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第一章 初恋
第九話 初恋は叶わない
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「ごめん。俺実はさ、栞と付き合ってるんだ。だから、花沢とは付き合えない。ほんとにごめん」
「そ、そうなんだ。栞ちゃんと。いつからなの?」
「7月の終わりごろかな。栞から告白されて、俺正直中学のころから栞のこと好きで。そんな風に思ってもらえてるなんて思わなかったから、嬉しくて」
「ちょっと、ストップ」
狙ったのかと思うほどに良いタイミングで、まな香が帰ってきて細田君の話を遮った。私は、嬉しそうに話す彼の隣で、静かに下を向いていた。気づけば涙が零れ落ちていた。そして、話し始めたころを思い出した。細田君は気になる人がいるかと聞いたときに、どこか焦っていた。それは、栞ちゃんが気になってるどころか好きだったからだったなんて。
「ごめん。私、ちょっと具合悪くなってきたから帰るね。ほんとごめん。じゃ」
そう言って、私は頬を伝っていく涙をそのままにゆっくりと立ち上がり、少しふらつきながらも歩いて駅まで向かった。本当だったら、走って駅まで行きたかった。でも、足に力が入らず歩くので精いっぱいだった。
これは後から聞いたが、合流した時どうにもすぐには帰れそうになかった琴美のために、水族館のカフェで休んでから帰ったらしい。まな香は、栞ちゃんに付き合ってることを確認したらしい。朝、私が見たストラップの件は当たっていて、最初のデートの時に細田君がプレゼントしたものらしい。
まな香と勇利が2人で歩いてきて、いやな予感がした。まな香が首を振っていたので、俺はすぐに雪菜を追いかけた。歩いて向かったと言っていた。つまり、そこまで遠くには行っていないはず。そう思って走っていると、出口の近くで雪菜を見つけた。
「雪菜!!」
「冬也...」
「お前、こんな状態で1人で帰る気だったのかよ」
「今は、1人になりたかったから」
「気持ちはわかるけど、家まで距離あるんだから。俺も一緒に帰る」
「え、でも。みんなは?」
「まな香がいてくれてるし、佐久間が具合悪そうだったから多分ショーは見れなかった」
「そうなんだ」
冬也はそのまま私の少し前を、ゆっくり歩いてくれた。昔は、私が泣いてる冬也の隣を手を引いて歩いていたのに。そんな面影はなく、見えるのはたくましい背中だけだった。しばらく歩いていると私が、何度も躓くので冬也が私の手を引いてくれた。最初は恥ずかしいと思ったが、それよりも懐かしさと、失恋の悲しさのほうが勝っていた。電車の中でも、私に肩を貸してくれて安心したのか、泣きつかれたのか、すぐに寝てしまった。最寄り駅に着くと、冬也が起こしてくれて、家の目の前まで送ってくれた。
その日の夜、まな香がうちに来て、お土産を買ってきてくれた。私がずっとほしいと言っていたクラゲのマスコットを買ってきてくれた。うれしかったのか、まだショックだったのかまた大粒の涙が流れて泣き止むまでまな香がずっとそばにいてくれた。泣き止むと同時に寝てしまっていたため、気づいたら朝になっていて、机にまな香から【無駄になったとか思っちゃだめだよ。可愛くなって、初恋の経験ができたんだから。これからだからね!!】と書いてあるメモが残されていた。私には、頼ることができる人がいるんだと再認識できた。
私は、夏休み前に冬也に大事な話があると言った。やっと、私と冬也の予定があった。話なんてすぐ終わる。でも、なかなか切り出せない。カフェに行ったり、ゲーセンに行ったりいろいろして、もう夕方になったのに言えなかった。
「どうしたまな香。今日はなんかまな香らしくない」
「いや、あのね。話があるって言ったじゃん。それなんだけど」
「おう、どうした?」
「私さ、中学の時から冬也のこと好きだったんだよ」
「そうなんだ。ありがとう。俺はまな香のこと好きだけど、まな香と一緒の意味じゃない。だからごめん」
「そっか。そうだよね、冬也は私じゃなくて雪菜が好きなんだよね」
「うん。ってなんでそれ知って。俺誰にも言ってないのに...」
「あんたねー、何年一緒にいると思ってるの?それにあんたらが思ってる以上にあんたらってわかりやすいよ。たぶん、そのまっすぐなとこ好きになったんだと思う。これからは、冬也のこと応援するよ。正直今までは、雪菜とくっついてほしくなくて雪菜のこと応援してた。でもそんなガキじみたことやめるわ。頑張って」
「そっか。いろいろ衝撃過ぎてびっくりしてるけど、ありがとう。今は、雪菜ができるだけ元気になれるように協力してくれるか?」
「そんなもん、言われずともやりますよ。その代わり、あんたが付き合えることになったとき雪菜のこと泣かせたらぶっ飛ばすからね」
そんな冗談を言い合いながら、冬也と一緒に帰った。私の初恋も儚く散ったけど、どこかすっきりしていた。雪菜もいつか、きっぱり諦められるようになったらいいんだけどな。まだしばらく難しいだろうけど。
