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第2話 オーレリアの病
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その模様とも言い難い何かはしきりに点滅を繰り返し、夕暮れの赤い教室にコントラストの青を生み出す。
「ちょっと……望月⁉︎返事しなさいよ!」
固唾を飲み、その姿を見つめていた。無論委員長の声は届いているが、なんと返すべきなのか分からなかったのだ。
「望月‼︎」
悩みに身を任せていると、立ち上がった委員長によって両肩を掴まれた。身体に刺激が現れた事により、閉ざしていた口から言葉がこぼれる。
「委員長、大丈夫⁉︎なんか身体に変化とかある⁉︎」
「な、何よ急に……あんたこそ何なの、急に黙り込んでこっち見つめて……」
委員長は、どうやら今の段階では姿のみの変化らしい。体調面も先程と変わらずに元気だ。
しかしそれは、委員長が知る術はないというもの。見たところ凹凸などはなく、完全に皮膚と一体化しているらしい。瘡蓋《かさぶた》のようなものとは違い、鏡などを見ない限りは存在に気付くことはないだろう。
とりあえず、今それを指摘したとて彼女は納得しないだろう。それを手っ取り早く理解してもらうには、目視させるに限る。
というわけで、右手に構えたスマートフォンを起動し、カメラを立ち上げてシャッターを切った。
「ちょ……なにしてんの⁉︎消しなさ……」
突然の出来事に動揺しながらも委員長の手がスマートフォンを奪い、彼女は画面に目を向ける。
「なにこれ……」
「一応言うけど、加工なんてしてない。多分、エデンが言ったミステリーのひとつだと思う」
右頬で点滅を繰り返すその青白い光は、彼女を絶望させるには充分だったらしい。
「今のところは外見的な症状だけだけど、いつ悪化してなにがあるかも分からない。早く帰って安静にした方が……」
「駄目……」
委員長の絶望感はひしひしと伝わり、それを代弁するように静けさの巣食う教室で無機質に点滅する。
「こんなのじゃ外歩けない……」
「なに言ってんだよ委員長、あの声明は世界中に向けられたものなんだ。誰も気になんて止めない筈だ」
「でも……‼︎」
自身の今後、将来、それらが未知に包み隠され、それでも尚動けと言うのは酷であろうか。しかし、それ以外に打開策があるのかと言われれば無いだろう。
幸い右頬だけなのが唯一の救いだろうか、そこだけを隠せれば問題はないだろうか。
まずは、怪我をした部位を塞ぐように隠すのはどうかと考えてみる。しかし時は6時に迫り、既に保健室は使えないだろう。勿論それに使えるような品を持ち合わせてはいないので、却下。
今から買いに行くにしても、往復すると学校は閉まってしまう距離だ。
「あ。あれってまだあったかな」
「あれ……?」
ひとつだけ、この場を打破できるかもしれない方法が浮かぶ。心配はあるが、何もないよりはマシだ。
「あったあった。委員長、これ」
自身のロッカーを漁り、丸めて奥に突っ込まれた巾着袋を投げ渡す。
手に取った巾着を開けて、委員長は中に乱雑に突っ込まれたものを取り出した。
「これ……冬服じゃない」
「うん、面倒くさいからずっと入れてんだよね」
「洗濯しなさい‼︎」
「いや、学年変わる時持って帰った‼︎一回も使ってねえから大丈夫‼︎」
勿論一度も使用してないので、まあ問題はないだろう。季節の変わり目に体調を左右されやすい自身は、いついかなる時にどんな環境にも対応できるように、こういった道具を眠らせているのだ。
「確かそれ、フードついてただろ。無いよりはマシと思って。ほら、試してみろよ」
「う、うん……」
まあ、幼女委員長と名付けられる程なので予想はしていた。かなりサイズが合っていないらしい。
「……でかい」
もうそれは仕方ないと思う。だが、これで顔を隠すことはできるのでは無いだろうか。
と、思っていたのだが。
陽は暮れ、闇へと変わっていく世界では、頬の光がなかなかに目立つ。それに、隠れているのは鼻の辺りまでだ。
なんか、ダボダボの黒パーカープラス青白い光のコンボによって、サイバー感というかゲーミング感というか、そういう雰囲気が醸し出されている。
「ただの痛い人にみえる」
「望月ぃ‼︎」
しかし、これ以上暗くなれば、更に目立ってしまうかもしれない。とりあえずこの姿に妥協して、本日は早期の帰宅を必要とする事にした。
身長差は結構なもので、そんな二人が横に並んで校舎を後にする。誰一人として出会わなかった学校も、教員以外は皆帰宅してしまったらしい。
