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Ⅳ white tiger soul
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新たなメンバーが加わった事を素直に喜ぶべきなんだろうが、彼女が加わった事により、ライアが役に立たなくなりそうだ。それが治るまであまり大きな戦いは避けたいところだ。
「何してんだアス。もう飯は出来てるぞ。」
俺もいつしか名前を略されている。別にいいけど。
最近は魚ばかりで正直飽きてきた所だったので、ココロちゃんが肉料理を作ってくれると言った時は物凄く嬉しかった。魚ばっかりで飽きてたんだ。あと、やっぱり生きている中で一番幸せなのは、同じ目標や話題を持った仲間同志で飯を食うことなんだろうな…って思ったりする事がたまにある。
「なぁ…ココロ…ちゃんの魂はどんな能力なんだ?」
一番大事な事を聞きそびれていた事に気付いた。
「呼び捨てでいいですよ。私は基本スペックの底上げと、少しですが治癒もできます。」
なるほど。コレはかなり重要な役割だ。
人間世界の中国という場所から人間世界の日本…即ち、過去に扉があった国に伝えられたといわれる四神と呼ばれるものがあったそうな。
その力を伝承させ、魂に引き継がせた始まりの四人、或いは世界の起源『オリジン』がいた。オリジン達により種は数を増やし、罪を犯し追放を命じられた者達から新たな種が生まれるという連鎖を繰り返して今現在この世界には数え切れない程の種族が存在する。そして二千年毎に暴走を始める魂を止めなければ種は崩壊するという法則の為、オリジン継承者が現れた崩壊していない種族は強いと勝手ながら根拠をつけられてしまう。
何故こんな話をしたのか。理由は簡単。
青竜族のオリジン継承者はカルだったからだ。
青龍オリジンが扱う能力は、無からエネルギーを創り出し、無限に生成を繰り返す能力。ただし自分自身にしか適応されない能力である。生物粒子化光線も無から創り出されたエネルギーということになる。一応刀については持参したものであるらしい。紅竜のオリジンはまだ復活していない。誰が継承者になるのだろうか。
色々考えている内に、窓の外は闇に呑まれていた。
明日は近くの森へ食料を採りに行かなくてはいけない。人数が増えたとはいえ、人手が増えた事に変わりは無い。集めた数と消費する数が比例する事はまず無いだろう。
この辺の森は動物が多いので、これから長い間肉が食べられるかも知れない。生き物を殺すことに躊躇いをもつ二人がいるため、そいつらには果実や野菜を集めて貰うことにした。
「こんなことしてる暇があるならアイツらに備えて組み手でもしよーぜー?」
「じゃあやらなくていいけどお前飯抜きな。」
この弟、本当に馬鹿だ。
もう救いようが無いレベルでやばい。
草むらに寝転がるライアを見下ろしながら哀れみの目で見つめてやった。コイツには何故かこれが効く様だ。
「あれ?ココロは?」
「…そーいや五分くらい前に別行動って感じで…」
あれ?なんだこの音は。
何か大きな動物の足音みたいな…こっちに向かってきてるな…猪か?
