ユリとカトレアと俺~幼馴染の紹介してくれた彼女~

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

文字の大きさ
6 / 10

06_食べられない子と食べさせたい子

しおりを挟む
性懲りもなく俺は、カトレアちゃんのカレシ面してお見舞いに来ている。
彼女が眠ったままだった半年間のはいだに、幼馴染のユリと付き合い始めた。

しかも、彼女が事故にあって、入院する理由を作ったのは俺だ。
彼女を殺しかけて、人生をめちゃくちゃにした上、自分は易々と他の女と付き合っている。

俺がこの話を誰か別の人の話として聞いたとしたら、そいつを軽蔑するだろう。




ただ、俺は、今日もご飯を食べて、息をしている。
普通に生きてしまっている。
それどころか、嘘で固めまくって、あろうことかカトレアちゃんのカレシとして彼女のお見舞いに来ているのだ。

彼女が目覚めてから、みるみる痩せて言っている。
眠っている時は、点滴を受けていたからかそこまで急激な変化はなかった。

ただ、目が覚めて食事に切り替えたら、食が細いのかどんどん痩せている様なのだ。


「うー、ダイエットはもういいのになぁ……」

「食べられないんだ?」

「お腹いっぱい食べてるんだよ?」


半年も食事をしなかったら、胃も小さくなっているのかもしれない。
多くの女子に言ったら羨ましがられるのかもしれないが、食べられない子には食べられない子の悩みがあるのだった。

目に見えて腕や脚が細くなっている。
脚はパジャマで隠れているが、服のだぶつき具合で分かってしまう。


「うー、骨と皮だけになっちゃったら可愛くないぃ。智成くんもうちょっとだけ待っててね。ちゃんと太って可愛くなるからね!?」


彼女の健気さは、これの罪悪感を増大させた。
良い子であれば良い子であるほど、俺には逃げ道が無くなっていってた。


「でも、智成くんがこうしてお見舞いに来てくれるから、私は頑張れるの。智成くんが良い彼氏だねぇ」

「……」



俺はちゃんと笑えていただろうか。



こんなに健気なのに、俺は彼女を裏切り続けている。
罪悪感でどうにかなりそうだった。

ただ、リハビリしてなんとか社会復帰しようとしている彼女に別れ話をできるヤツがいるだろうか。

うぬぼれじゃなくて、彼女は俺を心の支えに頑張っている。
その杖のような物を彼女から奪っていいのか!?

同じ奪うとしても、今じゃなくていいんじゃないだろうか!?
色々な言い訳を自分の心にして、俺はなんとかこの場で笑っている。





うちに帰って、ユリに会いに行った。
まあ、会いに行くという程でもない。
マンションの隣の家がユリの家だから。

うちもユリの家も両親が共働きなので、帰りは遅めだ。
だから、学校から帰ったら、ユリと一緒の時間が長かった。



「ねえ、智成、まだ玲愛ちゃんとは別れてないの?」

「ごめん、まだ言えてない……」

「……その……やっぱり、私より玲愛ちゃんの方が……」

「違う!そうじゃないんだ!いまは……まだダメなんだ……」

「そ、そうだよね。玲愛ちゃんまだ入院してるもんね……」


俺はユリと付き合っているというのに、何か月もカトレアちゃんと別れられないでいた。
ユリへの精神的負担も大きくなっていた。

なんとかしてやりたいところだが、どうしてももう少し時間がかかると思っていた。
俺のことを信じてくれているユリだが、時間的に長くなってきているので不安になっているのも伝わってきている。

結果、ユリは段々俺に合わせるようになってきている。
俺に媚びているのだ。

俺の機嫌を損ねないように、なんでも言うことをきくようになってきていた。
こんなの本当のユリじゃないと思いつつも、俺が態度で示さないと彼女は彼女らしさをだせない。

全ては俺が悪いのだ。


俺は、どこで間違えたのだろう?
ゲームの様にセーブポイントがあれば戻ってやり直したい。

でも、それはどのタイミングまで戻れば実現できるのか……
そんなことを考えても、過去に戻ることなんて出来ないので考えるだけ無駄だ。


「ねえねえ、智成、夕ご飯作ったんだよ?」

「おお!」


そう、ユリはあれから料理の練習をして、少しずつだけどレパートリーも増えてきた。
やっぱり彼女のポテンシャルは高い。

陸上が料理に変わったら、料理の腕はかなりのものなのだ。
熱心に料理の本を調べて、ただ真似するだけじゃなく美味しさの本質を自分なりに見つけて深く研究しているようだ。

さすがというべきか、どれも美味しいのだ。
今日は、豚の生姜焼きらしい。


「うまい!」

「ほんと!?」


今まで食べていた生姜焼きって何だっんだってくらいうまい。
もはや違う料理だと言ってもいい。

料理名が違うというなら、俺は一生生姜焼きを食べずにこれを食べ続けてもいい。
それくらいうまい。


「ユリ、これ冗談じゃなくめちゃくちゃうまいな。うちの母さんにも作り方教えといてくれよ」

「ふふーん、ユリちゃんオリジナルだからねぇ」

「アレンジがあるんだ?」

「そうそう!」

「ご飯が足りなくなるうまさ!」

「智成が食べたくなったら、このユリちゃんがいつでも作ってあげるわよ!」

「うわー、優秀な彼女だ!」

「へへーん!」


料理の腕が上がるごとに、ユリの調子はまた戻ってきた。
彼女は笑顔が一番似合っている。


「いつか、『ユリ、俺に毎日ご飯を作ってくれ!』って言わせて見せるんだから!」

「ユリ、俺に毎日ご飯を作ってくれ!」

「今、言うんかーい!」

「「ははははは」」


そう、彼女とはこれくらいの軽口叩きあえるくらいがちょうどいい。


「そう言えば、智成、期末の結果どうだった?」

「うあー、美味しく食べてたのに、嫌なこと聞くなぁ」

「ごめんごめん」

「どうしたの急に、成績って」

「実は、今回学年4位だった……」

「はあーーーーーっっ!?」

「勉強頑張ったの」

「すげえ!」

「ねえ!一緒に勉強頑張って同じ大学に行こう?」


特になりたいものがある訳じゃないし、大学に行けば、あと4年間は遊んでいられる。
なによりユリと勉強するのなら楽しそうだ。

ここでふと、カトレアちゃんのことが頭をよぎった。
彼女の人生をめちゃくちゃにした俺が自分の人生を、未来を考えていいのか!?



俺に幸せになる資格はあるのか!?



そんなことを考えると急に怖くなった。
大学に行く前に俺にはしなければならないことがある。

ここまでずるずるときた関係だったが、ついに一歩前に駒が進められた。
またしても、俺の手によってではなく、別の人の手によって。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...