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第50話
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僕達は、慎重に歩みを進めた。
相手は、遠くからでも、こちらを殺せるだけの魔法を放ってくる魔物である。
撃たれるリスクを考えると、見られるだけでも危険なのだ。
そのため、ベルさんは、積極的に攻撃魔法を放った。
そうしないと、先に進めなかったからだ。
結局、僕達は、ミアがいた街の時よりも多くの魔物を仕留めた。
やっとの思いで、目的地である屋敷の近くまで来る。
すると、屋敷がある方向から、一台の馬車が走ってきた。
ベルさんは、躊躇することなく、馬の首を魔法で刎ね飛ばした。
「ちょっと、ベルさん!?」
彼女の行為に、僕は焦る。
これだけ大きな街ならば、馬車がある家は1軒ではないだろう。
あの馬車を、ターゲットが乗っているものだと決め付けるべきではない。
「何を慌てているのよ? 疑わしい馬車は、とりあえず全部確かめるべきでしょう?」
ベルさんが呆れた様子でそう言ったので、僕は唖然としてしまった。
無関係な馬車を片っ端から襲撃するのは、あまりにも乱暴だ。
「そんなの……無茶苦茶ですよ!」
「ダッデウドを助けるためなら、オットームにどれだけ被害が出ても知ったことではないわ。貴方も、ダッデウドとして覚醒したなら、そろそろオットームみたいな価値観は捨てなさい」
そう言い放ち、ベルさんは馬車に歩み寄る。
馬を殺された馬車の御者は、こちらの接近を阻もうとした。
「何だお前達は!? それ以上近付くな!」
ベルさんは、その御者の首を、容赦なく刎ね飛ばす。
そして、馬車の扉に拳を叩き付けて破壊した。
若い女性の悲鳴が響き渡る。
馬車の中には、一見して高価だと分かる服に身を包んだ金髪の女性と、使用人らしき3人の女性がいた。
全員が若い女性だ。
少年も老婆も、ここにはいない。
「銀髪の男の子はどこにいるの? 答えなさい」
ベルさんは、冷たい声でそう言った。
仮に、この馬車がダッデウドの少年と無関係ならば、ベルさんは全員を殺してしまうつもりだろう。
本当に、オットームに対しては情け容赦のない人だ。
「あの子は、お婆様が3日前に、別荘へ連れて行きました。魔物の襲撃に備える街の様子を見て、息が詰まると言っていました」
金髪の女性が、ベルさんのことを見つめながら答えた。
どうやら、この馬車は、目指していた屋敷から来たもののようだ。
そして、この金髪の女性は、タームという少年のことを知っているらしい。
「……そう。別荘はどこにあるの?」
「ここから南に、馬車で2日ほど行くと、湖があります。その近くです」
「貴方は、銀髪の少年を飼っている老婆の関係者ね? ひょっとして、孫娘かしら?」
「はい。仰るとおりです」
「……」
「待ってください!」
僕は、ベルさんの手首を掴んで止めた。
彼女が、老婆の孫だという女性を殺そうとしたからだ。
「どうして止めるの? この女は殺しておくべきよ」
ベルさんが不機嫌そうに言ってくる。
「早まらないでください。別荘まで案内してもらう必要があるでしょう?」
「そんなの、使用人の子に教えてもらえばいいじゃない」
「案内をさせる使用人以外は全員殺して、最終的には、案内をした使用人も殺すつもりですね?」
「当然よ」
ベルさんが平然と言い放つのを聞いて、使用人の女性達は激しく震えた。
僕はため息を吐く。
ベルさんは、誰が相手でも構わずに殺そうとする。
しかし、相手は選ぶべきだ。
本音を言うなら、折角若い女性がたくさんいるのに、全員殺してしまうのは勿体ないと思っているのだが……。
「彼女達の処遇は、僕に任せてくれませんか? 充分なお仕置きを与えますよ」
僕がそう言うと、今度はベルさんがため息を吐いた。
「貴方、今の状況が分かってるの? 魔物がどこから撃ってくるか分からない状況で、女をなぶって楽しむつもり?」
「この辺りの魔物の数は、かなり減っています。それに、ダッデウドとして覚醒した僕は欲望に忠実ですから」
「……分かったわ。なるべく手短に終わらせるのよ? それと……」
ベルさんは、馬車の中の4人の女性を、1人ずつ順番に見た。
「ティルトがどんなお仕置きを与えたとしても、ダッデウドの男の子に直接的な危害を加えた子のことは、見逃すつもりはないわ」
その言葉に、使用人の1人が、特に大きな反応をした。
真っ青になって身体を抱き、激しく震えている。
その様子から、彼女に、身に覚えがあることは明らかだった。
当然ながら、ベルさんもそのことに気付いた様子である。
「全員、目立たない場所まで付いて来てもらおうか。逃げようとしたり、暴れたりしたら……大怪我をするか、死ぬことになるからね?」
そう脅してから、全員を馬車から降ろす。
幸い、抵抗する意思を示した者はいなかった。
むしろ、首を刎ねられた御者の死体を見て、真っ青になっている。
この状態であれば、こちらに逆らおうとは考えないだろう。
僕は、4人の女性を、近くの屋敷に連れ込んだ。
その屋敷には人気がなく、明かりも灯されていない。
どうやら、住人は避難しているようである。
だが、窓から入ってくる月光によって、女性達の姿を見るのに問題はない。
ベルさんも、僕達と一緒に来た。
彼女は、先ほど激しく震えていた女性を、今も睨み続けている。
少なくとも、その使用人だけは殺すと決めているようだ。
さて、どうしたものか……?
相手は、遠くからでも、こちらを殺せるだけの魔法を放ってくる魔物である。
撃たれるリスクを考えると、見られるだけでも危険なのだ。
そのため、ベルさんは、積極的に攻撃魔法を放った。
そうしないと、先に進めなかったからだ。
結局、僕達は、ミアがいた街の時よりも多くの魔物を仕留めた。
やっとの思いで、目的地である屋敷の近くまで来る。
すると、屋敷がある方向から、一台の馬車が走ってきた。
ベルさんは、躊躇することなく、馬の首を魔法で刎ね飛ばした。
「ちょっと、ベルさん!?」
彼女の行為に、僕は焦る。
これだけ大きな街ならば、馬車がある家は1軒ではないだろう。
あの馬車を、ターゲットが乗っているものだと決め付けるべきではない。
「何を慌てているのよ? 疑わしい馬車は、とりあえず全部確かめるべきでしょう?」
ベルさんが呆れた様子でそう言ったので、僕は唖然としてしまった。
無関係な馬車を片っ端から襲撃するのは、あまりにも乱暴だ。
「そんなの……無茶苦茶ですよ!」
「ダッデウドを助けるためなら、オットームにどれだけ被害が出ても知ったことではないわ。貴方も、ダッデウドとして覚醒したなら、そろそろオットームみたいな価値観は捨てなさい」
そう言い放ち、ベルさんは馬車に歩み寄る。
馬を殺された馬車の御者は、こちらの接近を阻もうとした。
「何だお前達は!? それ以上近付くな!」
ベルさんは、その御者の首を、容赦なく刎ね飛ばす。
そして、馬車の扉に拳を叩き付けて破壊した。
若い女性の悲鳴が響き渡る。
馬車の中には、一見して高価だと分かる服に身を包んだ金髪の女性と、使用人らしき3人の女性がいた。
全員が若い女性だ。
少年も老婆も、ここにはいない。
「銀髪の男の子はどこにいるの? 答えなさい」
ベルさんは、冷たい声でそう言った。
仮に、この馬車がダッデウドの少年と無関係ならば、ベルさんは全員を殺してしまうつもりだろう。
本当に、オットームに対しては情け容赦のない人だ。
「あの子は、お婆様が3日前に、別荘へ連れて行きました。魔物の襲撃に備える街の様子を見て、息が詰まると言っていました」
金髪の女性が、ベルさんのことを見つめながら答えた。
どうやら、この馬車は、目指していた屋敷から来たもののようだ。
そして、この金髪の女性は、タームという少年のことを知っているらしい。
「……そう。別荘はどこにあるの?」
「ここから南に、馬車で2日ほど行くと、湖があります。その近くです」
「貴方は、銀髪の少年を飼っている老婆の関係者ね? ひょっとして、孫娘かしら?」
「はい。仰るとおりです」
「……」
「待ってください!」
僕は、ベルさんの手首を掴んで止めた。
彼女が、老婆の孫だという女性を殺そうとしたからだ。
「どうして止めるの? この女は殺しておくべきよ」
ベルさんが不機嫌そうに言ってくる。
「早まらないでください。別荘まで案内してもらう必要があるでしょう?」
「そんなの、使用人の子に教えてもらえばいいじゃない」
「案内をさせる使用人以外は全員殺して、最終的には、案内をした使用人も殺すつもりですね?」
「当然よ」
ベルさんが平然と言い放つのを聞いて、使用人の女性達は激しく震えた。
僕はため息を吐く。
ベルさんは、誰が相手でも構わずに殺そうとする。
しかし、相手は選ぶべきだ。
本音を言うなら、折角若い女性がたくさんいるのに、全員殺してしまうのは勿体ないと思っているのだが……。
「彼女達の処遇は、僕に任せてくれませんか? 充分なお仕置きを与えますよ」
僕がそう言うと、今度はベルさんがため息を吐いた。
「貴方、今の状況が分かってるの? 魔物がどこから撃ってくるか分からない状況で、女をなぶって楽しむつもり?」
「この辺りの魔物の数は、かなり減っています。それに、ダッデウドとして覚醒した僕は欲望に忠実ですから」
「……分かったわ。なるべく手短に終わらせるのよ? それと……」
ベルさんは、馬車の中の4人の女性を、1人ずつ順番に見た。
「ティルトがどんなお仕置きを与えたとしても、ダッデウドの男の子に直接的な危害を加えた子のことは、見逃すつもりはないわ」
その言葉に、使用人の1人が、特に大きな反応をした。
真っ青になって身体を抱き、激しく震えている。
その様子から、彼女に、身に覚えがあることは明らかだった。
当然ながら、ベルさんもそのことに気付いた様子である。
「全員、目立たない場所まで付いて来てもらおうか。逃げようとしたり、暴れたりしたら……大怪我をするか、死ぬことになるからね?」
そう脅してから、全員を馬車から降ろす。
幸い、抵抗する意思を示した者はいなかった。
むしろ、首を刎ねられた御者の死体を見て、真っ青になっている。
この状態であれば、こちらに逆らおうとは考えないだろう。
僕は、4人の女性を、近くの屋敷に連れ込んだ。
その屋敷には人気がなく、明かりも灯されていない。
どうやら、住人は避難しているようである。
だが、窓から入ってくる月光によって、女性達の姿を見るのに問題はない。
ベルさんも、僕達と一緒に来た。
彼女は、先ほど激しく震えていた女性を、今も睨み続けている。
少なくとも、その使用人だけは殺すと決めているようだ。
さて、どうしたものか……?
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