転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第17章 戦いの終わりに

第238話 その唇に吸い込まれる

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「これって、リオンの首飾りに似てる?」

「そうなんです。リオン君のを真似て作ってみました」

「え、これセリナの手作り? すご……」

 感心しながら薄明るい空にかざしてみる。

 藍色だと思っていた石だが、石の中でぼんやりとオレンジ色に発光しているのが見えた。蛍のような小さな光ではあるが、オレンジ色の光の隅で赤と緑にも光っている。まるで何かに反応しているみたいだ。ひょっとして、この石はコアか?

 月にかざしていた手を下ろすと、徐にセリナが俺に手を重ねてきた。あまりに急なことに声も出ないくらい驚いていると、重なりあった手からオレンジ色の淡い灯りが漏れていた。手の中にある石がさらに光を放っているらしい。

「……私に反応して光っているのです。形はリオン君の首飾りを真似ましたが、能力はライザさんの水晶玉に近いでしょう。ムギトさんがどこに居ても、私たちのことを見つけられるように──」

 そこまで言ったところで、セリナの手の甲にぽたりと雫が落ちた。顔を上げると、セリナの大きな目からぽろぽろと涙がこぼれていた。

「あはは……無事に完成したから感極まっちゃいました……」

 と、涙を拭きながらセリナが笑う。しかし、何度涙を拭いてもセリナの目から流れる涙は止まる気配がない。

 そんな彼女の泣き顔を、俺は黙って見つめていた。

 涙を誤魔化すように、セリナが言葉を紡いでいく。

「一度鑑定をしていたから、理屈はわかっていたんです。でも、効力を逆にしたり、コアを入れたりと模索していたら思ったより時間がかかっちゃって……ごめんなさい。本当はもっと、ムギトさんと一緒にいたかったのに……」

 話せば話すほど、セリナの声が震えていく。もう顔も歪んでしまうくらい、涙がこぼれいく。残りわずかな時間。理解したうえで、彼女はその時間を使って贈り物を作っていたのだ。もう会えるかもわからないこの俺に、自分の仲間を見つけられるサーチ付きの首飾りを。

「セリナ……どうして……俺に……」

 ここまでしてくれるのだ。そう言いたいのに、口が震えて言葉が上手く出てこない。時間も、労力もここまで削って、なんで俺に、こんなものを──

 そう思っていたら、セリナが顔を濡らしながらも優しく微笑んだ。

「だって、『また会える』って思っていたいじゃないですか」

 その笑顔が儚くて、淡くて、息が詰まるくらい切なくて、気がつけば視界が涙で歪んでいた。

 一瞬。その一瞬だけ、時が止まったように思えた。

「…………え?」

 だいぶ間を置いてから、セリナから戸惑いの声が漏れた。しかし、そんな声がしても、俺は彼女への抱擁を止めなかった。

 最初は強張っていた彼女の体が、徐々に力が抜けていく。拒む気配がないので、俺は彼女の両肩を軽く掴んだまま、そっと体を離した。

 セリナのうるんだ純真な目がじっと俺を見つめる。その美しい瞳に心を奪われていると、やがて彼女がその大きな目を静かに閉じた。ほんの少しだけすぼめた唇。その薄い唇に吸い込まれるように、俺はそっと口づけをした。

 冷たく、柔らかい唇は、一度重なると吸いついて離れなかった。快楽はない。ただ、お互いの存在を刻むように、何度も何度も触れあった。

 ありがとう。ごめん。あいしてる。

 彼女に伝えるはずの言葉たちが、浮かんでは、消えて、それをくり返して。泡沫と化した言霊は、唇に宿って彼女に伝わせる。その思いに応えるように、彼女の腕が俺の背中に回って俺を包み込んだ。

 優しい口づけ。温かい抱擁。それなのに、夜風に吹かれた頬はいつまで経っても冷たいままだった。

 初めての接吻は、塩味を帯びた雫の味がした。その雫も、最早どちらのものかわからなくなるくらい、お互い頬を濡らしていた。

 いったいどれくらい時間が経っただろうか。どちらともなく離れると、二人して気恥ずかしそうにうつむいた。

「こんなの……ずるいです」

 消え入りそうな小さい声でセリナが呟く。ゆっくりと顔を上げると、セリナがスッと俺の胸に自分の体を寄せた。すっぽりと俺の体にはまった彼女をもう一度抱きしめる。そうしたところで、自分の体に違和感を覚えた。
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