まぁ、間違ってはなかった。
てゆうか大正解だ。
眼球に映ったのは一.五メートルくらいの猪に追いかけられたココロがガチの涙目でこちらに走ってくる様子だった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ライアは起き上がり、猪に向かって拳を振るった。燃え盛る炎の中に入れられた猪は、軽々と命を落とした。
「……ックソ…生き物殺しちまった…兄貴コイツどうす…」
ライアは兄に頭部を握られた。何故か分からないのでとりあえず聞いてみた。
「私は何故怒られているのでしょうかお兄様…」
「お兄様は気持ち悪い。やめろ…じゃなくて!テメェどうするんだよ!今焼いたら保存できねぇだろうが!」
「主婦か貴様は。」
こんなしょーもない理由で頭部握られてんのかよ痛い痛いやめてまじで。
「どーすんだテメェ…」
「…今日食ったら…?」
昨日の余りを先に食わなければ腐ってしまうとか言い出した。いよいよ本当に主婦なのか。
「あ…あの…すいません私のせいで…」
「ん、あぁ、大丈夫全部この馬鹿のせいだから。気にしなくていいよ。全部。コイツが。悪いから。」
最後らへんを強調するな。本格的に悪いみたいになってるし…確かに悪いかもしれんが何故そんなことで怒鳴るんだ。
時は二十一時を指していた。丸いテーブルを囲う様に四人座り、話し合っていた。勿論のこと雑談だ。
ココロが話を切り出した。
「そういえば…今日、森の中で白い虎を見ました…」
ホワイトタイガー?そんなものがこの世界にいるはずない。この生物は人間界のものすごく珍しい動物だったはずだ。
「よし!明日は白い虎探しにでも行くか!」
「え…いや…そんな事よりも鍵の方が大事じゃ…」
まぁそうだわな。馬鹿はこうやってサボろうとする。自分が言い出しっぺだろうが。
「まぁいいんじゃないか?ライアも少しは休暇が欲しい頃だろうし…」
「ありがとうございますカルトレアさん。」
「んじゃ、行ってきます」
「い…行ってきます…」
朝っぱらから二人を見送ったカルとアスは、朝食の準備を始めた。
「おい、カル。お前何企んでやがる。」
「別に、最年長としてライア君の恋を応援してあげてるだけだよ。」
それをされるとアイツはまともに闘わなくなるからやめて欲しいんだが…
「私達もデート行くか?」
「行かねぇよ。俺は休日を家でゆっくり過ごすタイプだ。」
……あ、コイツ怖いわ。後ろで鋭利な何かを構えてやがるこれは百パーセント自分が悪い…。
「白い虎ーーー。ホワイトタイガーー」
なかなか見つからないものだ。まあこの森はすごい広いし簡単に見つける事は出来ないだろう。
「ねぇ、あそこにいる人に聞いてみようよ。」
ココロとライアは一人の切り株に座った青年に話しかけた。
「あのー、すいません。この辺で白い虎って見かけませんでした?」
「白い虎?見た事無いなぁ、僕は少し前までずっとここで暮らしてたけど、見た事無いよ。」
ここで暮らしてたって、普通にヤベェ奴じゃん。
「あ、あのー、お仕事は何をされて…」
いや、こういう人ほど凄い仕事をしてたりするもんだと勝手な偏見もってるんだよなぁ…
「仕事?犯罪組織の幹部だけど。」
…ある意味凄い。そして運が悪い。
「ああ、秘密知っちゃったし、君達死んでもらうね。」
青年は立ち上がり、ライアとココロの首筋に親指の爪を柔らかく刺した。
その瞬間から二人は地面に倒れ込み足掻き始める。
「……………っ‼︎」
「今は痛みだけだけどその内息も出来なくなって死ぬからせいぜい残りの人生二人で楽しんでね。」
青年が立ち去るのをぼやけた視界でライアは観ていた。
青年が見えなくなると、四肢が言うことを聞かなくなる。閉じていく視界の中で、白い陰が現れ自分とココロを抱えようとするところで視界は閉ざされた。
「……白い…虎…?」
「…ここ……どこ…」
見知らぬ家のベッドで寝転がる自分は跳ね起きて扉を開ける。
「お、目覚めた?」
…また見知らぬパターンだよ。
「あのー、ここ何処ですか?てゆうかあなた誰ですか?あと僕と同じくらいの女の子…」
「あーはいはい一個ずつね。まずここは僕ん家で僕はミヤビというものでココロちゃんは二時間くらい前に起きて今は入浴中だよ。」
