現代の奴隷は我が家の天使で神様は全力で幸せにする

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

文字の大きさ
16 / 58
奴隷との新しい生活

016奴隷の神様の生活

しおりを挟む
俺は一言で言えば偏屈なのだろう。
人とうまく接していくことができない。
色々あって、今では一人暮らしをして、大学生でもある。

別に大学に行きたかったわけじゃないが、ソフトの勉強をしたかった。
ソフトウェア、アプリ、呼び名はどうでもいいけれど、自分で作れればお金になる。
家にいながらでもお金を稼げそうな職業だ。

他にも絵をかいたり、ライターのバイトをしたり、WEBサイトの運営をしたり・・・

とにかく世の中から逃げてきた。
たどり着いたのが、この8畳ほどのワンルーム。
大学生と言っても、通信制の大学なので、動画を見るのが『授業』だ。
毎回、授業の後にテストがあるので、真剣に見る必要がある。

1つの講義で大体40分から1時間くらいかかる。
1日に4つ~5つの講義を受けるので、それなりの時間はかかる。
講義を受けている間、シロはずっとおとなしくしている。

ベッドと壁・・・というか棚との隙間があり、そこに嵌まり込んで体操座りをして床を見ている。
1日のほとんどはそんな感じだ。

虐待のトラウマなのか、気持ちの浮き沈みも激しい方だ。
明るい時はすごく明るくて楽しい感じ。
暗い時はすごく落ち込んでいて、なんとかしてあげたいと思ってしまう。

俺は、講義と講義の間には休憩を入れるようにしている。
実際の大学の授業でも休憩時間はあるし、何より集中力はそんなに続かない。

休憩の時はコーヒーをよく飲む。
時には休憩ごとにコーヒーを淹れるので、1日に4~5杯飲むこともある。
飲みすぎだろうか・・・

授業が終わってキッチンに向かうとシロが近づいてきた。
こんな時の挨拶は『お疲れ様』だろうか。

俺もシロもそんなに多弁な方じゃないので、シロは何も言わない。
だが、すごく気持ちのいい笑顔を見せてくれる。
それだけで他には何も要らないのだ。

「かみさま、コーヒー飲むの?」

「ああ、休憩だ。シロも飲むか?」

「うん・・・かみさまのコーヒー、シロがやってもいい?」

『コーヒーをやる』とは、淹れてもいいかという意味だろう。
どうせインスタントだ。
粉を入れて、お湯を注ぐだけ。
俺はいつも少しだけ牛乳を入れているが、それでも簡単な作業だ。

「シロが淹れてくれるのか?じゃあ、頼もうかな」

「わーい♪」

シロは嬉しそうにコーヒーの瓶を取り出した。
スプーンとカップを取り出したところで、きょろきょろし始めた。

「どうした?」

「・・・」

どうしたらいいのか分からないのか。

「教えてやるから一緒にやってみるか?」

「はい!かみさまのコーヒー淹れる!」

じゃあ、俺はシロのコーヒーを淹れて見せることになるのか。
シロが俺のコーヒーを淹れて、俺がシロのコーヒーを淹れる。
意味あるのか、これ。

まず、ティファールを持ってきて、ふたを開けて見せた。

「ここに水を入れるんだ。2人分だったらこの線くらいまで」

電気ポットの横にあるスリットにある目盛りを指さしながら説明した。
シロはわくわくしているのが容易にわかるくらい楽しそうだ。

電気ポットでお湯を沸かすだけで嬉しいのだったら幸せなことだ。

「かみさま、このくらい?線の上の方?下の方?」

「んー、あんまり変わらないから大体でいいよ」

「はい!」

なぜ敬礼。
シロは『分かりました』の意味で『はい』の時、時々敬礼する。
おもしろい。
そして、かわいい。

誰も教えていないけれど、テレビかなにかの影響かもしれないな。

「お湯は1分くらいで沸くからその間にコーヒーの粉をカップに入れる」

「はいっ」

文字にしたら『はい』のあとにちっちゃな『つ』が入る『はいっ』だ。
声もかわいいし、聞いていて気持ちがいいな。

「だいたい量はこれくらい。俺は1杯で十分だ」

キッチンの台の部分に少しの粉をこぼしつつも、カップに粉を入れた。

「はいっ」

今度は、『完了』の『はい』だろう。

「そうしているうちに、お湯が沸くからコップの7分目くらいまでお湯を注ぐ。熱いから落とすなよ、火傷(やけど)するからな」

「はい・・・」

そんなに緊張する作業じゃないのだけれど・・・
顔が真剣なので、何だかおかしくなってくる。

「あ、かみさまが笑った」

「あぁ、よそ見するとあぶないぞ!」

「はいっ」

お湯はこぼさずに注ぐことができた。
俺は冷蔵庫から牛乳パックを取り出しながら聞いた。

「俺は難しい顔をしてたかな?」

「真剣な顔をしてました」

まあ講義を受けていたからな。
C(C言語)の授業だったから、どんな時にそれが使えるのかとか、もっと簡単にできないかとか、色々考えながら受けるので割と真剣だったかもしれない。

「かっこよかったです・・・」

シロがスプーンを持ってくねくねしながら言った。
顔も少し赤くなっていた。

そんなことを言われたのは初めてだ。
パソコンの画面を見ているだけで褒められるなんて今までは経験がない。
『ただしイケメンに限る』と注意書きを後から付けられそうだ。


