出て母さん達が眠る崖の下に来ていた。
「母さんこれでいいんだよね? 僕はクレタ村を許してあげたよ、弱い人達に食糧や素材をあげて協力もしたよ。そして父さん、マイア姉さん、プレイオネ、プレア、僕とエルナトはこれから旅に出ます、もしかしたらもうここには来られないかもしれないけど……」
「エルナトそろそろ行こうか」
「わん、わん? わーん(うん、どこに行くの? 楽しみー)」
「古の魔大陸っていう魔人族が住んでいた国だよ、でも海の真ん中だから先にちょっと寄り道しないとね」
「わん? わんわん?(寄り道? どこどこ?)」
「エルナト、この匂いを追えるかい?」
僕は道具袋から一本の矢を出した。
「クンクン? わん(あれ? これはさっきのドラゴンの肉の匂いと一緒だ)」
「そう、そいつの巣を探したいんだ、もう一年くらい経っているけどドラゴンの匂いは特別そうだから、追えそう?」
「わん、わん(うん、あっちの方から匂いがする)」
「よし、行ってみよう、その巣に子供のドラゴンとか要ればいいんだけど、そしたら仲間にして飛んで魔大陸まで乗っけてもらうのに」
「わん、わん?(ドラゴンかぁ、仲間になってくれるかな?)」
「大丈夫だよ、僕のスキルを使えば。母さんも言っていただろう『僕が一番外れスキルをうまく使えるんだ』ってね」
『タウラス公国』、『うし改』のバラン編 【完】
●バランの現時点でのステータス
―――――――――――――
アルデバラン (男、16歳)
種族:人間族
ジョブ:う士
スキル:うし改 Lv8:『ミニプチタウロス』、『ジュニアタウロス』、『ガードタウロス』、『パワータウロス』、『クイックタウロス』、『マジックタウロス』、『リカバータウロス』、『マインドタウロス』
称号:『魔獣言語(一部)』、『竜殺し』、『冒険者殺し』、『丸出し』(New)
―――――――――――――
装備品:『プレイオネの槍』
―――――――――――――
ん? こんな森の中に何の用だろう? でもこんな所まで来られると言う事はある程度の実力はあるみたいだ。僕は気になり『ミニプチタウロス』に変化して後を付けた。ある場所に来るとたき火を始めた、何かをそこに投げ入れると少し色の付いた煙が立ち昇った。
暫くすると三人の男達が突然現れた。長い耳に弓を持ったエルフ達が……。
さっき適当に言った事が当たっていたみたいだな。
「呼び出されて来てみれば、うまくいった、と言う訳ではなさそうだな」
「すまない、もう少しだったんだが邪魔が入った」
「邪魔? そろそろ領主が村に来るって話だったが、それか?」
「いや、邪魔したのは領主じゃなく牛の魔物だ」
「牛の魔物、ミノタウロスの事か?」
「ああ、だが、ただのミノタウロスではない、喋るミノタウロスだ」
「喋るミノタウロスだと! もしかして魔人族の生き残りか?」
ん? 魔人族? 生き残り?
