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第19話 城下町へ
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翌日。
「じゃあ、フィルは僕の肩の上に乗っててね」
『……お、おい!』
カイルはフィルを持ち上げ、自身の右肩へと乗せた。
俺も前はああやって、肩に乗せてもらってたな。
『良かったですね、フィルさん!』
『いや、我は飛べるから、このような気遣いは不要なのだが……』
『素直に甘えとけって。多分カイルがそうしたいんだよ』
『む、そうか? それなら仕方あるまい』
「よし、それじゃあ行こう!」
俺達は城下町に帰還すべく、マイラル村から出て北に向かって歩き出した。
『――そうだ! そういえばフィルさんは何歳なんですか?』
『ん? 我は生まれてから六年経つが』
『六歳……じゃあお兄ちゃんですね。残念です……』
『何なのだ、いきなり――おい、ちょっと待て。前を見てみろ』
『ん?』
フィルに言われた通り前を見てみると、何かがこちらに近づいてきているのが見て取れた。
そのまま目を凝らして見ていると、明らかになったのは計5匹の野犬。
あれは確か――森で見たやつだ!
『我に任せておけ』
「あっ、フィル!」
フィルはカイルの肩から飛び出ち、その野犬の群れに向かっていった。
『よし、俺たちも行くぞ、エリノア!』
『はいっ!』
「ちょっ、みんなどうしたの!?」
俺とエリノアもフィルの後を追いかける。
カイルはまだ野犬に気付いていないようで、俺達の行動に驚きの声を上げながら走って付いてきていた。
『これでもくらうがいいっ!』
フィルの元に辿り着いたと同時、緑色の三日月状の物体が野犬に向かって飛んでいく。
それが直撃した先頭の犬は綺麗に真っ二つに。
す、凄いな……。って、感心している場合じゃない!
『エリノア! 奥の二匹を頼むっ! 手前の二匹は任せろ!』
『わかりましたっ!』
俺は地面を蹴り、こちらに向かって飛び出してきた犬の頭に向かって鉤爪を振り下ろす。
「ギャンッ!」
すると、その犬は声を上げ、もの凄い速さで逃げていった。
直後、入れ替わるようにもう一匹の犬が口を大きく開けて飛び掛かってくる。
それを俺は鉤爪で防ぎ、そのまま大きく息を吸ってから吐いた。
それにより放たれた炎が直撃し、犬は瞬く間に炎上。
その場で転がり回って、やがて火が消えたかと思うと、そのままピクリとも動かなくなった。
『ふう、片付いたな』
『はい、楽勝ですっ!』
声に反応して振り返ると、エリノアとフィルが近づいてきていた。
残りの二匹の犬を確認してみるものの、その姿はどこにもない。どうやらエリノアが追い払ったようだ。
「はぁはぁ……。こんなところにブラッドドッグが居たなんて。みんなお疲れ様!」
『ブラッドドッグ?』
『アイズさんは知らないんですね。ブラッドドッグは血を好む魔物なんですよ』
『ああ、特に人間の血液をな。カイルに被害が出なくて何よりだ』
ただの犬じゃなかったのか。そういうことなら倒せて本当によかった。
『それにしてもアイズ、エリノア。中々やるじゃないか、見直したぞ』
『えへへ。ありがとうございます! フィルさんも流石でした!』
『あの魔法、やっぱり凄いな! フィルが仲間になってくれて良かったよ』
『ふ、ふん。あの程度の魔物ごとき造作もない』
うん、エリノアとフィルとなら本当にトーナメントで優勝出来そうな気がしてきた!
「じゃ、行こうかみんな!」
俺達は引き続き、城下町に向かって歩みを進めた。
☆
それからというもの。
リリから頼まれていた素材は大方集め終わっていたこと、もう新たに魔物をテイムする必要がなかったことから、先に進むことだけに集中することが出来た俺達は、行きの半分の日数である僅か二週間で城下町に戻ってこられた。
『わぁ……! お家がこんなに沢山!』
『再びこの地に戻ってくる日が来ようとはな』
この街並みも久々だな。
といっても、俺の場合は旅に出ていた時間のほうが長いけど。
それぞれが異なる感想を抱きながら、すっかりと暗くなった夜の街を歩くこと数十分、俺達はカイルの家の前に辿り着いた。
カイルはひと呼吸おいてから玄関のドアをゆっくりと開け、大きな声で「ただいま」と口にすると、すぐに中からドタドタと走る音が聞こえてくる。
「お帰りなさい、カイル、アイズ君! 無事に帰ってきてくれて本当に良かった……!」
「お帰り! 無事で何よりだ。――おっ、その後ろに居る狼とワシはもしかしてあれか!? 上手くいったのか?」
『ただいま!』
俺のことも心配してくれるなんて。
カイルの優しさは両親譲りなのかもな。
「うん! このメスの狼がエリノアで、オスのワシがフィルだよ!」
『初めまして! 私はエリノアです!』
『フィルだ』
「うう……良かったな、カイル! アイズ君に加えて、新しく二匹も……」
「あらあら、お父さんったら。エリノアちゃんとフィル君ね! 二匹とも本当にありがとう! これからもカイルのことよろしくね」
カイルのお父さんは涙を流しながら、お母さんは満面の笑顔を浮かべながら、エリノアとフィルに向かってそう口にした。
『は、はい! お世話になってるのは私のほうですけど……』
『感謝されることなど何もしてないのだが……』
二匹ともカイルの両親の態度に困惑してるみたいだ。
まあ、そりゃそうだよな。
その後、話に花を咲かせること数時間、俺達は肩を寄せ合って眠りに就いた。
「じゃあ、フィルは僕の肩の上に乗っててね」
『……お、おい!』
カイルはフィルを持ち上げ、自身の右肩へと乗せた。
俺も前はああやって、肩に乗せてもらってたな。
『良かったですね、フィルさん!』
『いや、我は飛べるから、このような気遣いは不要なのだが……』
『素直に甘えとけって。多分カイルがそうしたいんだよ』
『む、そうか? それなら仕方あるまい』
「よし、それじゃあ行こう!」
俺達は城下町に帰還すべく、マイラル村から出て北に向かって歩き出した。
『――そうだ! そういえばフィルさんは何歳なんですか?』
『ん? 我は生まれてから六年経つが』
『六歳……じゃあお兄ちゃんですね。残念です……』
『何なのだ、いきなり――おい、ちょっと待て。前を見てみろ』
『ん?』
フィルに言われた通り前を見てみると、何かがこちらに近づいてきているのが見て取れた。
そのまま目を凝らして見ていると、明らかになったのは計5匹の野犬。
あれは確か――森で見たやつだ!