「それじゃ、明日洗って返すから……」
手を小さく振って、フードで必死に顔を覆い隠す。そんな委員長の姿に、一抹の不安が頭をよぎる事になる。
「待って」
とりあえず、今日の帰宅は遅くなりそうだ。両親に連絡は入れていないが、これもいつも通り「友人との寄り道」という事にしておこう。
そんな事を思いながら、しゃがみ込んだ。
「……何?」
「俺の背中で顔隠してけばいいんじゃねえの。そしたらフードより防御力高い。お前ん家どこ?」
再度言うが、幼女委員長なんて呼ばれる彼女。そんな一人を背に抱えることなんて、まだ容易い方だ。
「なっ……何言ってんの⁉︎そんな恥ずっかしい事……」
「早く。まじで日暮れるから」
リュックサックは前に抱え直して、委員長を急かす。たじろぐ彼女の顔は、しゃがんでいるというのにも関わらず、フードに隠されて見えない。
遂に観念したか、委員長は口を一文字に結んでこちらに身を任せる。想像してたよりも全然軽かったので、リュックサックの重みで重心は前に向いていた。
「で、お前どこ住んでんだよ」
明るい街の中心から離れ、街灯に無機質なオレンジ色の灯りが灯る頃。季節的にも蝉の声が響き、小走りで帰宅する小学生も姿を表す時間だ。
「……ありがと」
「ん、なんて?」
「なんでもない」
いつも登校の際に感じている背の重みよりも軽い委員長と、何気ない日常会話をする気にはなれなかった。
実在したという事実により、この正体不明の刻印が非現実から現実に変わってしまう日が来るだろう。逆に、それまでは異端として扱われてしまう代物であるという訳だ。
それは、19世紀以前までヨーロッパの人間がイッカクという動物を伝説上のものと思っていたように。
カモノハシの骨格を初めて目にした学者が、たくさんの動物を融合させて作られた模倣品だと疑ったように。
きっと、未知は疑われる結末に至るだろう。
エデンという存在の声明が、どこまでの人間に信じられているのか。これも、大事な要素になるだろう。
「……ん」
「なに、どうかした?」
不意に、なんだか首の辺りがむず痒くなるのを感じる。夏の暑さで蒸れてしまったのだろうか。
まあ、冬に用いるような厚手のパーカーを背負っているのだ。そうなっても仕方ないだろう。
耐えられないこともないピリピリとした感覚は忘れる事にして、少し脚を急がせながら委員長宅に向かった。
「それじゃ、これ返すね」
委員長の自宅マンション前。彼女が羽織っていたパーカーを受け取り、乱雑にリュックサックへ詰め込んだ。
「今後どうなるかは分かんないけど、もし来れそうなら明日も学校来いよ」
「なっ……なにその不登校みたいな扱い……」
この言葉を小さな笑いで誤魔化して、その場を去る理由にした。今度こそ別れ際の挨拶として手を振り、その場から1番近い駅を目指す。
「望月、ありがと」
「なんか言った?」
「なんでもなーい」
そんな会話を最後にして、今度こそ帰宅する。
SNSの書き込みを、しっかりと分析してみる。くだらない日常を呟くアカウントや、アニメキャラクターを二次創作するアカウント。絵を投稿するアカウントや、芸能人のアカウントまでも。
殆ど全てのアカウントが、本日視聴したエデンの声明について会話をしている。中には、国家などによって混乱を招く人々もいるらしい。
こちらは、情報量が多すぎるが故に今調べるのは得策では無いだろう。即ち今調べるべきは、唯一存在を掌握している謎。
委員長の、頬の刻印についてだ。
SNSにも種類があるため、全てを調べるのは面倒なので、1番ユーザー人口が多いであろうものから順に調べる事にした。
「頬 模様」
このワードで検索をかけてみる。すると、既視感のあるものが並んでいた。
『なんか頬に気持ち悪いのついてるんだが。これもエデンが言ってたミステリーってやつ?怖‼︎』
このアカウントの画像に添付された画像には、委員長の頬に現れた刻印と全く同じものが残されていた。画像に写っているのは、30代くらいの男性だろうか。
次、その次と画像を確認していく。一番目の投稿と同じように症状を軽視して、SNSのネタにする様子が多く見受けられた。
「対象になっているのは老若男女、統一性は皆無……」
だが、ミステリーというものは、解明されていない状態を指す。きっとエデンは、そう簡単に謎を解かせる気はないのだろう。
現在、人類は70億人を超えている。そして、世界中に99個。単純な70億÷99なら、四捨五入したとして一つの謎に七千万人が加担する事ができるのだから。