「違うと思う、本人はスキルだと言っていた」
「なんだ、ただのスキルか、『獣化』や『魔獣化』のたぐいだろ」
「でも強いぞ、全滅だ、領主の騎士共が手も足も出なかった」
「ふん、たかが下等種族同士の戦いだろ、恐るるに足らずさ、まあ、領主が村に来るって事で大事を取って、フェンリルだけを連れ出す作戦だったが、その領主が死んだのなら、最初の予定通りその村を襲って奪うか。これで去年に引き続き俺達ケアエノ班が狩り大会優勝だな。去年レッドドラゴンに食われたエレクトラ班の奴等も草葉の陰で喜んでくれるだろ、ぎゃはははは」
「……」
「どうした、ああ、お前も人間族だったな、下等種族呼ばわりされて不機嫌になったか? でも俺達はお前の才能を買っているんだぜ、『魔物鑑定』という魔物の詳細や弱点が分るスキルをな。しかも稀有種の判別も出来る優れものじゃないか」
なるほど、エルナトがフェンリルだと分かったのはそのスキルのおかげか。すると突然、後ろに居た一人のエルフが僕に向かって矢を放ってきた。素早く回避し、とっさに木の陰に隠れた。
「ネズミかリスだと思って、放置していたが、どうやら違うようだな。私のスキル『転移』で村に行く前に少し遊ぼうか」
前に戦った三人もそうだけど、エルフ族ってやっぱり感がいいというか、感知能力が高い人なぁ。まあでも話も聞けたし、ましてやクレタ村を襲うつもりのようだし、もういいか。
「出て来いよ、何者だ! 出て来いならそこら中の木を切り倒してもいいんだぜ」
「あっ!? 今のは、くそっ、つけられて居たのか」
「つけられて居ただと?」
僕は奴等の前に姿を現した。
「はっ? 牛の赤ん坊だと? いやお前がさっき言っていた喋るミノタウロスって、もしかしてあれの事か? ぎゃははははは、こんなのに騎士共は負けたのか? さすが下等種族は笑わせてくれるぜ。ぎゃははははは」
「いや、そうなんだが、そうじゃないんだ」
「はっ? 何を言っている?」
「だから、あの姿が全てじゃないんだよ」
「『クイックタウロス』!」
「なっ!? 黒いミノタウロスだと――もしかして冒険者殺しか?」
僕は『クイックタウロス』に変化し、地面に置いていた『プレイオネの槍』を奴等に投げつけ、それと同時に高速で走り出した。
……………………
…………
……
人間の姿に戻った僕の前には四体のミノタウロスが正座している。
「ねぇそこの元エルフのお兄さん、聴きたい事が有るんだけど、これなんだか分かる?」
僕は、道具袋の中から一本の赤い矢を取り出した。これは前に三人のエルフがレッドドラゴンの居場所を知る為に刺していた矢だ。
「ブモ? ブモ(そ、それはエレクトラ班に居た『風の精霊魔法』持ちがよく使っていた矢か? そうかお前がエレクトラ班の三人を……、詳しくは知らないが矢羽に付いている小さな石の中に精霊を閉じ込めて、位置を知ることが出来ると聞いた事が有る……くそ、何で俺はこんなのに素直に答えているんだ)」
「へー、精霊をねぇ、それでこれ僕でも使えるのかな?」
「ブモ、ブモ(俺達の中に『精霊魔法』持ちが居ないから分からない、それより、元に戻せ! この下等種族め!)」
「下等種族ねぇ……なんでそんなに偉そうなの?」
「ブモ、ブモ(それは、お前達人間族と違い、エルフ族、ドワーフ族、獣人族などの俺達亜人はジョブと言う概念がなく、ジョブがないとステータス補正が付かないのでスライムとすら戦えないお前等と違い、俺達は最初から強いからだよ)」
「そうなの? 亜人はジョブがないんだ?」
