ドゥームレジスター

バルッ!!

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砦に戻った大地は、疲労のあまり倒れ込むように宿舎の簡易ベッドに横たわった。全身が鉛のように重く、動く気力すら湧かない。それでも、戦闘中に感じたローブの男の不気味な笑みが脳裏に焼き付いていた。

「あいつ……ただの人間じゃない。」
大地はそう呟きながら、自分の手をじっと見つめた。戦闘の中で覚醒した「時の刃」の力。その圧倒的な威力に驚きつつも、それを完全に制御できていない自分に、漠然とした不安を覚えていた。

そのとき、部屋の扉が軽くノックされた。

「大地、入るぞ。」
入ってきたのはフィーネだった。鎧を脱ぎ捨てた彼女の姿は、戦場で見た冷徹な指揮官とは少し違い、疲労感を隠せない表情をしている。

「どうだ、体の具合は?」

「最悪だけど……生きてるだけマシだな。」
大地は苦笑いを浮かべながら体を起こした。

「お前が戦場で見せた力、そしてローブの男が言っていた『主』という言葉。どちらも見過ごせない謎だ。」

「俺の力って……この世界で普通じゃないのか?」

フィーネは少し言葉を詰まらせた後、真剣な顔で答えた。
「この世界では、魔法や剣技に秀でた者は数多くいる。だが、時間を操る力は伝説の域にある。お前は間違いなく異質だ。」

「伝説って……。」
大地は言葉を失った。自分がこの世界でどれほど異常な存在であるかを思い知らされた気がした。


翌朝、フィーネは司令官室に呼び出された。大地も同席を求められ、少し緊張しながら部屋に入る。そこには、初めて見る人物がいた。

その男は30代後半ほどで、ローブに身を包み、知的な雰囲気を漂わせていた。腰には短剣を差し、肩に奇妙な鳥がとまっている。

「おや、君が噂の『時間を操る力を持つ異邦人』か。」
男は柔らかな笑みを浮かべながら大地を見つめた。

「噂って……もう広まってるのかよ。」

「当然さ。こんな異例の存在が現れれば、各地の情報網が動くのも無理はない。」

フィーネが軽く咳払いをしながら、男を紹介した。
「彼はエリオット・レイヴン。王国直属の調査官だ。この件について本国から派遣された。」

「調査官……?」大地が眉をひそめる。

「君たちが遭遇したローブの男と魔獣の群れ。あれは偶然ではない。背後で動いている何者かがいる。私はその真相を追うためにここに来た。」

エリオットは鋭い目つきで話を続けた。
「それと、君の力。時間を操るなんて、普通では考えられない能力だ。その起源にも興味がある。」

「俺の力の起源……。」
大地は自分がこの力を得た理由や、黒い本の存在を思い浮かべた。しかし、エリオットに話して良いものか迷う。

「君に不信感を抱くのは無理もない。ただ、私は敵ではない。むしろ君の力が、私たちにとって重要な鍵になると確信している。」


司令官が地図を広げ、砦周辺の地形を指さす。
「ローブの男が現れた場所を基点に、いくつかの魔獣の巣が活発化しているとの報告がある。この異常な状況が偶発的なものではない可能性が高い。」

エリオットが頷きながら付け加える。
「そこで提案だ。君たちと私で合同調査隊を結成し、異変の原因を突き止めよう。」

フィーネが鋭い声で応じる。
「危険な賭けだ。だが、私たちが動かなければ被害は広がる一方だろう。」

「俺も行く。」
大地が口を開くと、全員が彼に注目した。

「確かに俺の力はまだ未熟だ。でも、この力が役に立つなら使いたい。それに……俺がここにいる理由を知りたいんだ。」

フィーネは一瞬躊躇したものの、やがて静かに頷いた。
「分かった。ただし、再三言うが、無茶はするな。」


調査隊は翌日早朝、砦を出発した。目指すは「黒い森」と呼ばれる場所。そこは古くから魔獣が集う危険地帯であり、人々から恐れられている地域だった。

道中、大地はエリオットから様々な話を聞いた。この世界に存在する古代の力、伝説に語られる「時間の守護者」、そしてそれが何かを守るために命を懸けてきたという物語。

「もしかして……俺もその守護者ってやつなのか?」

エリオットは意味深な笑みを浮かべた。
「それは君次第だよ。何を守り、何を選ぶかは、君自身の意志にかかっている。」

大地の胸に新たな決意が芽生える。
「どんな運命でも、俺が選んで掴んでやる……。」

だが、彼がその言葉の重みを実感するのは、黒い森で待ち受ける試練の中でのことだった――。
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