4 / 9
第4話 慣れないアプローチ
しおりを挟む
翌日。
雫と拓也は例の女性店員がいる店とは別の居酒屋で飲んでいた。
「――えっ? あれってマジなほうのやつ?」
「マジじゃないほうってなんだよ……」
「いや、ヤりたくてヤりたくてたまらない娘を見つけたのかと……」
雫は昨日、店を出てから一目惚れした旨を拓也へと伝えていた。
こうして相談に乗ってもらうためだ。
「で、どうすればいいと思う?」
「どうすればってそんなもん、いつも通り声を掛ければいいだけじゃね?」
「いや、クラブじゃないんだぞ……」
今回はフィールドも相手の属性も、普段のナンパとは訳が違う。
だからこそ困っているのだ。
「うーん。素直に『一目惚れしました。良かったら連絡ください』つって、LIMEのID書いた紙渡せば?」
「やっぱりそれしかないよなぁ……」
雫はテーブルに顔を突っ伏してそう言った。
「よし。それじゃあ早速その店行こうぜ」
「えっ!? 今から!?」
「おう、善は急げ。思い立ったが吉日って言うだろ。それに俺もあの雫が惚れた女の子見てみたいし」
「いや、でもさあ……」
雫は途端にもじもじとしだした。
「どうしたんだよ?」
「恥ずかしいっていうか……」
拓也は絶句した。
クラブでガンガンとナンパしては、その日の内に関係を結んできた超プレイボーイが、たかが連絡先を渡す程度のことで恥じらっているのだ。
驚くのも無理はない。
「……いや、でも行動しなきゃ何も始まらんだろ。なんせ客と店員なんだから」
「そう、そうだよな! よし、行こう!」
「お、おう」
二人は件の居酒屋へとハシゴした。
「いらっしゃいま――あっ、昨日は本当に申し訳ございませんでした! また来てもらえるなんてっ!」
雫と拓也をタヌキ顔の女性店員が出迎える。
その瞬間、雫は再び心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。
「ど、どうもっ!」
「本当に嬉しいです! では、こちらへどうぞ!」
案内されたテーブル席に座った二人は、ひとまず酒と軽いつまみを注文。
その店員が去っていったのを確認してから、拓也は雫にコソコソと話かける。
「それで、どの店員さんだ? 今日は居るのか?」
「え? 今の娘だよ?」
拓也は再び絶句した。
「マジで……?」
「うん、マジ」
確かにかわいらしい娘ではある。
だが、言い方を選ばなければどこにでも居そうな普通の女の子だ。
「な、何か意外だな。もっとこう、芸能人みたいなオーラのある娘だと思ってたわ……」
「うーん。見た目ももちろんそうだけど、一番は何か雰囲気? みたいなのがズキューンて来てさ」
「そっか、それはよかったな……」
二人で話していると、テーブルに一人の女性が近づいてくる。
「お待たせいたしましたっ! お先に生ビールとお通しをお持ちしましたっ!」
声をかけられた瞬間、雫がビクっと身体を震わせた。
「ど、どうも……。あり、ありがとうございます!」
そしてぎこちなくお礼の言葉を述べる。
その光景を拓也は苦笑いを浮かべながら見つめていた。
「はいっ! それではごゆっくりどうぞ!」
タヌキ顔の女性が席から離れていった直後、雫から大きな溜め息がこぼれる。
「まあ、とりあえず乾杯しようや」
「……おう」
二人はジョッキを打ち付けてから口に運び、豪快に喉を鳴らす。
それからぷはぁーっ! と言葉を漏らした後、拓也は雫の胸の辺りを指差しながら口を開いた。
「よし。じゃあ次に料理を持ってきた時、それ渡せよ。俺は席を外すからさ」
「わ、わかった!」
雫の胸ポケットには、LIMEのIDを書いた紙が入っている。
前の店で書いたものだ。
本当は店を出る時に渡すのが一番スマートではあるが、タヌキ顔の女性が会計してくれるとは限らない。
その理由から、拓也は次に料理を運んできた時に渡せと言っているのだ。
それから一昨日の拓也のその後や仕事の愚痴など話していると、店員が近づいてきた。
タヌキ顔の女性店員だ。
それを確認した拓也は席を立ち、雫の肩を叩いてからお手洗いへと向かった。
「お待たせいたしましたっ! 刺身の盛り合わせです!」
「は、はいっ! どうも……」
テーブルに大きな皿がごとりと置かれる。
「では、ごゆっくりどうぞ!」
「……あのっ!」
去っていこうとする女性を雫が呼び止めた。
ただでさえ、バクバクと音を立てている心臓の鼓動がさらに早くなる。
「はい! どうされましたか?」
「あの、その、えっと……」
笑顔で問いかけてくる女性を見て、雫は言葉を詰まらせる。
緊張で胸が張り裂けそうだ。
しかし、伝えないことには何も起きない。
(よしっ!)