「あ、とりあえず…助けて頂いてありがとうございます。」
大丈夫だよ。と、ミヤビさんは口を開いた。
「いやー、あの毒があいつの持ち毒のキョウチクトウじゃ無かったら僕も処置出来なかったからさ、危なかったよ。」
「キョウチク…トウ…?」
初めて聞く名前だが、植物なのだろうとは察しがつく。
「ん。腹痛や目眩、嘔吐に四肢脱力。最悪死ぬ奴を無理やり濃度高くした奴だったから危なかったよー?」
何言ってるのか分かんない。危ない毒くらいしか頭に入ってないんだけど。
「で?ライア君どーするんだい?またベルフェゴールと戦うつもりだろうけど君じゃちょっと厳しいかもよ。あ、ベルフェゴールってあの組織の人のことね。」
…一度返って兄とカルさんに手伝って貰う事も考えたが、毒を刺されたら今度こそ終わってしまう。しかし戦力優先だろう…
「…ミヤビさん…助けてもらったうえ、こんなお願いするのもなんですが…手伝ってくれませんか?」
「いいよ。」
いいの⁉︎決めんの早くね⁉︎
「別に。僕もベルぶっ飛ばしたいし。」
「なら…仲間を連れてくるんで…」
ミヤビは手を前に出した。
「本当に申し訳ないんだけど、僕はそんな人数の処置をしながら戦える自身がない。二人じゃダメかな?」と言った。
なら、二人で戦おう。やっぱり数で解決しようとしても出来ない物もあるんだな…
「ベルとの決戦は今日にしよう。お仲間さんも心配するだろうしね。」
こうして、俺とミヤビさんのベルフェゴール討伐作戦が開始したのでした。
夕暮れに染まる木に囲まれたキャンプ場の様な場所に辿り着いた。
切り株には相も変わらずにベルが腰掛けていた。
「や、久しぶりだねベル。」
ミヤビさんの声に反応し、ベルは口を開く。
「なんだミヤビかよ。まだこの森に居んのか、あれほど出てけって言ったのに。んで、そっちのガキも生きてんじゃねぇかよ…本当に邪魔だなお前は。」
長々と喋り続けるベルを呆れた様に見つめたミヤビさんは、「キョウチクトウ如き治せないと思ったか?」と言った。
「んで!僕はどうすれば良いんだよ?戦えばいいのか?」
仕事に疲れた社畜の様に怠そうな仕草で話しかける。
「ううん、『死んでくれれば』いいよ。」
この言葉は開戦の合図となった。
両者装備を身につけ、向かい合わせに走り出す。
ベルフェゴールの装備…それは蝶の羽を背中に生やし、小瓶を腰に巻きつけた簡易的な物だが、侮れない。きっとあの小瓶の中身は毒に違いないと踏んだ。
一方、ミヤビの装備は身体中の皮膚に歪に描かれた雷の様な黒い模様を纏い、黒にコントラストとなる白いローブに身を包んで、両手には鋭く尖る爪があり、青白い光を放っている。
それはまるで、白い虎。ホワイトタイガー。
いや、そんなもので片付けられて良いものではない。
その凛とした姿はそう、まるで…
『白虎』
消えたかと思われたミヤビは目に見えぬ速さで攻撃を加える。彼は何処に対して毒を飛ばすのかを完璧に予知しているのか。
「飛び道具マトモに避けれる奴と戦った事無いだろ?かといってお前肉弾戦は苦手だもんなぁ。」
「毒は保険だ。解毒剤持ってるやつにどうこうしたって効果無いしな。だから別の方法で殺す。」
ベルは後ろでこの戦いを観戦していたライアに毒を飛ばした。毒針のスピードが遅く感じたライアは軽々と避けたが、振り向くと形成は逆転していた。
ミヤビさんのお人好しな性格がライアに向けられた一瞬の隙で全ての解毒薬は割られ、ミヤビさんの手は掴まれてしまった。
「あー、やっとミヤビ君に毒を刺せるのかぁ、本当に邪魔な存在だったよ。本当に、本当に本当に………じゃあね。」
石のナイフに付けた毒を勢いよく首筋に刺そうとしたその時、地面から大量の水が溢れ出て来た。
水を浴びた二人の影は、地面に落ちて脱力した様に倒れ込んだ。少しするとミヤビさんは起き上がったが、ベルが起き上がる事は無かった。
物陰から、聞き覚えのある声を聞いた。
「蝶は羽の鱗粉落とされると飛べなくなるんだったよな?」
兄。兄の声だった。水が出た時点で察しはついていたが。
「おいホワイトタイガー、早くこいつ殺しちまえよ。」
