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06_食べられない子と食べさせたい子
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性懲りもなく俺は、カトレアちゃんのカレシ面してお見舞いに来ている。
彼女が眠ったままだった半年間のはいだに、幼馴染のユリと付き合い始めた。
しかも、彼女が事故にあって、入院する理由を作ったのは俺だ。
彼女を殺しかけて、人生をめちゃくちゃにした上、自分は易々と他の女と付き合っている。
俺がこの話を誰か別の人の話として聞いたとしたら、そいつを軽蔑するだろう。
ただ、俺は、今日もご飯を食べて、息をしている。
普通に生きてしまっている。
それどころか、嘘で固めまくって、あろうことかカトレアちゃんのカレシとして彼女のお見舞いに来ているのだ。
彼女が目覚めてから、みるみる痩せて言っている。
眠っている時は、点滴を受けていたからかそこまで急激な変化はなかった。
ただ、目が覚めて食事に切り替えたら、食が細いのかどんどん痩せている様なのだ。
「うー、ダイエットはもういいのになぁ……」
「食べられないんだ?」
「お腹いっぱい食べてるんだよ?」
半年も食事をしなかったら、胃も小さくなっているのかもしれない。
多くの女子に言ったら羨ましがられるのかもしれないが、食べられない子には食べられない子の悩みがあるのだった。
目に見えて腕や脚が細くなっている。
脚はパジャマで隠れているが、服のだぶつき具合で分かってしまう。
「うー、骨と皮だけになっちゃったら可愛くないぃ。智成くんもうちょっとだけ待っててね。ちゃんと太って可愛くなるからね!?」
彼女の健気さは、これの罪悪感を増大させた。
良い子であれば良い子であるほど、俺には逃げ道が無くなっていってた。
「でも、智成くんがこうしてお見舞いに来てくれるから、私は頑張れるの。智成くんが良い彼氏だねぇ」
「……」
俺はちゃんと笑えていただろうか。
こんなに健気なのに、俺は彼女を裏切り続けている。
罪悪感でどうにかなりそうだった。
ただ、リハビリしてなんとか社会復帰しようとしている彼女に別れ話をできるヤツがいるだろうか。
うぬぼれじゃなくて、彼女は俺を心の支えに頑張っている。
その杖のような物を彼女から奪っていいのか!?
同じ奪うとしても、今じゃなくていいんじゃないだろうか!?
色々な言い訳を自分の心にして、俺はなんとかこの場で笑っている。
うちに帰って、ユリに会いに行った。
まあ、会いに行くという程でもない。
マンションの隣の家がユリの家だから。
うちもユリの家も両親が共働きなので、帰りは遅めだ。
だから、学校から帰ったら、ユリと一緒の時間が長かった。
「ねえ、智成、まだ玲愛ちゃんとは別れてないの?」
「ごめん、まだ言えてない……」
「……その……やっぱり、私より玲愛ちゃんの方が……」
「違う!そうじゃないんだ!いまは……まだダメなんだ……」
「そ、そうだよね。玲愛ちゃんまだ入院してるもんね……」
俺はユリと付き合っているというのに、何か月もカトレアちゃんと別れられないでいた。
ユリへの精神的負担も大きくなっていた。
なんとかしてやりたいところだが、どうしてももう少し時間がかかると思っていた。
俺のことを信じてくれているユリだが、時間的に長くなってきているので不安になっているのも伝わってきている。
結果、ユリは段々俺に合わせるようになってきている。
俺に媚びているのだ。
俺の機嫌を損ねないように、なんでも言うことをきくようになってきていた。
こんなの本当のユリじゃないと思いつつも、俺が態度で示さないと彼女は彼女らしさをだせない。
全ては俺が悪いのだ。
俺は、どこで間違えたのだろう?
