夜空の天ちゃむ

牙夢乃時雨

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プロローグ

願い星(前編)

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「しゃー。お前、野狐……か?……ん?食べないのか。変な奴だなーじゃあな。」

 目の前にいる蛇はそういって森の中に去っていった。

 そう、私は野狐だ、一人ぼっちの野狐だ。昨日、両親が猟師に打たれて死んだ。

 野狐は、人に化けて、人間を欺いたり、幻を見せたりして驚かしたりする。悪意を持って人と接する狐とされている。

 そのただの噂によって、山の野狐は、猟師に見つかると鉄砲を撃たれてしまう。何年も生きても、鉄砲のたったの一発で人生が終わってしまう。

 お稲荷様とあがめられている狐は、私たちのような野狐とは違った世界を見ているのだろう。堂々と過ごし、逆に人間に頭を下げられている存在、そんな狐にだれしも憧れをもっている。

 だが、私はお稲荷様のような存在にはなれないし、人に化けたり、幻を見せたりする力しかない、それでも、親を殺された憎しみだけは、拭いきれない。だから私はこれから人間の野狐に対する意識を改めさせようと考えた。

 私は、殺された両親のお墓に向かった。私が作ったお墓。土に形見のネックレスを埋めて作ったお墓。遺体は猟師が持って行った。腐敗するからだろう。そのお墓の前で私は叫んだ。

 「またここに戻ってくるから!絶対に来るから!」

 私は喉が枯れるまで同じことを叫んだ。どこかにある両親の魂が震えるように。

 声が枯れると、木の幹にぽっかりと開いた場所、(自宅)に向かった。その途中、友達の天ちゃむが私の声を聞きつけたのかやってきた。

 「どうしたの?あんなに叫んで」

 私は、少し半泣きになりながら、今まで起きたことを天ちゃむに話した。

 「え!?あのママとパパが?……それは許せないね。それでこれからどうするの?」

 「この山を出て人間の住む世界に行く。それで、人間の中で偉くなって野狐を殺しちゃダメって言う決まりを作るんだ。」
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