そんなものに対し、15年も猶予を与えた。人類全員が参加するとは思っていないだろうが、だとしても暇つぶし程度に参加する人数を15年合計すればかなりの数になるだろう。
更に、一つが解明されるたびにそれぞれ未解決のミステリーに参加する人数は増えていく。
そんな数の暴力を行使されたとしても解けない謎と、彼は遠回しに伝えたのだ。そう簡単に解けるわけがない。
ただ、解けないものを渡すわけもないだろう。きっと、人類に理解できるがたどり着けない。そんなものを作ったのだろう。
そんな事を思いながら、今度は「cheek」で検索をかけてみる。「頬」の英訳だ。
すると、またも同じような画像が流れる。頬に、四つ葉の刻印が並んでいるのだ。
これで得られた情報は、日本国外でも発生している事態ということだ。それぞれの特性において、特定の地域でしか起きないものもあるだろう。しかしこれは、全世界で確認されているらしい。
「……ん?」
同じような画像を次々とスクロールしていくうちに、ひとつだけ異端であるものを発見した。当人は、ヨーロッパ系の人物だ。
その頬にある模様。それは、同じように記されていたのだが。
何故か、この画像は『六つ葉』だったのだ。
その投稿のリプライ欄には、ある言葉が。SNS本体に備わっている翻訳機能で、日本語訳してみた。
『四つ葉や六つ葉と種類があるだなんて、オーレリアみたいだ』
「オーレリア……?」
これは何かのヒントになっているのかもしれないと思い、検索エンジンに向けてオーレリアを検索してみる。
検索候補欄のトップには、「オーレリア クラゲ」と表示されていた。
すると、とある画像が画面に表示される。それをみて、ほつれた糸が次々とつながっていくような感覚を覚える。
オーレリア。それは、ミズクラゲ科の学名だ。
ミズクラゲは、先程沢山みた画像に映る頬の模様と同じ模様を持っている。その模様は、個体によって数が変わるらしい。
さらに合わせて、ミズクラゲが持っている毒は弱性。敏感な人以外は、痒みを感じる程度という。
これは、委員長を背負った際に感じた痒みの正体なのだろうか。
何が原因となっているのかは知らないが、ミズクラゲの特性にかなり酷似しているのではないだろうか。
ただ、SNSの投稿数から見るに、あまり被害者は出ていないと考える事ができる。それに、あまり症状もないという。
よって、これの対象法が生み出されるのはかなり先の事になるだろう。
「ちょっと……望月⁉︎返事しなさいよ!」
固唾を飲み、その姿を見つめていた。無論委員長の声は届いているが、なんと返すべきなのか分からなかったのだ。
「望月‼︎」
悩みに身を任せていると、立ち上がった委員長によって両肩を掴まれた。身体に刺激が現れた事により、閉ざしていた口から言葉がこぼれる。
「委員長、大丈夫⁉︎なんか身体に変化とかある⁉︎」
「な、何よ急に……あんたこそ何なの、急に黙り込んでこっち見つめて……」
委員長は、どうやら今の段階では姿のみの変化らしい。体調面も先程と変わらずに元気だ。
しかしそれは、委員長が知る術はないというもの。見たところ凹凸などはなく、完全に皮膚と一体化しているらしい。瘡蓋《かさぶた》のようなものとは違い、鏡などを見ない限りは存在に気付くことはないだろう。
とりあえず、今それを指摘したとて彼女は納得しないだろう。それを手っ取り早く理解してもらうには、目視させるに限る。
というわけで、右手に構えたスマートフォンを起動し、カメラを立ち上げてシャッターを切った。
「ちょ……なにしてんの⁉︎消しなさ……」
突然の出来事に動揺しながらも委員長の手がスマートフォンを奪い、彼女は画面に目を向ける。
「なにこれ……」
「一応言うけど、加工なんてしてない。多分、エデンが言ったミステリーのひとつだと思う」
右頬で点滅を繰り返すその青白い光は、彼女を絶望させるには充分だったらしい。
「今のところは外見的な症状だけだけど、いつ悪化してなにがあるかも分からない。早く帰って安静にした方が……」
「駄目……」
委員長の絶望感はひしひしと伝わり、それを代弁するように静けさの巣食う教室で無機質に点滅する。
「こんなのじゃ外歩けない……」
「なに言ってんだよ委員長、あの声明は世界中に向けられたものなんだ。誰も気になんて止めない筈だ」
「でも……‼︎」
自身の今後、将来、それらが未知に包み隠され、それでも尚動けと言うのは酷であろうか。しかし、それ以外に打開策があるのかと言われれば無いだろう。
