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恋人の元セフレ(攻め)を優しくじっくりメス堕ちさせる③

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 ――ガコンッ

 しかし、これからという時にエレベーターが突然、大きく揺れた。
 降下している。どうやら電気が回復したらしい。

「はぁ……? まじかよ……」

 普段の彼なら舌打ちしそうなところだが、そんな気力もないようで静かにため息をつく。指抜いて、と覇気のないまま言い、僕が指を抜いて手を拭っている間に、気怠そうに起き上がってズボンを履いている。
 そして、ほどなくして一階に到着したエレベーターを僕らはなんてことない顔をして降りた。







 エレベーターに人が乗っていると思われていなかったようで、出てみればなんの騒ぎにもなっておらず、街の様子からしても地震自体は大した問題にはなっていないようだった。
 停電も思ったより範囲は狭かったようだが、終電は過ぎているし、タクシー乗り場は列の終わりを探すのも嫌になるほどの大行列ができている。朝まで帰宅するのは難しそうだ。
 とりあえず煙草が吸えるところに行きたいという僕の要望に大鳥は黙って頷き、駅の裏口にある、小汚いパーテーションで囲まれた喫煙所に二人で並んで立っていた。
 一服して落ち着いてくると、惜しかったな思いつつも、やってしまった感が勝ってくる。
 まさか僕が出雲を裏切ってしまうなんて(そもそもよく出雲以外に性的興味が湧いたな)。出雲が知ったらきっと悲しむだろうな。泣いてしまうだろうな。可哀想だな。ちょっと見てみたいな…………いや、そうではなくて、完全に魔が差したというやつだ。
 でも不可解な独占欲が働いたのも事実。
 彼に恋心なんてものは一切ない。しかし彼の触れてはいけない部分は、これからも僕以外の誰にも触れてほしくはないとさえ思ってしまっている。
 数え切れないほど女性を抱いて、男性も抱いて、いつも自信たっぷりで活力に溢れた大鳥には、いくらか仄暗い部分がある。それが垣間見えた時、彼の秘密を覗き込む時、輝きの中でゆらめく影には目を瞠るものがある。
 これまで見ているだけだったそれは、触るととても柔らかく繊細で、できればもっと触れてみたかった。

「加賀見」
「うん?」
「ホテル行こ」

 ずっと黙っていた大鳥の意外な提案にはっと振り返れば、彼は大きく息をついて心底嫌そうに舌打ちをした。

「お前の言う通りだよ。気持ち悪いんだよ。動けなくなる。散々自分はしてきたけど、自分が性的に見られるのは…………気持ち悪い。吐きそうになる。胃がきつくって動けねぇんだ」

 こちらを向いているが、目線は少しズレて煙草の火を見つめているようだった。その伏し目がちな表情は煙にぼやかされ、より儚さを増す。

「こんなんだから、いざという時に身体が動かなかったら最悪だろ。だからケツ掘られるくらい大したことねぇってわかれば、一回経験しとけば、多少マシだろ。それこそキモいおっさんにでも掘られたら余計トラウマになりそうだし。お前で手を打っとく」

 あまりに淡々と話すので話の内容を頭の中で処理するのに少しばかり時間を要した。

「つまり…………いや……んん?」
「なんだよ、理解できんだろ。このやろ!」

 首を傾げる僕の頬に手をおいたと思ったら、ぐきっと傾いだ頭を真っ直ぐに戻された。痛い。

「お前のデカマラ突っ込めばもう何にも怖くねぇわ」
「君……ここ、公共の場……」
「エレベーターも公共の場だっつーの」
「つまり、抱いて……ってこと?」
「お前マジでぶん殴るぞおい。この状況じゃ空いてる部屋なかなかねぇだろ、早く行くぞ」
「いや、ちょっと…………大鳥、待って」

