禁断のblue rose

秋村篠弥

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第4章~初めて愛され、咲き乱れ~

第4章~初めて愛され、咲き乱れ~

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 あれから、何日経っただろうか?登校からずっと1日中一緒に居たのが嘘だったかの様に、最近は姿さえ見ない。
 同じクラスなのだが、休日が明けても彼は登校してこなかった。
 ショックを受けているのは、僕も同じなのに、何故龍都がそんなに引きずるんだ。
 イラ付きさえ覚え始め、やがて僕は、まだ彼のことが気になっている事に気付いた。彼が居ない日々なんて、太陽のなくなってしまった世界の様じゃないか。
 僕は、もう一度覚悟を決めた。今度は、少し歩み寄ってみようと、そう思えた。
 彼だって、僕に嫌われない様に最後は冗談だ、なんて嘘をついてくれた。別に僕を傷つけようとして、ああ言った訳では無いんだ。むしろ、自分を知って欲しかったのに、僕は拒絶した。悪いのは僕の方なんじゃないか?
 学校が終わったら、絶対に龍都の所へ行こう。彼を、受け入れよう。彼だって、受け入れてくれたじゃないか、惨めで、何の取り柄もなかった、あの日の僕を。救ってさえくれた。イジメから。
 今度は、僕が手を差し伸べる番だ。
 学校が終わり、僕は真っ先に、龍都の家へ向かった。今日1日中何も身に入らなかった…。これなら、学校を休んで彼の家に行ってしまった方が良かったのかもしれない。
 僕は心の中で、見切りが付けられずあの日からずっと…彼を求めていた。その事に、最初から気付いて居たのだろう。だから、同性愛者を甘く見ていた。
 彼は、僕を可愛いと言った、僕が好きだと告白した。すなわち、それはどういう意味なのか、僕は知らなかった。

 インターホンを鳴らす。色々声掛けを考えていたが、押してしまえばもう進むしかないと思い、最初に掛ける言葉さえうやむやなまま、行動してしまった。
「はぃ」
 すると、後悔が沸き立つ前に、今にも消えそうな声が聞こえた。声の主は彼だろう。
「僕だ、その…この間は悪かったな。気を使ってくれたのに、逃げて」
「いつもお前は逃げ切らないよな」
 そういうや否や、ドアが開いた。そこに立っていたのは、元気の無さそうな、元気を装う余裕もない彼。
「俺が、お前と仲良くなるきっかけになった、あの時もお前は弱音さえ吐かず、闘っていた」
「過去のことなんて、どうだっていい。それより、具合いはどうなんだ?最近学校にさえ来てないが」
「…気を使ってくれた、ってことは俺が同性愛者だって事を受け入れたって事か?それとも、ただの幼馴染みとしての、お節介か?」
「前者だ。受け入れなきゃ来れないだろ、ココには」
 僕自身も驚いた、まさか自分がココにまた来ているなんて…。僕の気持ちを変えたのは、何だろう?時間だろうか?それとも、彼の人格?わからない。
 彼は、偽りのない僕の瞳を受け止めると、頷き言った。
「そうか、受け入れてくれたんだな、まぁ入れよ」
 彼の目が一瞬細まった気がした。だが、それ程真に受けず、僕は足を踏み入れた。

 久々に入った彼の部屋は、前入った時と、何も変わっていなかった。
 ふと、彼に恋人がいた事を思い出した。
「彼女は、いきなり龍都が学校に来なくなって何も言わないのか?」
 僕の言葉に、眉をピクッと動かした。何かまずい事でも言っただろうか?
「あぁ、実はな…」
 彼は言いにくそうに口にした。
「ふられたんだよなぁー。本命が居るんだったら、最初からOKすんな!って言われた…」
「本命?お前、彼女が居んのに他の子と遊んだのか?サイテーだな」
「当たり前だろ、俺の本命はお前なんだから」
 そう言われゾッとした。やはり、彼は本物だ。本物の同性愛者だ。そう考えただけなのに、まだ体は受け付け様としない。
「ははっ、別に今更どれだけ拒絶されようと、俺はどうも思わない」
 彼は僕の寒気を察したように言った。
「きょ、拒絶なんてもうしない。僕は、お前が居ないとダメだって…分かったんだ。僕にとって、龍都は太陽なんだ」
 特に告白する予定も無かった事まで口走る。だが、話してないと、いつもとどこかが違う、空間に飲み込まれそうになる。
「それは、告白と受け取って良いのか?」
「それでも構わない。だが真実だ」
 話せば話すほど、彼を受け入れてしまっている様なものだ。でも、どんなに自分に言い聞かせても、止まらない。
「そうか…お前だって、俺の事が好きなんだろ…?」
 違うのは彼の目付きもだ。先程からヒシヒシと感じる狙われている視線が、くすぐったい。
「あぁ…たぶん」
 言い終わらないうちに、彼が覆い被さった。
「良いのか?戻れなくなるかもしれない。まだ恋愛対象を女に戻すことは出来るんだぞ」
「ははっ、それはこっちのセリフだ。お前だって、戻れなくなるさ」
 彼の吐息が顔に掛かる。興奮しているのか、息が荒い。だが、何を食べたのかミントの様なヒンヤリとした感覚が時々触れる。それが余計にくすぐったい。
 思わず、顔を逸らす。だが、顎をクイッと片手で動かされる、正面には、まるで餌を前にして待てを食らっている動物の様な眼差しの彼。負けじと僕は言う。
「きょ、今日だけだからな。明日になったら、ちゃんと学校に来るんだぞ」
 彼は口の端を持ち上げた。
「分かった」
「だから、今日のうちにすべてッ」
 僕は何が起こったか分からなかった。話してて、いきなり唇を塞がれた?柔らかい感触を受けながら、頭で理解した時には顔に熱を帯びていた。
「んッ」
「…もしかして、ファーストだった?」
 ゆっくりと顔を上げ、僕の表情を楽しむ様に問う。僕は意地からか、首を横に振る。覚えている限りでは、僕は今までキスというものをしたことが無かった。
「そうか、俺はファーストだ」
 そう言い、無邪気に微笑む彼は今まで以上に輝いて見えた。何故だ?何故…僕にファーストを取られて…あっ。
 彼の言っていたことが、本当だったという事が分かった。彼は、本当に僕の事が…好きなんだ。
「まぁ、可哀想だから今日はここまでにしとく」
 彼はゆっくりと、惜しむように僕の上から退く。
「お前の気持ち、嬉しかった。明日、いつもの時間にお前んちな」
「あぁ」
 僕は複雑な気持ちだった。彼が完全に僕に対しての、感情を出してきたこと。何より僕と彼の関係がいつの間に友人から、歪んだ恋人ごっこにすり変わってしまうんじゃないかと、不安だった。