『我に任せておけ』
「あっ、フィル!」
フィルはカイルの肩から飛び出ち、その野犬の群れに向かっていった。
『よし、俺たちも行くぞ、エリノア!』
『はいっ!』
「ちょっ、みんなどうしたの!?」
俺とエリノアもフィルの後を追いかける。
カイルはまだ野犬に気付いていないようで、俺達の行動に驚きの声を上げながら走って付いてきていた。
『これでもくらうがいいっ!』
フィルの元に辿り着いたと同時、緑色の三日月状の物体が野犬に向かって飛んでいく。
それが直撃した先頭の犬は綺麗に真っ二つに。
す、凄いな……。って、感心している場合じゃない!
『エリノア! 奥の二匹を頼むっ! 手前の二匹は任せろ!』
『わかりましたっ!』
俺は地面を蹴り、こちらに向かって飛び出してきた犬の頭に向かって鉤爪を振り下ろす。
「ギャンッ!」
すると、その犬は声を上げ、もの凄い速さで逃げていった。
直後、入れ替わるようにもう一匹の犬が口を大きく開けて飛び掛かってくる。
それを俺は鉤爪で防ぎ、そのまま大きく息を吸ってから吐いた。
それにより放たれた炎が直撃し、犬は瞬く間に炎上。
その場で転がり回って、やがて火が消えたかと思うと、そのままピクリとも動かなくなった。
『ふう、片付いたな』
『はい、楽勝ですっ!』
声に反応して振り返ると、エリノアとフィルが近づいてきていた。
残りの二匹の犬を確認してみるものの、その姿はどこにもない。どうやらエリノアが追い払ったようだ。
「はぁはぁ……。こんなところにブラッドドッグが居たなんて。みんなお疲れ様!」
『ブラッドドッグ?』
『アイズさんは知らないんですね。ブラッドドッグは血を好む魔物なんですよ』
『ああ、特に人間の血液をな。カイルに被害が出なくて何よりだ』
ただの犬じゃなかったのか。そういうことなら倒せて本当によかった。
『それにしてもアイズ、エリノア。中々やるじゃないか、見直したぞ』
『えへへ。ありがとうございます! フィルさんも流石でした!』
『あの魔法、やっぱり凄いな! フィルが仲間になってくれて良かったよ』
『ふ、ふん。あの程度の魔物ごとき造作もない』
うん、エリノアとフィルとなら本当にトーナメントで優勝出来そうな気がしてきた!
「じゃ、行こうかみんな!」
俺達は引き続き、城下町に向かって歩みを進めた。
☆
それからというもの。
リリから頼まれていた素材は大方集め終わっていたこと、もう新たに魔物をテイムする必要がなかったことから、先に進むことだけに集中することが出来た俺達は、行きの半分の日数である僅か二週間で城下町に戻ってこられた。
『わぁ……! お家がこんなに沢山!』
『再びこの地に戻ってくる日が来ようとはな』
この街並みも久々だな。
といっても、俺の場合は旅に出ていた時間のほうが長いけど。
それぞれが異なる感想を抱きながら、すっかりと暗くなった夜の街を歩くこと数十分、俺達はカイルの家の前に辿り着いた。
カイルはひと呼吸おいてから玄関のドアをゆっくりと開け、大きな声で「ただいま」と口にすると、すぐに中からドタドタと走る音が聞こえてくる。
「お帰りなさい、カイル、アイズ君! 無事に帰ってきてくれて本当に良かった……!」
「お帰り! 無事で何よりだ。――おっ、その後ろに居る狼とワシはもしかしてあれか!? 上手くいったのか?」
『ただいま!』
俺のことも心配してくれるなんて。
カイルの優しさは両親譲りなのかもな。
「うん! このメスの狼がエリノアで、オスのワシがフィルだよ!」
『初めまして! 私はエリノアです!』
『フィルだ』
「うう……良かったな、カイル! アイズ君に加えて、新しく二匹も……」
「あらあら、お父さんったら。エリノアちゃんとフィル君ね! 二匹とも本当にありがとう! これからもカイルのことよろしくね」
カイルのお父さんは涙を流しながら、お母さんは満面の笑顔を浮かべながら、エリノアとフィルに向かってそう口にした。
『は、はい! お世話になってるのは私のほうですけど……』
『感謝されることなど何もしてないのだが……』
二匹ともカイルの両親の態度に困惑してるみたいだ。
まあ、そりゃそうだよな。
その後、話に花を咲かせること数時間、俺達は肩を寄せ合って眠りに就いた。
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