ゲームの様にセーブポイントがあれば戻ってやり直したい。
でも、それはどのタイミングまで戻れば実現できるのか……
そんなことを考えても、過去に戻ることなんて出来ないので考えるだけ無駄だ。
「ねえねえ、智成、夕ご飯作ったんだよ?」
「おお!」
そう、ユリはあれから料理の練習をして、少しずつだけどレパートリーも増えてきた。
やっぱり彼女のポテンシャルは高い。
陸上が料理に変わったら、料理の腕はかなりのものなのだ。
熱心に料理の本を調べて、ただ真似するだけじゃなく美味しさの本質を自分なりに見つけて深く研究しているようだ。
さすがというべきか、どれも美味しいのだ。
今日は、豚の生姜焼きらしい。
「うまい!」
「ほんと!?」
今まで食べていた生姜焼きって何だっんだってくらいうまい。
もはや違う料理だと言ってもいい。
料理名が違うというなら、俺は一生生姜焼きを食べずにこれを食べ続けてもいい。
それくらいうまい。
「ユリ、これ冗談じゃなくめちゃくちゃうまいな。うちの母さんにも作り方教えといてくれよ」
「ふふーん、ユリちゃんオリジナルだからねぇ」
「アレンジがあるんだ?」
「そうそう!」
「ご飯が足りなくなるうまさ!」
「智成が食べたくなったら、このユリちゃんがいつでも作ってあげるわよ!」
「うわー、優秀な彼女だ!」
「へへーん!」
料理の腕が上がるごとに、ユリの調子はまた戻ってきた。
彼女は笑顔が一番似合っている。
「いつか、『ユリ、俺に毎日ご飯を作ってくれ!』って言わせて見せるんだから!」
「ユリ、俺に毎日ご飯を作ってくれ!」
「今、言うんかーい!」
「「ははははは」」
そう、彼女とはこれくらいの軽口叩きあえるくらいがちょうどいい。
「そう言えば、智成、期末の結果どうだった?」
「うあー、美味しく食べてたのに、嫌なこと聞くなぁ」
「ごめんごめん」
「どうしたの急に、成績って」
「実は、今回学年4位だった……」
「はあーーーーーっっ!?」
「勉強頑張ったの」
「すげえ!」
「ねえ!一緒に勉強頑張って同じ大学に行こう?」
特になりたいものがある訳じゃないし、大学に行けば、あと4年間は遊んでいられる。
なによりユリと勉強するのなら楽しそうだ。
ここでふと、カトレアちゃんのことが頭をよぎった。
彼女の人生をめちゃくちゃにした俺が自分の人生を、未来を考えていいのか!?
俺に幸せになる資格はあるのか!?
そんなことを考えると急に怖くなった。
大学に行く前に俺にはしなければならないことがある。
ここまでずるずるときた関係だったが、ついに一歩前に駒が進められた。
またしても、俺の手によってではなく、別の人の手によって。
彼女が眠ったままだった半年間のはいだに、幼馴染のユリと付き合い始めた。
しかも、彼女が事故にあって、入院する理由を作ったのは俺だ。
彼女を殺しかけて、人生をめちゃくちゃにした上、自分は易々と他の女と付き合っている。
俺がこの話を誰か別の人の話として聞いたとしたら、そいつを軽蔑するだろう。
ただ、俺は、今日もご飯を食べて、息をしている。
普通に生きてしまっている。
それどころか、嘘で固めまくって、あろうことかカトレアちゃんのカレシとして彼女のお見舞いに来ているのだ。
彼女が目覚めてから、みるみる痩せて言っている。
眠っている時は、点滴を受けていたからかそこまで急激な変化はなかった。
ただ、目が覚めて食事に切り替えたら、食が細いのかどんどん痩せている様なのだ。
「うー、ダイエットはもういいのになぁ……」
「食べられないんだ?」
「お腹いっぱい食べてるんだよ?」
半年も食事をしなかったら、胃も小さくなっているのかもしれない。
多くの女子に言ったら羨ましがられるのかもしれないが、食べられない子には食べられない子の悩みがあるのだった。
目に見えて腕や脚が細くなっている。
脚はパジャマで隠れているが、服のだぶつき具合で分かってしまう。
「うー、骨と皮だけになっちゃったら可愛くないぃ。智成くんもうちょっとだけ待っててね。ちゃんと太って可愛くなるからね!?」
彼女の健気さは、これの罪悪感を増大させた。
良い子であれば良い子であるほど、俺には逃げ道が無くなっていってた。
「でも、智成くんがこうしてお見舞いに来てくれるから、私は頑張れるの。智成くんが良い彼氏だねぇ」
「……」
俺はちゃんと笑えていただろうか。
こんなに健気なのに、俺は彼女を裏切り続けている。
罪悪感でどうにかなりそうだった。
ただ、リハビリしてなんとか社会復帰しようとしている彼女に別れ話をできるヤツがいるだろうか。
うぬぼれじゃなくて、彼女は俺を心の支えに頑張っている。
その杖のような物を彼女から奪っていいのか!?