幸い右頬だけなのが唯一の救いだろうか、そこだけを隠せれば問題はないだろうか。
まずは、怪我をした部位を塞ぐように隠すのはどうかと考えてみる。しかし時は6時に迫り、既に保健室は使えないだろう。勿論それに使えるような品を持ち合わせてはいないので、却下。
今から買いに行くにしても、往復すると学校は閉まってしまう距離だ。
「あ。あれってまだあったかな」
「あれ……?」
ひとつだけ、この場を打破できるかもしれない方法が浮かぶ。心配はあるが、何もないよりはマシだ。
「あったあった。委員長、これ」
自身のロッカーを漁り、丸めて奥に突っ込まれた巾着袋を投げ渡す。
手に取った巾着を開けて、委員長は中に乱雑に突っ込まれたものを取り出した。
「これ……冬服じゃない」
「うん、面倒くさいからずっと入れてんだよね」
「洗濯しなさい‼︎」
「いや、学年変わる時持って帰った‼︎一回も使ってねえから大丈夫‼︎」
勿論一度も使用してないので、まあ問題はないだろう。季節の変わり目に体調を左右されやすい自身は、いついかなる時にどんな環境にも対応できるように、こういった道具を眠らせているのだ。
「確かそれ、フードついてただろ。無いよりはマシと思って。ほら、試してみろよ」
「う、うん……」
まあ、幼女委員長と名付けられる程なので予想はしていた。かなりサイズが合っていないらしい。
「……でかい」
もうそれは仕方ないと思う。だが、これで顔を隠すことはできるのでは無いだろうか。
と、思っていたのだが。
陽は暮れ、闇へと変わっていく世界では、頬の光がなかなかに目立つ。それに、隠れているのは鼻の辺りまでだ。
なんか、ダボダボの黒パーカープラス青白い光のコンボによって、サイバー感というかゲーミング感というか、そういう雰囲気が醸し出されている。
「ただの痛い人にみえる」
「望月ぃ‼︎」
しかし、これ以上暗くなれば、更に目立ってしまうかもしれない。とりあえずこの姿に妥協して、本日は早期の帰宅を必要とする事にした。
身長差は結構なもので、そんな二人が横に並んで校舎を後にする。誰一人として出会わなかった学校も、教員以外は皆帰宅してしまったらしい。
「それじゃ、明日洗って返すから……」
手を小さく振って、フードで必死に顔を覆い隠す。そんな委員長の姿に、一抹の不安が頭をよぎる事になる。
「待って」
とりあえず、今日の帰宅は遅くなりそうだ。両親に連絡は入れていないが、これもいつも通り「友人との寄り道」という事にしておこう。
そんな事を思いながら、しゃがみ込んだ。
「……何?」
「俺の背中で顔隠してけばいいんじゃねえの。そしたらフードより防御力高い。お前ん家どこ?」
再度言うが、幼女委員長なんて呼ばれる彼女。そんな一人を背に抱えることなんて、まだ容易い方だ。
「なっ……何言ってんの⁉︎そんな恥ずっかしい事……」
「早く。まじで日暮れるから」
リュックサックは前に抱え直して、委員長を急かす。たじろぐ彼女の顔は、しゃがんでいるというのにも関わらず、フードに隠されて見えない。
遂に観念したか、委員長は口を一文字に結んでこちらに身を任せる。想像してたよりも全然軽かったので、リュックサックの重みで重心は前に向いていた。
「で、お前どこ住んでんだよ」
明るい街の中心から離れ、街灯に無機質なオレンジ色の灯りが灯る頃。季節的にも蝉の声が響き、小走りで帰宅する小学生も姿を表す時間だ。
「……ありがと」
「ん、なんて?」
「なんでもない」
いつも登校の際に感じている背の重みよりも軽い委員長と、何気ない日常会話をする気にはなれなかった。
実在したという事実により、この正体不明の刻印が非現実から現実に変わってしまう日が来るだろう。逆に、それまでは異端として扱われてしまう代物であるという訳だ。
それは、19世紀以前までヨーロッパの人間がイッカクという動物を伝説上のものと思っていたように。
カモノハシの骨格を初めて目にした学者が、たくさんの動物を融合させて作られた模倣品だと疑ったように。
きっと、未知は疑われる結末に至るだろう。
エデンという存在の声明が、どこまでの人間に信じられているのか。これも、大事な要素になるだろう。
「……ん」
「なに、どうかした?」
不意に、なんだか首の辺りがむず痒くなるのを感じる。夏の暑さで蒸れてしまったのだろうか。
まあ、冬に用いるような厚手のパーカーを背負っているのだ。そうなっても仕方ないだろう。
耐えられないこともないピリピリとした感覚は忘れる事にして、少し脚を急がせながら委員長宅に向かった。
「それじゃ、これ返すね」