この時は、その諦めるタイミングがすぐに来るとは思ってなかったわけだけど。
「そ、そうなんだ。栞ちゃんと。いつからなの?」
「7月の終わりごろかな。栞から告白されて、俺正直中学のころから栞のこと好きで。そんな風に思ってもらえてるなんて思わなかったから、嬉しくて」
「ちょっと、ストップ」
狙ったのかと思うほどに良いタイミングで、まな香が帰ってきて細田君の話を遮った。私は、嬉しそうに話す彼の隣で、静かに下を向いていた。気づけば涙が零れ落ちていた。そして、話し始めたころを思い出した。細田君は気になる人がいるかと聞いたときに、どこか焦っていた。それは、栞ちゃんが気になってるどころか好きだったからだったなんて。
「ごめん。私、ちょっと具合悪くなってきたから帰るね。ほんとごめん。じゃ」
そう言って、私は頬を伝っていく涙をそのままにゆっくりと立ち上がり、少しふらつきながらも歩いて駅まで向かった。本当だったら、走って駅まで行きたかった。でも、足に力が入らず歩くので精いっぱいだった。
これは後から聞いたが、合流した時どうにもすぐには帰れそうになかった琴美のために、水族館のカフェで休んでから帰ったらしい。まな香は、栞ちゃんに付き合ってることを確認したらしい。朝、私が見たストラップの件は当たっていて、最初のデートの時に細田君がプレゼントしたものらしい。
まな香と勇利が2人で歩いてきて、いやな予感がした。まな香が首を振っていたので、俺はすぐに雪菜を追いかけた。歩いて向かったと言っていた。つまり、そこまで遠くには行っていないはず。そう思って走っていると、出口の近くで雪菜を見つけた。
「雪菜!!」
「冬也...」
「お前、こんな状態で1人で帰る気だったのかよ」
「今は、1人になりたかったから」
「気持ちはわかるけど、家まで距離あるんだから。俺も一緒に帰る」
「え、でも。みんなは?」
「まな香がいてくれてるし、佐久間が具合悪そうだったから多分ショーは見れなかった」
「そうなんだ」
冬也はそのまま私の少し前を、ゆっくり歩いてくれた。昔は、私が泣いてる冬也の隣を手を引いて歩いていたのに。そんな面影はなく、見えるのはたくましい背中だけだった。しばらく歩いていると私が、何度も躓くので冬也が私の手を引いてくれた。最初は恥ずかしいと思ったが、それよりも懐かしさと、失恋の悲しさのほうが勝っていた。電車の中でも、私に肩を貸してくれて安心したのか、泣きつかれたのか、すぐに寝てしまった。最寄り駅に着くと、冬也が起こしてくれて、家の目の前まで送ってくれた。
その日の夜、まな香がうちに来て、お土産を買ってきてくれた。私がずっとほしいと言っていたクラゲのマスコットを買ってきてくれた。うれしかったのか、まだショックだったのかまた大粒の涙が流れて泣き止むまでまな香がずっとそばにいてくれた。泣き止むと同時に寝てしまっていたため、気づいたら朝になっていて、机にまな香から【無駄になったとか思っちゃだめだよ。可愛くなって、初恋の経験ができたんだから。これからだからね!!】と書いてあるメモが残されていた。私には、頼ることができる人がいるんだと再認識できた。
私は、夏休み前に冬也に大事な話があると言った。やっと、私と冬也の予定があった。話なんてすぐ終わる。でも、なかなか切り出せない。カフェに行ったり、ゲーセンに行ったりいろいろして、もう夕方になったのに言えなかった。
「どうしたまな香。今日はなんかまな香らしくない」
「いや、あのね。話があるって言ったじゃん。それなんだけど」
「おう、どうした?」
「私さ、中学の時から冬也のこと好きだったんだよ」
「そうなんだ。ありがとう。俺はまな香のこと好きだけど、まな香と一緒の意味じゃない。だからごめん」
「そっか。そうだよね、冬也は私じゃなくて雪菜が好きなんだよね」
「うん。ってなんでそれ知って。俺誰にも言ってないのに...」
「あんたねー、何年一緒にいると思ってるの?それにあんたらが思ってる以上にあんたらってわかりやすいよ。たぶん、そのまっすぐなとこ好きになったんだと思う。これからは、冬也のこと応援するよ。正直今までは、雪菜とくっついてほしくなくて雪菜のこと応援してた。でもそんなガキじみたことやめるわ。頑張って」
「そっか。いろいろ衝撃過ぎてびっくりしてるけど、ありがとう。今は、雪菜ができるだけ元気になれるように協力してくれるか?」
「そんなもん、言われずともやりますよ。その代わり、あんたが付き合えることになったとき雪菜のこと泣かせたらぶっ飛ばすからね」
そんな冗談を言い合いながら、冬也と一緒に帰った。私の初恋も儚く散ったけど、どこかすっきりしていた。雪菜もいつか、きっぱり諦められるようになったらいいんだけどな。まだしばらく難しいだろうけど。
この時は、その諦めるタイミングがすぐに来るとは思ってなかったわけだけど。
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