「そうか・・・ありがとう」

きっと俺も顔が赤くなっていただろうな。
顔が熱いのが分かる。

「牛乳はこれくらい・・・。コーヒーを淹れた後に入れると牛乳の風味が残る」

照れ隠しも兼ねて早速牛乳を入れて見せた。

「お湯より先に牛乳を入れると風味が落ちる気がする。お湯の温度のせいかな」

シロはカップに顔を近づけて真剣に見ていた。
目は大きいし、まつ毛が長い。
長い銀髪もシロらしくて、改めて美少女だと思わせられる。
外から入ってくる光で髪の毛が輝いている。
天使だな。

部屋では俺のTシャツをワンピースの様に着ているのが若干残念だが、それはそれで見慣れてしまったので、かわいく感じている。

「よし、できた。座って飲むか」

「はいっ♪あ、シロが持って行ってあげる」

「熱いから落とすなよ。1個ずつでいいからな」

ここで落とすようなお約束はなかった。
熱いから火傷したら大変だ。

シロはこぼさないようにコーヒーの水面を見ながら1歩1歩歩いてテーブルにカップを運ぶ。

綱渡りをしているような動きがかわいい。
こんなかわいい彼女がいたら毎日楽しいだろうなぁ。

俺とシロの関係は何だろう?

保護者と扶養家族?
親と子?
神様と天使?
引きこもり大学生とひきこもりの奴隷?

キッチン横の棚からお菓子を出しながら考えてみたが、どれも合っているようで、どれもしっくりこない感じで・・・

俺がシロを彼女にしたいと言ったら、シロはなんて言うだろうか・・・

「あ!たけのこの里!シロそれ好きっ!」

この間、アソートのお菓子をまとめ買いしておいた。
まとめ買いじゃないと通販なので、送料がもったいないのだ。
シロが見ていたのは、箱に入っているやつじゃなくて、袋に入っていて吊るされているやつの方だ。

俺が好かれているのも、このお菓子程度じゃないだろうか。
ご飯とかお菓子とかくれる親戚のオジサン的なポジションの。

俺はたけのこの里を1回分(?)ミシン目から切り離して、1個をシロに、1個を自分の前に置いた。
時間も昼の3時を過ぎていたので、おやつの時間にはちょうどいい頃だ。

「休憩ついでにおやつにしようか」

「はーい♪かみさま、開けていいですか?」

「あぁ、開けて食べていいよ」

シロは力がないので、包装を開けるのに苦戦することが多い。
これがまた見ていてほほえましい。
あんまり見ていたら可哀そうなのだが、かわいくてついつい見てしまう。

「シロ、貸してごらん」

シロからお菓子の袋を受け取ると少しだけ切れ目を入れて返した。

「あ、開いた!いただきまーす」

「はい、召し上がれ」

引きこもりの俺にこんな時間が訪れるとは。
間違いなく美少女のシロと同じテーブルについてコーヒーを飲んでいる。

ふと気づけばシロがこちらをジーっと見ている。

「どうした?」

「おいしい?」

「ん?」

「シロが淹れたコーヒーおいしいですか?」

「ああ、おいしいよ。ありがとう」

シロの目が細められ、嬉しそうな表情になった。

そして、テーブル越しに頭を出してきた。
「頭をなでろ」ということだろう。

人差し指と親指はお菓子のクズが付いているので、残りの3本指で撫でてやった。
それでも嬉しそうだったので、その嬉しさは指の本数には比例しないようだ。

「今度からシロがかみさまのコーヒーを淹れてあげるね」

「そりゃぁ、ありがとう」

なにそれ。
本気で嬉しい。
こんな美少女が毎日コーヒーを淹れてくれるなんて、メイド喫茶だったら連日大人気の大行列だ。

ぼんやり考えていると顔がにやけていたかもしれない。
シロがニヤニヤしながらこちらを見ている。

「かみさま、楽しいことを考えていた?」

「あぁ、まあね」

言われると恥ずかしくなってしまった。
それにしても、シロがメイド喫茶で働いている世界線・・・いや、この世界でも将来起こり得るのか?

家を出られない俺とシロ。
まあ、出たいと思っていないから不満ではないのだけれど、そんな将来は来るのだろうか・・・

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「ひなちゃん。 俺と結婚、しよ?」 兄の結婚式で昔、お隣に住んでいた憧れのお兄ちゃん・猪狩に再会した雛乃。 昔話をしているうちに結婚を迫られ、冗談だと思ったものの。 それから猪狩の猛追撃が!? 相変わらず格好いい猪狩に次第に惹かれていく雛乃。 でも、彼のとある事情で結婚には踏み切れない。 そんな折り、雛乃の勤めている銀行で事件が……。 愛川雛乃 あいかわひなの 26 ごく普通の地方銀行員 某着せ替え人形のような見た目で可愛い おかげで女性からは恨みを買いがちなのが悩み 真面目で努力家なのに、 なぜかよくない噂を立てられる苦労人 × 岡藤猪狩 おかふじいかり 36 警察官でSIT所属のエリート 泣く子も黙る突入部隊の鬼隊長 でも、雛乃には……?

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...