同じ奪うとしても、今じゃなくていいんじゃないだろうか!?
色々な言い訳を自分の心にして、俺はなんとかこの場で笑っている。
うちに帰って、ユリに会いに行った。
まあ、会いに行くという程でもない。
マンションの隣の家がユリの家だから。
うちもユリの家も両親が共働きなので、帰りは遅めだ。
だから、学校から帰ったら、ユリと一緒の時間が長かった。
「ねえ、智成、まだ玲愛ちゃんとは別れてないの?」
「ごめん、まだ言えてない……」
「……その……やっぱり、私より玲愛ちゃんの方が……」
「違う!そうじゃないんだ!いまは……まだダメなんだ……」
「そ、そうだよね。玲愛ちゃんまだ入院してるもんね……」
俺はユリと付き合っているというのに、何か月もカトレアちゃんと別れられないでいた。
ユリへの精神的負担も大きくなっていた。
なんとかしてやりたいところだが、どうしてももう少し時間がかかると思っていた。
俺のことを信じてくれているユリだが、時間的に長くなってきているので不安になっているのも伝わってきている。
結果、ユリは段々俺に合わせるようになってきている。
俺に媚びているのだ。
俺の機嫌を損ねないように、なんでも言うことをきくようになってきていた。
こんなの本当のユリじゃないと思いつつも、俺が態度で示さないと彼女は彼女らしさをだせない。
全ては俺が悪いのだ。
俺は、どこで間違えたのだろう?
ゲームの様にセーブポイントがあれば戻ってやり直したい。
でも、それはどのタイミングまで戻れば実現できるのか……
そんなことを考えても、過去に戻ることなんて出来ないので考えるだけ無駄だ。
「ねえねえ、智成、夕ご飯作ったんだよ?」
「おお!」
そう、ユリはあれから料理の練習をして、少しずつだけどレパートリーも増えてきた。
やっぱり彼女のポテンシャルは高い。
陸上が料理に変わったら、料理の腕はかなりのものなのだ。
熱心に料理の本を調べて、ただ真似するだけじゃなく美味しさの本質を自分なりに見つけて深く研究しているようだ。
さすがというべきか、どれも美味しいのだ。
今日は、豚の生姜焼きらしい。
「うまい!」
「ほんと!?」
今まで食べていた生姜焼きって何だっんだってくらいうまい。
もはや違う料理だと言ってもいい。
料理名が違うというなら、俺は一生生姜焼きを食べずにこれを食べ続けてもいい。
それくらいうまい。
「ユリ、これ冗談じゃなくめちゃくちゃうまいな。うちの母さんにも作り方教えといてくれよ」
「ふふーん、ユリちゃんオリジナルだからねぇ」
「アレンジがあるんだ?」
「そうそう!」
「ご飯が足りなくなるうまさ!」
「智成が食べたくなったら、このユリちゃんがいつでも作ってあげるわよ!」
「うわー、優秀な彼女だ!」
「へへーん!」
料理の腕が上がるごとに、ユリの調子はまた戻ってきた。
彼女は笑顔が一番似合っている。
「いつか、『ユリ、俺に毎日ご飯を作ってくれ!』って言わせて見せるんだから!」
「ユリ、俺に毎日ご飯を作ってくれ!」
「今、言うんかーい!」
「「ははははは」」
そう、彼女とはこれくらいの軽口叩きあえるくらいがちょうどいい。
「そう言えば、智成、期末の結果どうだった?」
「うあー、美味しく食べてたのに、嫌なこと聞くなぁ」
「ごめんごめん」
「どうしたの急に、成績って」
「実は、今回学年4位だった……」
「はあーーーーーっっ!?」
「勉強頑張ったの」
「すげえ!」
「ねえ!一緒に勉強頑張って同じ大学に行こう?」
特になりたいものがある訳じゃないし、大学に行けば、あと4年間は遊んでいられる。
なによりユリと勉強するのなら楽しそうだ。
ここでふと、カトレアちゃんのことが頭をよぎった。
彼女の人生をめちゃくちゃにした俺が自分の人生を、未来を考えていいのか!?
俺に幸せになる資格はあるのか!?
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