魔王退治を頼まれたので。

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うげぇのアリカルとうほぉのマグネ

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「………うまっ!」

よう、俺の名は勇者イオン。かくかくしかじかの魔王城にて、仮の姿の「魔王の執事」としてここにいる。

そして早速やって来て、元魔王の妻・マグネにもてなされているわけだが……。

「あら、お口にあったようでよかったわ。今、お茶請けお出しするわね」

「あ、すみません!」

うむ、マグネさんはものすごい美人だ。

優しいし、なんか良い匂いするし、それに………


(………E…いや、Fだな…………。)

色んな意味で魅力的だ。何がとは言わないが。


「ふんっ。ちょっともてなされたくらいで良い気になるなよ、執事」

このクソガk………子供は現魔王。魔王の実の一人娘であり、魔王の死後跡を継いだ(?)らしい。

そしてこの娘アリカルの目は……アイツにそっくりで、見ているだけでも胸クソ悪くなってくる。


「勿論です。私なんぞが魔王様のお近くで紅茶を飲める事さえ光栄、奇跡に値しますから…」

――確かに魔王と勇者が肩並べてお茶飲んでるのは奇跡だな。

「さ、召し上がれ。ローレンジはお好きかしら?」

「………ローレンジ……?」

目の前に出てきたのは、手のひらサイズの焼き菓子。
聞いたこともないし見たこともない。
恐らく魔界の食べ物だろうが、とても香ばしくて良い匂いがする。
色は焦げ茶色のもの、ピンクがかった狐色、クリーム色の三色だ。
オルゴーラや「ジャパン」でいう、せんべいのようなものだろうか…?

人間が魔族の食いもんを口にしても良いのかが心配だが、ここで食べなければ逆に怪しまれる。

毒など多少の耐性はあるから、少し位なら大丈夫だろう……

「あら、あまりお好きじゃないみたい?」

「い、いえ!そんなことは。……いただきます…」

焦げ茶色の色の焼き菓子を手に取り、おそるおそる噛みつく。

パキッ!

パキ、ポキ、ボリボリ………


――――ッ!!うッ………な、なんだコレっ…………!!?



「……いかが?」

「……う、うまい…ッ……!とても美味しいです!!」

「ローレンジ」と呼ばれたお菓子は、口に入れた瞬間香ばしくて甘辛い香りが一気に広がり、噛み砕いていく度に顎を刺激するような旨味が飛び出てくる。

こんなうまい菓子食べたことないぞ……!
味どころか、心なしか息苦しさが楽になった。

もしや、回復効果なんかもあるんだろうか。

「ああ、お口にあったみたいでよかったわ。」

少しほっとしたような安堵の表情で優しく微笑むマグネさん。

心の中でハァハァしてる俺がいる。


「………母上。本当にこんなヤツ城に置くのか?役に立ちそうもないぞ、こんなもやし」

「もやし……」

「そんなことを言うものじゃあないわよ。それにこちらの方は、あなたの専属執事になっていただくつもりなんだから」

「…なんだって?この我に……専属執事だと…?」


アリカルがいきなり席から立ち上がり、テーブルクロスの上のローレンジや紅茶などを、腕で思いきり振り払った。

「わっ!」

ガチャン、ドサッ、バシャッ!

「あ、床が……!ちょ、アリカル様――」

「お前なんぞに軽々しく、我の名前を呼ばれたくないわ!!我に執事なぞ必要ないッ!我は認めないからな!!」

そう吐き散らかした後、アリカルはバタバタと曲がり角の奥へと消えていった。

母・マグネは、それほど驚いていない。

「あらあら、お茶を淹れ直さなくちゃね」

マグネそう言いながらしゃがみこみ、割れたカップなどをカチャカチャと片付けていく。

「あ、おれ……私も手伝います」

そういって机の下などに散らばったローレンジを一枚一枚手に取り、皿へ移していく。

「あの……失礼を承知の上で言いますが…その、アリカル様は普段からあのような……?」

そうだ。いくら魔王の一人娘とは言えども、あんな性格だとしたら皆着いていかないのではないか?

それこそ、我こそは我こそはと、次々と有力な魔王候補者が覇権を争いそうなものだが。

「そうね……………」

マグネが片付ける手を止めた。

「あの子ね………――――――………」

少しの間、沈黙が続く。

「………?」

「…いえ……………頑張ってるのよ」

「……はあ…」

なんだ?わけがよく分からないぞ。

答えになっていないし、なにかありそうな今の間はなんだろうか?

なにか言えないことでもあるのだろうか。

「……恥ずかしいところを見せてしまったわね。」

「い、いえ!そんなことは…!滅相もありません」

いや、実際なんちゅークソガキだと思ったけどね。

「ふふ。―――この片付けをやるかわりに頼みごとがあるのだけれど、良いかしら?」

「頼みごと…?いえ、それは一向に構いませんが……」

「そう、悪いわね。じゃあ、私の後ろの棚にあるコンというケーキを、あの子の部屋へ持っていって貰って良いかしら」

「えっ、あの子というと……アリカル…様の?」

「ええ。アリカル。部屋は教えるわ。」

「か、かしこまりました……」

(うげぇ~~……最初の印象、最悪なんですけど…………)





――――――――まあ、そのうち殺すんだし。


仲良くなくたって構わねーか。



おわり
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