兄はどうして初対面の方にこういう接し方が出来るのだろうか。
「僕の魂はホワイトタイガーじゃなくて四神白虎だよ。まぁ君のいう通り、こいつは早めに殺した方が良いよね。」
「こうして、ベルフェゴール討伐は兄の助けにより成功する事が出来ましたとさ。めでたしめでたし。ってとこか。」
ライア達が去った後の切り株に現れた青年は、そう呟いた。切り株に座り手足をばたつかせ虚とした目で言葉を溢した。
「はぁー、ちょっと遅かったなぁー俺もベル殺したかったなー。」
青年は蝶の羽を拾い上げ、月に透かして見た。
「…姉さん……」
「なーにずっと独り言呟いてんの?」
現れたミヤビは青年に話しかける。
「ミヤビてめぇ、どっから見てた?」
「まさか魂操者の連合協会会長がシスコンだったとはねぇ。」
ミヤビは座り込み、夜空を見上げた。
「あれだけお姉さんの事忘れるんだーって言ってたクセに。」
「うるせえ。ちょっと思い出しただけだろ。」
会話は弾むが、二人ともどこかぎこちなく感じる。
「まぁ、忘れられるよりも覚えてくれた方が女の子は嬉しいと思うよ?」
「一番乙女心理解して無さそうな奴に言われたかねぇよ。」
ミヤビはため息を吐くと再び夜空を見上げ、呟いた。
「本当の乙女心は乙女にも分からないって事か。」
「……………は?なんて?」
青年は不可解な発言を聞き返す。
「あれ?言ってなかったっけ、僕女だよ?」
夜の静かさを象る闇に声が響く。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「………そんなに驚く?」
青年はため息を同じように吐くと、再び話し始めた。
「四神継承者がまさかの男装癖かよ…」
「世界的な連合会長がシスコンだよ…」
「何してんだアス。もう飯は出来てるぞ。」
俺もいつしか名前を略されている。別にいいけど。
最近は魚ばかりで正直飽きてきた所だったので、ココロちゃんが肉料理を作ってくれると言った時は物凄く嬉しかった。魚ばっかりで飽きてたんだ。あと、やっぱり生きている中で一番幸せなのは、同じ目標や話題を持った仲間同志で飯を食うことなんだろうな…って思ったりする事がたまにある。
「なぁ…ココロ…ちゃんの魂はどんな能力なんだ?」
一番大事な事を聞きそびれていた事に気付いた。
「呼び捨てでいいですよ。私は基本スペックの底上げと、少しですが治癒もできます。」
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人間世界の中国という場所から人間世界の日本…即ち、過去に扉があった国に伝えられたといわれる四神と呼ばれるものがあったそうな。
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何故こんな話をしたのか。理由は簡単。
青竜族のオリジン継承者はカルだったからだ。
青龍オリジンが扱う能力は、無からエネルギーを創り出し、無限に生成を繰り返す能力。ただし自分自身にしか適応されない能力である。生物粒子化光線も無から創り出されたエネルギーということになる。一応刀については持参したものであるらしい。紅竜のオリジンはまだ復活していない。誰が継承者になるのだろうか。
色々考えている内に、窓の外は闇に呑まれていた。
明日は近くの森へ食料を採りに行かなくてはいけない。人数が増えたとはいえ、人手が増えた事に変わりは無い。集めた数と消費する数が比例する事はまず無いだろう。
この辺の森は動物が多いので、これから長い間肉が食べられるかも知れない。生き物を殺すことに躊躇いをもつ二人がいるため、そいつらには果実や野菜を集めて貰うことにした。
「こんなことしてる暇があるならアイツらに備えて組み手でもしよーぜー?」
「じゃあやらなくていいけどお前飯抜きな。」
この弟、本当に馬鹿だ。
もう救いようが無いレベルでやばい。
草むらに寝転がるライアを見下ろしながら哀れみの目で見つめてやった。コイツには何故かこれが効く様だ。
「あれ?ココロは?」
「…そーいや五分くらい前に別行動って感じで…」
あれ?なんだこの音は。
何か大きな動物の足音みたいな…こっちに向かってきてるな…猪か?