「ブモ、ブモ(そうだ、信仰する神が違うからなのかは知らないが、お前達と違ってスキルも複数持って居る。だから俺達は子供の頃から魔物と戦っているし、その魔物ですらスキルも複数持って居るんだからな!)」
「え? 人間族は一人に付き一つしか持って居ないのに?」
「ブモ、ブモ(だから下等種族なんだよ、しかも俺達は種族ごとに固有スキルを持って居る。俺達エルフ族なら『風の導』という探索系能力とか、『弓命中率アップ』だな、ドワーフ族なら『武具精製』、獣人族なら『獣魔化』などを持って居る)」
「そっか……だから強いのか。そうだ! あともう一つ。魔人族の事について教えてよ」
「ブモ、ブモ(世界中の大陸が囲んでいる海の真ん中にある、古の魔大陸と呼ばれる場所に住んでいた種族で、言葉は話すが見た目はさっきのお前の様に魔物の姿をしている者が多い、ただもう滅んだと聞いた、『勇者』に攻め込まれて『魔王』共々全滅しその時の戦いで古の魔大陸も人が住めない不毛の地になったそうだ)」
「おとぎ話で聞いたことはあるけど『勇者』に『魔王』かぁ、ちなみにその大陸に行くにはやっぱり空を飛んで行くか海を渡って行くしかないのかな?」
「ブモ、ブモ(さあ、でもそうなんじゃないのか? 俺達も別に古の魔大陸に興味がある訳じゃないからそこまで調べてない、なぁ、俺達の知っている事は話した、だから元に戻してくれよ)」
「それは出来ないよ」
「ブモ、ブモ(た、頼む、村からもフェンリルからも手を引くから、お願いします)」
四人のミノタウロスは土下座をしてきた。
「だからぁ、戻し方知らないんだってば、そうそう元人間のおじさん、『ヒアデスの街』の場所は知っているかい?」
「ブモ、ブモ、ブモ!? (あ、ああ、知っているが、まさか!?)」
「そう、じゃあ領主だったタイゲタと同じように、あの人達の後を追って一緒に街を破壊しに行って来て」
「ブモ、ブモ(な、待ってくれ、『ヒアデス領』の首都である『ヒアデスの街』なんかに行ったら騎士団に殺されてしまう)」
「んー、すぐには殺されないんじゃない? だってヒアデス領最強の騎士団長や騎士副団長も居ないし、おじさん達入れると全部で七体ものミノタウロスがいるんだから頑張れば『王都』まで行けるよ、さぁさぁ急いで行ってよ」
「ブモ、ブモ……、ブモ(くそっ、なんでこんな事に……そうだ、きっかけはあの占い師がクレタ村に行けば金を稼げると私をたきつけたから、あの人間族のフリをした獣人族の女狐め、私のレベルアップした『魔物鑑定』ではお見通しだったんだよ、それなのになぜ私はあんな奴の言葉を信じたんだ……くそっ今度会ったらぶっ殺してやる)」
四体のミノタウロスは文句を言いながらドタドタと走って去って行った。
僕は落ちている武器や装備品などを回収し目的地の亀の甲羅の家に戻った。
そして『パワータウロス』になり、またクレタ村に向かった。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「ただいま!」
ドスンッ!
もの凄い勢いで土埃が舞う、僕はクレタ村に戻り広場に僕の家、ロックタートルの甲羅を置いた。スキルが上がったからなのか僕が強くなったからなのかは分からないけど、いつの間にかロックタートルの甲羅を持ち上げられる力がついていた。
「お、おかえりなさい、ところでバラン君これ……何?」
出迎えてくれたメローペちゃんや村の人達が驚いていた。エルナトだけはそんな事を気にせず僕をベロベロ舐めているけど……はっ!? もしかして牛だから? 美味しいのか?