「おはよう、寝坊助!」
 彼は昨日のあの瞬間には劣っていたが、輝いていた。
「寝坊助とは失礼な。龍都が先に居ることなんか滅多になかったろ。気まぐれ野郎」
 僕の言葉を受けて、彼は悪戯な笑みを浮かべ言った。
「気まぐれは気まぐれでも、一途になるとしつこいぞ?」
「はは、愛された奴は嬉しいだろな」
 自分に向けて言われたのか、確信はなかったので適当に流した。
 その日は、久しぶりに彼との学校生活が送れた。だが、僕の何処かで、彼と普通に居るだけでは物足りないと感じていた。
 この感情はなんだろうか?そういえば、昨日、キスをされたのに不快に感じなかった自分が居た?
 もしかすると…僕は、彼のことを……。
「どーしたんだよ!」
 龍都の声で我に返った。僕らは下校してて…それで…。
 辺りを見回すと、見慣れた場所。
「龍都んちじゃん」
「だから、今日も付き合ってくれんだろ?」
 逃げ遅れた…いや、鼻から逃げ場なんてなかったのかもしれない。もしくは、僕が逃げようともしなかったのか。
「実は、俺に惚れちゃったりして?」
 案外、否定する気にもならなかった。
「邪魔するぞ」
 言葉を無視し、僕は彼の部屋へ直行した。
 思い出されるあの感覚。自分のもの以外に唇を濡らされるあの温もり、コトは一瞬だったのに何故か鮮明に記憶されている。
「積極的なキャラにイメチェンしても、別に俺の気持ちは変わらないけどなっ!」
 龍都は何故だが嬉しそうにドアを閉め、鍵を掛けた。
「今日も家には誰も居ないのか…?」
「いや、隣の部屋にユメが寝てる」
 それを聞いて、僕は緊張した。ユメ、とは彼の中学二年生の妹だ。彼女がすぐ隣の部屋にいる。そう考えただけで、僕は気持ちが絞められた。
「縛りがある方が良くないか?」
 彼はお見通しなようで、悪戯な笑顔で問う。僕は誤魔化そうと頷く。
「さて、今日は昨日より楽しませてやるよ」
 彼はそっと僕を壁側に追い詰める。片手は壁に着き、もう片方は僕のシャツのボタンを外しにかかる。
 抵抗、という言葉など微塵も無かった。僕も、もしかしたらこの後の快楽を察していたのかもしれないし、期待していたのかもしれない。
「あっ…」
 はだけた上半身を、彼は視線で這うように楽しむ。僕はまだ触れられていないのに、興奮していた。
 どれくらい経っただろうか…?彼は、ついに僕の顎に手を添えると、口ずけをした。
 何よりも柔らかく、何よりも温かい…そして何よりも優しく気持ちいい。
 何とも言えない感覚に触れ、僕はそれを味わっていた。気持ちが良すぎて立っているのもままならず、彼にしがみついた。
 彼は、それを狙っていたのか、いとも簡単にお姫様抱っこをすると、僕をベッドに横たわらせた。
 今度は、彼の形の良い手が僕の身体を這っていた。それは、行く先も決まらず、ただ行ったり来たりしていたが、僕には充分な刺激だった。
 数分後には、何もマトモに考えられなくなる程、快楽に埋もれていた。
 寂しさを、肉体関係で埋められるなんて…、そう思う暇もなく、イカされる。
 何が僕達を変えたのか、今ならわかる気がする。
 それは、愛だ。いや、もしかしたら寂しさから来た愛しさかもしれない。だが、僕らは後悔していない。
 何度同じような行為をしようと、何度すれ違っても。また、僕らは僕らになれる。
 僕と龍都は希少種だ。なぜなら、同性愛者だからだ。でも、そんな事どうだっていい。
 たまたま、僕と彼が男だっただけで、性別なんて関係ない。
 大事なのは、相思相愛じゃないか?少なくとも、愛は一方通行では成り立たないと思う。
 そう、最初の龍都の気持ちのように…。


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