 大鳥の中ではもうそれはもう決定事項のようで、僕の意見などはなから聞く気はないという態度でさっさと歩き始めてしまった。いや、まだ煙草も途中……なのだけど、待ってはくれなそうだ。急いで灰皿にまだもう少し吸えそうな煙草を落として後を追う。
 いいのか、いいのだろうか。
 それってかなり責任重大なのではないか。間違えればさらなるトラウマになったりしないか。
 無味乾燥なセックスをしてしまったら、むしろ相手へ体を許すハードルが下がってしまったりはしないか。

「大鳥……」
「ああ?」
「優しくする……ね?」

 こうなったら僕以外とは絶対したくないと思うほどの経験をさせてやる。
 そんな覚悟など知らずに、大鳥は振り向いた。そして「お前マジでくそ」と睨みつけ、僕の頬にトン、と拳を優しく当ててまた歩き始めた。








 何件か回ってやっと見つけた空室は名の知れたシティホテルのスイートルームだった。
 ダブルベッドが二台隙間なく並べられたベッドルームに、八人ほど掛けられそうなコーナーソファの置かれたリビングルーム。ギリギリ二桁を超える宿泊価格のおかげで残っていただろう部屋だ。
 元を正せば僕に原因があるので出雲にバレる覚悟で支払いをしようかと思ったが、大鳥が絶対に自分が支払うと聞かなかったので彼のプライドを守ることにした。いつも飲みに行くときは絶対に一軒目は奢らせるくせに。
 僕がシャワーを浴びた後、中の処理をしてくると続いて大鳥がバスルームに消えてから随分立つ。
 この部屋の最大の欠点は完全禁煙なところ。手持ち無沙汰にサービスで受け取ったシャンパンを先に開けて、一人ベッドで飲み直しつつ待っていたら、ガウンを羽織って……いや、本当に羽織っただけで前も閉じてない大鳥が戻ってきた。
 こうやって裸体で歩いてるのを見ると足が長すぎて脳がバグを起こしてるのかと不安になる。身長はあまり変わらないのに座った途端に小さくなる謎が解けた。

「めんどくせぇ…………お前マジで出雲に感謝したほうがいい。今俺、めっちゃくちゃ玲児の偉大さを感じてるもん」
「おつかれさま」
「そらどーも。あ、お前シャンパンほとんど飲みやがったな⁉ ありえねー!」

 サイドボードに置かれたシャンパンのボトルをカラカラと振って、残りを直接ラッパ飲みで流しこむ豪快さに唖然とする。ありえない。可愛さのかけらもない。こういう彼の姿を見るほうが、お行儀よくちょこんとしていて可愛い出雲に感謝したくなる。

「あーうまいじゃんこれ! もっと飲みたかったー!」
「飲みかけだけど」

 持っていたグラスを渡せば、顔を顰めて嫌そうにしながらも受け取ってそれも飲み干した。
 ふぅ、と大げさに息をついた顔がほんのり赤く染まる。
 むすっとした不機嫌そうな顔が僕に向いて、ベッドボードと枕を背もたれにくつろいでいた僕の上にやってきた。足元で四つん這いになって、こちらのガウンの前も開く。まだ勃起していない性器を見て、ぶはっと吹き出す。

「でっか。立ってないのにコレかよ。やべーな、なんだこれ。出雲すげーな」
「君にも、挿れるんだよ?」
「それなー。怖ぇー」
「かなりしっかり、解さないと……ほら、君が横になって」
「ん……わかった」

 もう覚悟は決まっているからか、素直に頷いて転がろうとする。逆に起き上がる僕の顔を、大鳥は戸惑いつつ覗き込んだ。

「なぁ、仰向け? うしろ?」
「入れる時は……うしろ。だから、仰向けで。君の表情見ながら、したいし」
「は、見るなよ。きも」
「痛いか、どうか……様子、見るから」
「ほんとかよー? なら仕方ねぇか」

 膝を開いて仰向けに転がり、枕を後ろ手に抱く。尻の割れ目に指を差し入れると少し身を固くしたが、概ねリラックスしているようだ。ローションを仕込んできてもらった中に、ゆっくりとまた指を挿入していく。