委員長の自宅マンション前。彼女が羽織っていたパーカーを受け取り、乱雑にリュックサックへ詰め込んだ。
「今後どうなるかは分かんないけど、もし来れそうなら明日も学校来いよ」
「なっ……なにその不登校みたいな扱い……」
この言葉を小さな笑いで誤魔化して、その場を去る理由にした。今度こそ別れ際の挨拶として手を振り、その場から1番近い駅を目指す。
「望月、ありがと」
「なんか言った?」
「なんでもなーい」
そんな会話を最後にして、今度こそ帰宅する。
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殆ど全てのアカウントが、本日視聴したエデンの声明について会話をしている。中には、国家などによって混乱を招く人々もいるらしい。
こちらは、情報量が多すぎるが故に今調べるのは得策では無いだろう。即ち今調べるべきは、唯一存在を掌握している謎。
委員長の、頬の刻印についてだ。
SNSにも種類があるため、全てを調べるのは面倒なので、1番ユーザー人口が多いであろうものから順に調べる事にした。
「頬 模様」
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『なんか頬に気持ち悪いのついてるんだが。これもエデンが言ってたミステリーってやつ?怖‼︎』
このアカウントの画像に添付された画像には、委員長の頬に現れた刻印と全く同じものが残されていた。画像に写っているのは、30代くらいの男性だろうか。
次、その次と画像を確認していく。一番目の投稿と同じように症状を軽視して、SNSのネタにする様子が多く見受けられた。
「対象になっているのは老若男女、統一性は皆無……」
だが、ミステリーというものは、解明されていない状態を指す。きっとエデンは、そう簡単に謎を解かせる気はないのだろう。
現在、人類は70億人を超えている。そして、世界中に99個。単純な70億÷99なら、四捨五入したとして一つの謎に七千万人が加担する事ができるのだから。
そんなものに対し、15年も猶予を与えた。人類全員が参加するとは思っていないだろうが、だとしても暇つぶし程度に参加する人数を15年合計すればかなりの数になるだろう。
更に、一つが解明されるたびにそれぞれ未解決のミステリーに参加する人数は増えていく。
そんな数の暴力を行使されたとしても解けない謎と、彼は遠回しに伝えたのだ。そう簡単に解けるわけがない。
ただ、解けないものを渡すわけもないだろう。きっと、人類に理解できるがたどり着けない。そんなものを作ったのだろう。
そんな事を思いながら、今度は「cheek」で検索をかけてみる。「頬」の英訳だ。
すると、またも同じような画像が流れる。頬に、四つ葉の刻印が並んでいるのだ。
これで得られた情報は、日本国外でも発生している事態ということだ。それぞれの特性において、特定の地域でしか起きないものもあるだろう。しかしこれは、全世界で確認されているらしい。
「……ん?」
同じような画像を次々とスクロールしていくうちに、ひとつだけ異端であるものを発見した。当人は、ヨーロッパ系の人物だ。
その頬にある模様。それは、同じように記されていたのだが。
何故か、この画像は『六つ葉』だったのだ。
その投稿のリプライ欄には、ある言葉が。SNS本体に備わっている翻訳機能で、日本語訳してみた。
『四つ葉や六つ葉と種類があるだなんて、オーレリアみたいだ』
「オーレリア……?」
これは何かのヒントになっているのかもしれないと思い、検索エンジンに向けてオーレリアを検索してみる。
検索候補欄のトップには、「オーレリア クラゲ」と表示されていた。
すると、とある画像が画面に表示される。それをみて、ほつれた糸が次々とつながっていくような感覚を覚える。
オーレリア。それは、ミズクラゲ科の学名だ。
ミズクラゲは、先程沢山みた画像に映る頬の模様と同じ模様を持っている。その模様は、個体によって数が変わるらしい。
さらに合わせて、ミズクラゲが持っている毒は弱性。敏感な人以外は、痒みを感じる程度という。
これは、委員長を背負った際に感じた痒みの正体なのだろうか。
何が原因となっているのかは知らないが、ミズクラゲの特性にかなり酷似しているのではないだろうか。
ただ、SNSの投稿数から見るに、あまり被害者は出ていないと考える事ができる。それに、あまり症状もないという。
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