まぁ、間違ってはなかった。
てゆうか大正解だ。
眼球に映ったのは一.五メートルくらいの猪に追いかけられたココロがガチの涙目でこちらに走ってくる様子だった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ライアは起き上がり、猪に向かって拳を振るった。燃え盛る炎の中に入れられた猪は、軽々と命を落とした。
「……ックソ…生き物殺しちまった…兄貴コイツどうす…」
ライアは兄に頭部を握られた。何故か分からないのでとりあえず聞いてみた。
「私は何故怒られているのでしょうかお兄様…」
「お兄様は気持ち悪い。やめろ…じゃなくて!テメェどうするんだよ!今焼いたら保存できねぇだろうが!」
「主婦か貴様は。」
こんなしょーもない理由で頭部握られてんのかよ痛い痛いやめてまじで。
「どーすんだテメェ…」
「…今日食ったら…?」
昨日の余りを先に食わなければ腐ってしまうとか言い出した。いよいよ本当に主婦なのか。
「あ…あの…すいません私のせいで…」
「ん、あぁ、大丈夫全部この馬鹿のせいだから。気にしなくていいよ。全部。コイツが。悪いから。」
最後らへんを強調するな。本格的に悪いみたいになってるし…確かに悪いかもしれんが何故そんなことで怒鳴るんだ。
時は二十一時を指していた。丸いテーブルを囲う様に四人座り、話し合っていた。勿論のこと雑談だ。
ココロが話を切り出した。
「そういえば…今日、森の中で白い虎を見ました…」
ホワイトタイガー?そんなものがこの世界にいるはずない。この生物は人間界のものすごく珍しい動物だったはずだ。
「よし!明日は白い虎探しにでも行くか!」
「え…いや…そんな事よりも鍵の方が大事じゃ…」
まぁそうだわな。馬鹿はこうやってサボろうとする。自分が言い出しっぺだろうが。
「まぁいいんじゃないか?ライアも少しは休暇が欲しい頃だろうし…」
「ありがとうございますカルトレアさん。」
「んじゃ、行ってきます」
「い…行ってきます…」
朝っぱらから二人を見送ったカルとアスは、朝食の準備を始めた。
「おい、カル。お前何企んでやがる。」
「別に、最年長としてライア君の恋を応援してあげてるだけだよ。」
それをされるとアイツはまともに闘わなくなるからやめて欲しいんだが…
「私達もデート行くか?」
「行かねぇよ。俺は休日を家でゆっくり過ごすタイプだ。」
……あ、コイツ怖いわ。後ろで鋭利な何かを構えてやがるこれは百パーセント自分が悪い…。
「白い虎ーーー。ホワイトタイガーー」
なかなか見つからないものだ。まあこの森はすごい広いし簡単に見つける事は出来ないだろう。
「ねぇ、あそこにいる人に聞いてみようよ。」
ココロとライアは一人の切り株に座った青年に話しかけた。
「あのー、すいません。この辺で白い虎って見かけませんでした?」
「白い虎?見た事無いなぁ、僕は少し前までずっとここで暮らしてたけど、見た事無いよ。」
ここで暮らしてたって、普通にヤベェ奴じゃん。
「あ、あのー、お仕事は何をされて…」
いや、こういう人ほど凄い仕事をしてたりするもんだと勝手な偏見もってるんだよなぁ…
「仕事?犯罪組織の幹部だけど。」
…ある意味凄い。そして運が悪い。
「ああ、秘密知っちゃったし、君達死んでもらうね。」
青年は立ち上がり、ライアとココロの首筋に親指の爪を柔らかく刺した。
その瞬間から二人は地面に倒れ込み足掻き始める。
「……………っ‼︎」
「今は痛みだけだけどその内息も出来なくなって死ぬからせいぜい残りの人生二人で楽しんでね。」
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青年が見えなくなると、四肢が言うことを聞かなくなる。閉じていく視界の中で、白い陰が現れ自分とココロを抱えようとするところで視界は閉ざされた。
「……白い…虎…?」
「…ここ……どこ…」
見知らぬ家のベッドで寝転がる自分は跳ね起きて扉を開ける。
「お、目覚めた?」
…また見知らぬパターンだよ。
「あのー、ここ何処ですか?てゆうかあなた誰ですか?あと僕と同じくらいの女の子…」
「あーはいはい一個ずつね。まずここは僕ん家で僕はミヤビというものでココロちゃんは二時間くらい前に起きて今は入浴中だよ。」
「あ、とりあえず…助けて頂いてありがとうございます。」
大丈夫だよ。と、ミヤビさんは口を開いた。
「いやー、あの毒があいつの持ち毒のキョウチクトウじゃ無かったら僕も処置出来なかったからさ、危なかったよ。」
「キョウチク…トウ…?」
初めて聞く名前だが、植物なのだろうとは察しがつく。