「はっ…………あ……きもい…………すげぇ違和感……」
「初々しくて、いい反応」
「次っ……そんなこと言ったら、蹴飛ばす、からな……」

 さっきよりずっとすんなり指を飲み込んでいく。1回抜いて、すぐに指を二本に増やしても問題なかった。さっき解したし、自分で中の処理をしながら具合も見てきたのかもしれない。

「どうして……僕にならいいの?」
「付き合い長いし……」
「瑞生は?」
「嫌だよ! ぜってぇ、やだ……」
「そんなものか」

 自分に置き換えて考えてみるが、僕はそもそも人に触られるのが嫌いなので、もし誰かにしてもらうなら出雲しかいないだろうなと思った。出雲にならいくら触られてもいい。
 でもあの子、勃起しないんだよな。

「あっ、おま……もう少し、ゆっくり…………あ、あっ……」

 前立腺を押すとそこがスイッチみたいに声が出る。おもしろい。
 遊ぶ僕を大鳥は涙目で睨んで、ぎゅっとわざと中を締めた。きっつ。結構余裕あるじゃないか、この子。

「お前はどういうつもりで言ったか、あっ…………知らねぇっ、けど…………さっき、確かに、加賀見で良かったって思った。抵抗もできずに、好き放題されて…………変だけど、すっげぇ気持ち…………良く……て、情けなくて、確かに、お前で良かったって。思っちゃったんだよ……」

 予想外の可愛い返事についつい指の動きが強くなると、大鳥の開かれた足が、びっくりしてキュッと内股になる。
 彼ばかりに語らせるのも悪いので、誠意を持ってどういうつもりだったか答えた。

「僕はとりあえず同意はとらないと、まずいかな……と、いうつもりで」
「やっぱ、そんなこったろうと思った……クズ」
「失礼だな……ちゃんと、答えたのに」
「クズ、だけどっ…………なんだよこれぇ……は、あっ、あう、うぅ…………すっげぇ、きもちい」

 あの、大鳥が。
 いっつも偉そうで俺様で、舌打ちばっかりして、美人がいればすぐ声をかけて、僕の恋人の初恋の相手だとマウントばかりとってくる大鳥が。
 ビクビクと僕の指の動きに反応して、内股になって、つま先をピンと伸ばして、足の指をぎゅっと握って。
 ドスの効いた口の悪いあの低い声で、(口は悪いままだが)半分泣きそうな裏返った情けない声で戸惑いながら喘いでる。

「僕は…………君が誰を抱いても、どうでもいいけど。君を抱くのは、僕がしたいなって思っただけ。こんな面白い姿、誰にもせちゃダメだよ?」
「面白いって、なん、だよっ……くそ」
「可愛いって言われるより……いいかなって」
「ん……」

 目を閉じて、ゆっくり頷く……汗で湿った肌が色っぽい。
 シャワーを浴びた後、香水をつけ直したのだろうか。苦いバニラの香りが立ちのぼる。
 煙草の代わりだと、大鳥の首筋に鼻先を埋めて思う存分にその匂いを楽しむ。
 なんだかたまらない気持ちになってきて、指の動きが早くなる。ちゅぽ、ちゅぽ、といやらしい水音が響く度、大鳥は熱い息を吐く。

「やばい、やばっ…………は、あぁぁ……なんか、追い詰められる、かんじ…………ここに、マジでちんこ入れんの……? やばい、あ、それ、絶対、やばいっ……」
「入れないと、意味ないでしょ……? 何がやばいの? 癖になっちゃう?」
「やめろよっ…………う、でもこれ……ちんこと全然、違くて…………きもちい、きもちいい、けど、こわい…………あ、かがみ、ヤバい…………きもちい、あ、それ、すっげぇきもちいい……」