「――あのっ!!」
「はいっ!」
雫と拓也は例の女性店員がいる店とは別の居酒屋で飲んでいた。
「――えっ? あれってマジなほうのやつ?」
「マジじゃないほうってなんだよ……」
「いや、ヤりたくてヤりたくてたまらない娘を見つけたのかと……」
雫は昨日、店を出てから一目惚れした旨を拓也へと伝えていた。
こうして相談に乗ってもらうためだ。
「で、どうすればいいと思う?」
「どうすればってそんなもん、いつも通り声を掛ければいいだけじゃね?」
「いや、クラブじゃないんだぞ……」
今回はフィールドも相手の属性も、普段のナンパとは訳が違う。
だからこそ困っているのだ。
「うーん。素直に『一目惚れしました。良かったら連絡ください』つって、LIMEのID書いた紙渡せば?」
「やっぱりそれしかないよなぁ……」
雫はテーブルに顔を突っ伏してそう言った。
「よし。それじゃあ早速その店行こうぜ」
「えっ!? 今から!?」
「おう、善は急げ。思い立ったが吉日って言うだろ。それに俺もあの雫が惚れた女の子見てみたいし」
「いや、でもさあ……」
雫は途端にもじもじとしだした。
「どうしたんだよ?」
「恥ずかしいっていうか……」
拓也は絶句した。
クラブでガンガンとナンパしては、その日の内に関係を結んできた超プレイボーイが、たかが連絡先を渡す程度のことで恥じらっているのだ。
驚くのも無理はない。
「……いや、でも行動しなきゃ何も始まらんだろ。なんせ客と店員なんだから」
「そう、そうだよな! よし、行こう!」
「お、おう」
二人は件の居酒屋へとハシゴした。
「いらっしゃいま――あっ、昨日は本当に申し訳ございませんでした! また来てもらえるなんてっ!」
雫と拓也をタヌキ顔の女性店員が出迎える。
その瞬間、雫は再び心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。
「ど、どうもっ!」
「本当に嬉しいです! では、こちらへどうぞ!」
案内されたテーブル席に座った二人は、ひとまず酒と軽いつまみを注文。
その店員が去っていったのを確認してから、拓也は雫にコソコソと話かける。
「それで、どの店員さんだ? 今日は居るのか?」
「え? 今の娘だよ?」
拓也は再び絶句した。
「マジで……?」
「うん、マジ」
確かにかわいらしい娘ではある。
だが、言い方を選ばなければどこにでも居そうな普通の女の子だ。
「な、何か意外だな。もっとこう、芸能人みたいなオーラのある娘だと思ってたわ……」
「うーん。見た目ももちろんそうだけど、一番は何か雰囲気? みたいなのがズキューンて来てさ」
「そっか、それはよかったな……」
二人で話していると、テーブルに一人の女性が近づいてくる。
「お待たせいたしましたっ! お先に生ビールとお通しをお持ちしましたっ!」
声をかけられた瞬間、雫がビクっと身体を震わせた。
「ど、どうも……。あり、ありがとうございます!」
そしてぎこちなくお礼の言葉を述べる。
その光景を拓也は苦笑いを浮かべながら見つめていた。
「はいっ! それではごゆっくりどうぞ!」
タヌキ顔の女性が席から離れていった直後、雫から大きな溜め息がこぼれる。
「まあ、とりあえず乾杯しようや」
「……おう」
二人はジョッキを打ち付けてから口に運び、豪快に喉を鳴らす。
それからぷはぁーっ! と言葉を漏らした後、拓也は雫の胸の辺りを指差しながら口を開いた。
「よし。じゃあ次に料理を持ってきた時、それ渡せよ。俺は席を外すからさ」
「わ、わかった!」
雫の胸ポケットには、LIMEのIDを書いた紙が入っている。
前の店で書いたものだ。
本当は店を出る時に渡すのが一番スマートではあるが、タヌキ顔の女性が会計してくれるとは限らない。
その理由から、拓也は次に料理を運んできた時に渡せと言っているのだ。
それから一昨日の拓也のその後や仕事の愚痴など話していると、店員が近づいてきた。
タヌキ顔の女性店員だ。
それを確認した拓也は席を立ち、雫の肩を叩いてからお手洗いへと向かった。
「お待たせいたしましたっ! 刺身の盛り合わせです!」
「は、はいっ! どうも……」
テーブルに大きな皿がごとりと置かれる。
「では、ごゆっくりどうぞ!」
「……あのっ!」
去っていこうとする女性を雫が呼び止めた。
ただでさえ、バクバクと音を立てている心臓の鼓動がさらに早くなる。
「はい! どうされましたか?」
「あの、その、えっと……」
笑顔で問いかけてくる女性を見て、雫は言葉を詰まらせる。
緊張で胸が張り裂けそうだ。
しかし、伝えないことには何も起きない。
(よしっ!)
「――あのっ!!」
「はいっ!」
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日
プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。
春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる