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31.このままなんて良くない

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 ルイス殿下はよくのんびりとお茶をしたり散歩したりしているみたいだけど、エリオット殿下はそういう話もほとんど聞かない。
 観劇や公園に行ったあの日なんかは、多分かなり無理をして時間を作ってくれたんだろう。

 ……なんでそこまでするんだろう?
 今だって忙しいのから私のことなんて気にせず仕事をしていれば良かったのに。
 わざわざ中庭にまで来た理由って?

 内心では首をかしげているんだけど、口に出すことはできない。

 というのも、エリオット殿下と話をしようとするとどうしても頭の中にこの前のことがよぎってしまうせいだ。
 私が好きなのはルイス殿下なのに、仮にも婚約者だからってエリオット殿下の手であんなに乱されるなんて。
 なんであんな事をしたのかって聞きたくても、話を蒸し返すのも恥ずかしい。

 ルイス殿下とそれ以上の事をしようって思ってんのに何を今更って、自分で自分にツッコミを入れるけど。ずっと覚悟して自分で行動しているのと、訳もわからずに突然されるのとでは全然違う。
 なにか、恥ずかしさが断然違うのだ。

 そのせいで私は今日もただこうして、エリオット殿下が仕事をしている横でお茶をする羽目になっている。
 こんなことじゃ良くないと思ってるのに、恥ずかしいばっかりで嫌とかじゃなかった自分を突きつけられる気がして、エリオット殿下に真っ直ぐ見つめられると頭が空回ってしまうのだ。

 いやでもいつまでもこんな事じゃ悪女なんてなれないよね? うん、良くない。このままなんて良くない!
 心の中で何度も頷きながら、心を強く持った。

「あのっ――」
「あ、お茶のお代わりだね」

 エリオット殿下が立ち上がろうとするから、慌てた。

「自分で出来ますからっ」

 以前に動揺していたらエリオット殿下の手ずからポットを持って注がれてしまったことを思い出す。
 その前にと自分で注ぎながら、そうじゃない! と、はっとする。

「エリオット殿下、あのですね!」
「お茶請けが足りないかい?」
「あ、いえ、これ以上はお腹がいっぱいになってしまうので」
「そう? 足りなければいつでも言ってくれていいから。レベッカのためなら城の者が喜んで作るからね」
「そうですね、エリオット殿下の用意してくださるお菓子もいつも美味しくて……って、そうじゃなくてっ」
「ん?」

 微笑みながら見つめ返されて、思わず顔が熱くなる。

 何で突然あんな事をしたのか、その理由を尋ねる。それだけなのに。
 確認しなくちゃって思う。

「あのっ」
「うん」

 ……でもどうして、こんなにも聞きたいんだろう。そして聞けないんだろう。
 あんな話を蒸し返すのは恥ずかしいから? 本当にそれだけ?

 なんだか最近の私はエリオット殿下の事ばかりを考えている気がする。

「エリオット殿下こちらの裁決をお願いできませぬか?」
「お父様っ!」
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