 本人が自覚してやってるのかわからないが、自分で膝の裏を持って太ももを抱え、最初よりずっと弄りやすいようにお尻を高くあげてくれている。
 この子が人を気遣うとは思えないから、きっと自分が気持ち良くなりたくてやってるのだろう。
 いつも凛々しい顔の口は半開きで、涙に潤んだ目もとろんと半目で、全体的に力がない。刺激を与えれば、あっ、と目を閉じて、赤い舌が唇から覗く。

「加賀見、なぁ、ちんこ……ちんこ、触って」
「まだ」

 拒否をすると、気の強い眉毛がへなへなと下がった。

「なんでだよぉ、くそがぁ……っ。すっげぇむずむずする……加賀見ぃ……」
「しょうがない子だな……」

 出雲の小さい皮の余った可愛い可愛い性器と違い、上反りでバキバキと脈打つなかなか凶悪そうな男性器だ。
 正直、あんまりいじる気がしない…………しかしよく見ると、何も触ってないのに尋常ではない量の我慢汁を垂れ流して、糸を引いて自分の肌を汚しまくっている。それにはまぁまぁそそられて、ちゅう、と苦味の強い我慢汁を舐めて吸ってやった。

「あ、あ、吸うなッ」
「要求が、多すぎる……」
「だって…………あ、やっばい、とけそ…………ケツん中、ほじられながら舐められんのやばい、あぁぁ、ちんこもまんこも熱ぅ……。まんこだって…………キモッ……でも、まんこになるって今ならめちゃくちゃわかる、やばい、加賀見、やばいこれぇ…………どうしよ、やばい、ケツん中まんこになる……意味わかんねぇ、ウケる…………ああぁぁ、くそ、きもちいぃ」

 ふらふらとした安定しない話し方に不安を覚えて、ペチッ軽く頬を叩いてみるが、とろんとした顔で僕に視線をやるだけだった。大丈夫か、この子。
 実は非常に感じやすいのでは。
 あれだけあちこちでセックスしてるならまぁ、性欲旺盛、気持ちいいことは大好きなのだろうけど。
 中は本当に熱く、かなり柔らかくなってきている。試しに指を三本入れると、さすがにキツそうに顔を歪めた。

「やばいやばいって、うるさいな……しかもうるさい癖に、やらしいな。もう少し、情緒のある喘ぎ方……してくれない? そんなだと慣らすのやめて、今すぐぶち込むよ?」
「うっ……あっ、だめ、まだ…………ちょっとまって、くるし……いや、つかあのデカチン入れんのかよぉ? むり、ぜってぇむり…………やばくね。だって、こんなっ……」

 中に入ってくるのを想像したのか、目をハッと見開いて、中がグンと蠢く。

「あ、中締まった」
「言うなっつーの!!」

 抱えている足で肩を蹴ろうとしてくるが、エレベーターにいた時と違って全然勢いがなく(あれだってもちろん本気の蹴りではないが)、片手で余裕で止められた。 
 受け止めたふくらはぎに口付けてやり、足を開かせながら太ももを撫でる。
 ビクッと体を跳ねながらもちょっと不安そうな愛らしい顔を向けてくる大鳥の中を、優しく優しく、よーく撫でてあげた。

「うんうん、怖いね、よしよし」
「あっ……やめろよ、そういう、の…………あっ、あっ……」 

 本人は口が悪いが、ぷっくりと可愛いそこは触れてやると、もっと撫でてと指の腹に粘膜が吸い付くようだ。

「はいはい、よしよし」
「う、くそ…………ン」

 真っ赤な顔して怒っていたが、撫でているうちにまた力が抜けていくのが、あまりにもわかりやすい。

「は、は、あっ……ごめん、うるせぇと、萎える、よな……」

 そうして脱力しきった大鳥は、小さく、恥ずかしそうに、顔を逸らしながら本音を話してくれた。

「だってなんか……喋ってねぇと、おかしくなりそ…………頭ふわふわする……ごめん」



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