「これは僕が前に倒したロックタートルの甲羅だよ、森の中に置いて今までこの中で暮らしていたんだ」
「そ、そうなんだ」
「この甲羅の中にレッドドラゴンの凍らせた肉に鱗や爪や牙、あとはエルフ族が使っていた装備とか、普通の魔物の素材も沢山入っている、全部村で使っていいよ、甲羅ごとあげるよ、これでちゃんとした『狩人』を雇ったり、街で売って食料を買ったりすれば暫くは皆生活できるでしょ?」
「レ、レッドドラゴン!?……暫くどころか、これだけあれば……」
「でも、ドラゴンを倒したら領主様や王様に報告しなきゃいけないとか聞いた事が有るけど」
「しかし領主様はもう……それに今『王都』に行くのは……ほら」
「そうそう言い忘れていた、レッドドラゴンの肉は毒が混ざっているから、この特性の毒消しと一緒に煮こんで毒を取り除かないと食べちゃダメだよ」
「毒か、分かった」
「とりあえず色々小出しで近くの町に売りに行こうか」
「そうね、ついでに街から人を募集しよう」
「食べ物もあるし、これで希望が見えてきたわ」
村の皆が盛り上がっている。笑顔も戻って来た。――そろそろ僕は行こうかな。
「じゃあ皆さん、僕はこれで……もう行くね、エルナトおいで!」
「……そうか、気をつけてな」
「頑張って!」
村人達が僕にお別れを言って来る。
「バラン君、ありがとう、あっ、そうだ大事な事を伝えるの忘れていたわ」
「大事な事?」
「うん、バラン君のお母さんの事」
「母さんの? 実は僕、あの日遠くから見ていたから知っているんだよ……」
「遠くから? じゃあ声は聞こえて居なんだね」
「声は、うん聞こえなかった」
「あのね、バラン君のお母さんは最期にこう言ったの『バラン、貴方のスキルは外れスキルなんかじゃない、貴方ならきっと誰よりもうまく使いこなせる。だから生きて、そして強く優しい人になって弱い人達守ってあげてね』って」
「そうなんだ……母さんがそんな事を……」
――メローペちゃんありがとう、僕は君のおかげでまだ人で居られそうだよ。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
僕はクレタ村を出て母さん達が眠る崖の下に来ていた。
「母さんこれでいいんだよね? 僕はクレタ村を許してあげたよ、弱い人達に食糧や素材をあげて協力もしたよ。そして父さん、マイア姉さん、プレイオネ、プレア、僕とエルナトはこれから旅に出ます、もしかしたらもうここには来られないかもしれないけど……」
「エルナトそろそろ行こうか」
「わん、わん? わーん(うん、どこに行くの? 楽しみー)」
「古の魔大陸っていう魔人族が住んでいた国だよ、でも海の真ん中だから先にちょっと寄り道しないとね」
「わん? わんわん?(寄り道? どこどこ?)」
「エルナト、この匂いを追えるかい?」
僕は道具袋から一本の矢を出した。
「クンクン? わん(あれ? これはさっきのドラゴンの肉の匂いと一緒だ)」
「そう、そいつの巣を探したいんだ、もう一年くらい経っているけどドラゴンの匂いは特別そうだから、追えそう?」
「わん、わん(うん、あっちの方から匂いがする)」
「よし、行ってみよう、その巣に子供のドラゴンとか要ればいいんだけど、そしたら仲間にして飛んで魔大陸まで乗っけてもらうのに」
「わん、わん?(ドラゴンかぁ、仲間になってくれるかな?)」
「大丈夫だよ、僕のスキルを使えば。母さんも言っていただろう『僕が一番外れスキルをうまく使えるんだ』ってね」
『タウラス公国』、『うし改』のバラン編 【完】
●バランの現時点でのステータス
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アルデバラン (男、16歳)
種族:人間族
ジョブ:う士
スキル:うし改 Lv8:『ミニプチタウロス』、『ジュニアタウロス』、『ガードタウロス』、『パワータウロス』、『クイックタウロス』、『マジックタウロス』、『リカバータウロス』、『マインドタウロス』
称号:『魔獣言語(一部)』、『竜殺し』、『冒険者殺し』、『丸出し』(New)
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装備品:『プレイオネの槍』
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※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
ざまぁ代行いたします ―追放聖女の復讐録―
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15年間王国に尽くした聖女が、王太子の謀略によって「力を偽っていた」と断罪され、国を追放された。
海を渡った先の異国で、イレーネ・ヴァルクロアが始めたのは輸入雑貨店「月影亭」。
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「ご安心ください。後悔するのはあちら側ですわ」
謎の美少年ティオを相棒に、今日も誰かの理不尽な相手へ、元聖女が鉄槌を下す。
※短編連作です。第一章完結。第二章製作中。
追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜
ハリネズミの肉球
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「おい、城の噴水が止まったぞ!?」
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無能な王太子による身勝手な婚約破棄。
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ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。
追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!?
優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。
一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。
「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——!
今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける!
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
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