「ん。腹痛や目眩、嘔吐に四肢脱力。最悪死ぬ奴を無理やり濃度高くした奴だったから危なかったよー?」
何言ってるのか分かんない。危ない毒くらいしか頭に入ってないんだけど。
「で?ライア君どーするんだい?またベルフェゴールと戦うつもりだろうけど君じゃちょっと厳しいかもよ。あ、ベルフェゴールってあの組織の人のことね。」
…一度返って兄とカルさんに手伝って貰う事も考えたが、毒を刺されたら今度こそ終わってしまう。しかし戦力優先だろう…
「…ミヤビさん…助けてもらったうえ、こんなお願いするのもなんですが…手伝ってくれませんか?」
「いいよ。」
いいの⁉︎決めんの早くね⁉︎
「別に。僕もベルぶっ飛ばしたいし。」
「なら…仲間を連れてくるんで…」
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「本当に申し訳ないんだけど、僕はそんな人数の処置をしながら戦える自身がない。二人じゃダメかな?」と言った。
なら、二人で戦おう。やっぱり数で解決しようとしても出来ない物もあるんだな…
「ベルとの決戦は今日にしよう。お仲間さんも心配するだろうしね。」
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夕暮れに染まる木に囲まれたキャンプ場の様な場所に辿り着いた。
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「や、久しぶりだねベル。」
ミヤビさんの声に反応し、ベルは口を開く。
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長々と喋り続けるベルを呆れた様に見つめたミヤビさんは、「キョウチクトウ如き治せないと思ったか?」と言った。
「んで!僕はどうすれば良いんだよ?戦えばいいのか?」
仕事に疲れた社畜の様に怠そうな仕草で話しかける。
「ううん、『死んでくれれば』いいよ。」
この言葉は開戦の合図となった。
両者装備を身につけ、向かい合わせに走り出す。
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それはまるで、白い虎。ホワイトタイガー。
いや、そんなもので片付けられて良いものではない。
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物陰から、聞き覚えのある声を聞いた。
「蝶は羽の鱗粉落とされると飛べなくなるんだったよな?」
兄。兄の声だった。水が出た時点で察しはついていたが。
「おいホワイトタイガー、早くこいつ殺しちまえよ。」
兄はどうして初対面の方にこういう接し方が出来るのだろうか。
「僕の魂はホワイトタイガーじゃなくて四神白虎だよ。まぁ君のいう通り、こいつは早めに殺した方が良いよね。」
「こうして、ベルフェゴール討伐は兄の助けにより成功する事が出来ましたとさ。めでたしめでたし。ってとこか。」
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「はぁー、ちょっと遅かったなぁー俺もベル殺したかったなー。」
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「…姉さん……」
「なーにずっと独り言呟いてんの?」
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「まさか魂操者の連合協会会長がシスコンだったとはねぇ。」
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「うるせえ。ちょっと思い出しただけだろ。」
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「まぁ、忘れられるよりも覚えてくれた方が女の子は嬉しいと思うよ?」
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「……………は?なんて?」
青年は不可解な発言を聞き返す。
「あれ?言ってなかったっけ、僕女だよ?」
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「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
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