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★雛の家9
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幸嗣のいたずらはそれで終わりではなかった。湯船に浸かる前、沙耶が髪を洗っている間に手早く自分の体を洗い終えた彼は、彼女の体を洗うという名目で泡だらけの手で彼女の体を弄り始めたのだ。
「あぁ、幸嗣さん、だめぇ……」
既に何度も達して体に力が入らない彼女は、抵抗できないまま幸嗣の膝の上に抱き込まれる。そして全身を撫でまわしていた手はやがて背後から両方の乳房を包み込むように揉むと、ツンと立ち上がっている乳首を摘まみ上げた。
「あぁぁっ」
痺れるような快感に体が跳ねる。背後からがっしりと抱え込まれているので逃れることができず、またもや彼女が達するまで全身をくまなく愛撫されてしまった。
「ごめんね、歯止めがきかなくて……」
そう謝りながら、全身の泡を流し終えた彼は彼女を抱えたまま湯船に浸かった。やはり離してくれる気はないらしい。幾度も達してくたびれ切った彼女は怒る気も沸かずに力なく首を振る。そんな彼女に彼は口づけると、向かい合わせになる様に彼女の体の向きを変える。彼の体をまたぐ形となり、それは自然と股間でそそり立つ彼のモノを意識させられることとなる。
「あ……」
意識して恥ずかしそうにしている彼女が可愛くて、幸嗣はわざと体を動かして擦り付ける。このまま欲望の赴くまま沙耶の中に入れて欲を吐き出したいが、さすがにもう時間がない。彼は渋々あきらめることにして彼女を抱いたまま風呂から出た。
2人の体をざっと拭いてバスローブを纏い、同じくバスローブを着せた沙耶を洗面台の前に用意した椅子に座らせた。濡れた彼女の髪をタオルで丁寧に水気を摂り、ドライヤーで乾かしていく。やはり無理をさせすぎたのだろう、彼女は途中からウトウトしていた。
沙耶の髪がようやく乾き、半分寝ている彼女を幸嗣は再び抱き上げる。そしてそのまま自室を出ると、沙耶の部屋へと向かった。
「ん……どこ、行くの?」
「君の部屋。俺の部屋に寝せるとまた襲っちゃいそうだし」
そう笑いながら朝の光が差し込む廊下を歩く。そして彼女の部屋に入ると、ベッドへそっと彼女を降ろした。
「ごめんね、無理させて。後で綾乃か誰かに来てもらうから」
幸嗣がそう言って頬に口づけると、沙耶は「大丈夫」と答えて彼のバスローブの袖を引っ張った。
「お見送りできなくてごめんなさい。あの、気を付けて」
「うん、行ってくる」
今度は唇を重ねると、幸嗣は沙耶に手を振って部屋を後にする。そしてその後は大急ぎで身支度を整えると、仕事に出かけたのだった。
旧大倉家訪問から3日後の夜。沙耶はようやく仕上がった吊るし雛を部屋に飾っていた。本当はもう少し早く出来上がる予定だったのだが、幸嗣に抱きつぶされたりしてなかなかはかどらなかったのだ。しかも昨夜は出張から帰った義総に明け方まで求められ、彼女が起きたのは午後になってからだった。どうやら彼女の体に残っていた幸嗣が付けた痕に対抗心を燃やした結果だったらしい。
何はともあれ、無事に吊るし雛は完成した。沙耶はまたひな祭りの歌を口ずさみながら、色鮮やかな完成品を飾っていた。
「失礼します、沙耶様」
そこへ扉をノックして、何かの箱を抱えた綾乃が入ってきた。彼女は箱をローテーブルに置くと、沙耶の傍に寄ってくる。
「完成したのですね。それにしても可愛らしい」
「綾乃さんのおかげです」
自分が作ったものを褒められるのはやはりうれしい。沙耶は作った小物を一つ一つ手に取り、母親から聞いたその由来や意味を語る。
「来年は是非とも、旧大倉家の人形と一緒に飾らせて下さいませ」
「え?」
社交辞令で言ってくれているのかと思っていたら、彼女は本気らしい。だが、由緒あるあのひな人形たちと一緒に飾るには、自分の技はあまりにも拙すぎて釣り合わない気がする。戸惑う気持ちのままそう伝えると、綾乃にそっと手を握られる。
「自信をお持ちくださいませ、沙耶様。これは、沙耶様が沙織様から受け継がれた立派な伝統でございます。私には、あの人形たちと比べても遜色は無いと思うのですが……」
「伝統……」
母親がこの吊るし雛の作り方をどうやって知ったのかまでは沙耶も知らない。もしかしたら久保田の家で代々伝わってきたのかもしれない。気の早い話だが、もしもこの先沙耶に子供が出来たら、この吊るし雛の作り方をその子にも教えたいと思うのは確かだった。
「伝統というのはそういったことの積み重ねだと私は思うのですよ」
綾乃の言葉は沙耶の胸にストンと落ちてきた。
「来年……出来るかどうかわからないけど、考えてみます」
「ええ」
元より強要するつもりはないのだろう。それでも、沙耶の前向きな答えに綾乃は満足そうに頷いた。
「そうそう、幸嗣様からお荷物が届いておりますよ」
「幸嗣様から? 何だろう?」
話に一区切りついたところで、先程持ってきた荷物に話題が移る。綾乃の口調に呆れた様子がないことから、単なる思い付きで送られてきたものではないのだろう。
沙耶はローソファに腰掛けると、テーブルに置かれた箱の封を開ける。そして緩衝材で厳重に保護されていた中身の一つを取り出した。
「これって……」
出てきたのはガラス製のひな人形だった。3日前、幸嗣と行った星ビルで展示されていたあのひな人形だったのだ。
「沙耶様がお気に召したご様子だったので、工房に出向かれて購入されたそうです」
綾乃の捕捉によると、このひな人形の購入するために、幸嗣はこの工房とセレクトショップへの出品要請の交渉を真っ先に行ったらしい。
「いいの……かな?」
「先方もそこまで望んで下さったことに感激して、交渉も早くまとまったそうです。沙耶様が喜んでくだされば、幸嗣様も頑張った甲斐があると仰るに違いありません」
買ってもらうつもりはなかった沙耶は戸惑っていたが、それでも気に入ったひな人形を贈られてじわじわと嬉しさがこみあげてくる。そして自分で作った吊るし雛と一緒に鑑賞できるように、近くの棚へそのひな人形を飾った。
「杏奈やジェシカにも見せてあげよう」
明日は友人2人とひな祭りお茶会を予定していた。女子だけの賑やかな集まりに、これらはきっと華やぎを添えることになるだろう。
こうしてまた1つ、沙耶にとって大切な宝物が増えたのだった。
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これで「雛の家」のエピソードは終了です。
途中、中断したにもかかわらず最後までお付き合いありがとうございました。
次のネタが思いつくまでは、一旦完結とさせていただきます。
「あぁ、幸嗣さん、だめぇ……」
既に何度も達して体に力が入らない彼女は、抵抗できないまま幸嗣の膝の上に抱き込まれる。そして全身を撫でまわしていた手はやがて背後から両方の乳房を包み込むように揉むと、ツンと立ち上がっている乳首を摘まみ上げた。
「あぁぁっ」
痺れるような快感に体が跳ねる。背後からがっしりと抱え込まれているので逃れることができず、またもや彼女が達するまで全身をくまなく愛撫されてしまった。
「ごめんね、歯止めがきかなくて……」
そう謝りながら、全身の泡を流し終えた彼は彼女を抱えたまま湯船に浸かった。やはり離してくれる気はないらしい。幾度も達してくたびれ切った彼女は怒る気も沸かずに力なく首を振る。そんな彼女に彼は口づけると、向かい合わせになる様に彼女の体の向きを変える。彼の体をまたぐ形となり、それは自然と股間でそそり立つ彼のモノを意識させられることとなる。
「あ……」
意識して恥ずかしそうにしている彼女が可愛くて、幸嗣はわざと体を動かして擦り付ける。このまま欲望の赴くまま沙耶の中に入れて欲を吐き出したいが、さすがにもう時間がない。彼は渋々あきらめることにして彼女を抱いたまま風呂から出た。
2人の体をざっと拭いてバスローブを纏い、同じくバスローブを着せた沙耶を洗面台の前に用意した椅子に座らせた。濡れた彼女の髪をタオルで丁寧に水気を摂り、ドライヤーで乾かしていく。やはり無理をさせすぎたのだろう、彼女は途中からウトウトしていた。
沙耶の髪がようやく乾き、半分寝ている彼女を幸嗣は再び抱き上げる。そしてそのまま自室を出ると、沙耶の部屋へと向かった。
「ん……どこ、行くの?」
「君の部屋。俺の部屋に寝せるとまた襲っちゃいそうだし」
そう笑いながら朝の光が差し込む廊下を歩く。そして彼女の部屋に入ると、ベッドへそっと彼女を降ろした。
「ごめんね、無理させて。後で綾乃か誰かに来てもらうから」
幸嗣がそう言って頬に口づけると、沙耶は「大丈夫」と答えて彼のバスローブの袖を引っ張った。
「お見送りできなくてごめんなさい。あの、気を付けて」
「うん、行ってくる」
今度は唇を重ねると、幸嗣は沙耶に手を振って部屋を後にする。そしてその後は大急ぎで身支度を整えると、仕事に出かけたのだった。
旧大倉家訪問から3日後の夜。沙耶はようやく仕上がった吊るし雛を部屋に飾っていた。本当はもう少し早く出来上がる予定だったのだが、幸嗣に抱きつぶされたりしてなかなかはかどらなかったのだ。しかも昨夜は出張から帰った義総に明け方まで求められ、彼女が起きたのは午後になってからだった。どうやら彼女の体に残っていた幸嗣が付けた痕に対抗心を燃やした結果だったらしい。
何はともあれ、無事に吊るし雛は完成した。沙耶はまたひな祭りの歌を口ずさみながら、色鮮やかな完成品を飾っていた。
「失礼します、沙耶様」
そこへ扉をノックして、何かの箱を抱えた綾乃が入ってきた。彼女は箱をローテーブルに置くと、沙耶の傍に寄ってくる。
「完成したのですね。それにしても可愛らしい」
「綾乃さんのおかげです」
自分が作ったものを褒められるのはやはりうれしい。沙耶は作った小物を一つ一つ手に取り、母親から聞いたその由来や意味を語る。
「来年は是非とも、旧大倉家の人形と一緒に飾らせて下さいませ」
「え?」
社交辞令で言ってくれているのかと思っていたら、彼女は本気らしい。だが、由緒あるあのひな人形たちと一緒に飾るには、自分の技はあまりにも拙すぎて釣り合わない気がする。戸惑う気持ちのままそう伝えると、綾乃にそっと手を握られる。
「自信をお持ちくださいませ、沙耶様。これは、沙耶様が沙織様から受け継がれた立派な伝統でございます。私には、あの人形たちと比べても遜色は無いと思うのですが……」
「伝統……」
母親がこの吊るし雛の作り方をどうやって知ったのかまでは沙耶も知らない。もしかしたら久保田の家で代々伝わってきたのかもしれない。気の早い話だが、もしもこの先沙耶に子供が出来たら、この吊るし雛の作り方をその子にも教えたいと思うのは確かだった。
「伝統というのはそういったことの積み重ねだと私は思うのですよ」
綾乃の言葉は沙耶の胸にストンと落ちてきた。
「来年……出来るかどうかわからないけど、考えてみます」
「ええ」
元より強要するつもりはないのだろう。それでも、沙耶の前向きな答えに綾乃は満足そうに頷いた。
「そうそう、幸嗣様からお荷物が届いておりますよ」
「幸嗣様から? 何だろう?」
話に一区切りついたところで、先程持ってきた荷物に話題が移る。綾乃の口調に呆れた様子がないことから、単なる思い付きで送られてきたものではないのだろう。
沙耶はローソファに腰掛けると、テーブルに置かれた箱の封を開ける。そして緩衝材で厳重に保護されていた中身の一つを取り出した。
「これって……」
出てきたのはガラス製のひな人形だった。3日前、幸嗣と行った星ビルで展示されていたあのひな人形だったのだ。
「沙耶様がお気に召したご様子だったので、工房に出向かれて購入されたそうです」
綾乃の捕捉によると、このひな人形の購入するために、幸嗣はこの工房とセレクトショップへの出品要請の交渉を真っ先に行ったらしい。
「いいの……かな?」
「先方もそこまで望んで下さったことに感激して、交渉も早くまとまったそうです。沙耶様が喜んでくだされば、幸嗣様も頑張った甲斐があると仰るに違いありません」
買ってもらうつもりはなかった沙耶は戸惑っていたが、それでも気に入ったひな人形を贈られてじわじわと嬉しさがこみあげてくる。そして自分で作った吊るし雛と一緒に鑑賞できるように、近くの棚へそのひな人形を飾った。
「杏奈やジェシカにも見せてあげよう」
明日は友人2人とひな祭りお茶会を予定していた。女子だけの賑やかな集まりに、これらはきっと華やぎを添えることになるだろう。
こうしてまた1つ、沙耶にとって大切な宝物が増えたのだった。
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これで「雛の家」のエピソードは終了です。
途中、中断したにもかかわらず最後までお付き合いありがとうございました。
次のネタが思いつくまでは、一旦完結とさせていただきます。
応援ありがとうございます!
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