【完結】猫耳難民少女は王妃選抜試験で無双する~狙いは玉の輿ではなく、皆の明るい未来~

白水廉

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面談(後編)

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「あっ! それっ!!」

 突然の大声に、ゼイナス、そして彼の後ろに立つランラも身体をビクッと跳ねさせた。
 ほどなく、タズハはゼイナスの袖に向けて伸ばしていた指をばっと引っ込めて、頭を下げる。

「ご、ごめんなさい! いきなり大きな声を出して……」
「構わん。それで、どうした?」
「えっと、そのブレスレット、もしかしてセシリアさんからもらったものじゃないですか?」

 ゼイナスは袖を捲ってブレスレットを見ると、ふぅと小さく息を吐いた。

「セシリアから聞いたのか」

 タズハは頬を緩めた。
 やはりゼイナスはセシリアのことを忘れてなどいなかった。

「はいっ!」
「そうか……」

 ゼイナスはカップに目を落とした。

 そこでタズハはふと思った。
 もしかすると、王様はセシリアさんと結婚するためにこの王妃選抜試験を開いたのかな、と。

「タズハ。誤解を招かないよう、これだけは言っておく」

 それまでとは一転、ゼイナスは鋭い視線を向けてくる。

「私は国をより良くするために、優秀な女性を妃に迎えたいと思っている。それ故、これまでのしきたりに背き、今回、王妃に相応しい女性を民の中から広く選び出すことにしたのだ。そこに個人的な感情はまったくない」

 そしてタズハの考えはすぐに否定された。

「そ、そうですか!」
「ああ」

 若干、空気が重くなり、それからは沈黙。
 じっとしているのが辛くて、カップを口に運んでは置いてを繰り返すことしばし、ゼイナスが口を開いた。

「それで、タズハ。君はここまで残った者の中で、誰が王妃に相応しいと思う?」

(きた!)

 屋敷で共に暮らす少女たちがおべっかを使ってきていたのは、ここで名前を挙げてもらうためだろう。
 そんな彼女らには悪いが、タズハが挙げるのは少女たちの名前ではない。
 大切なお友達の名前だ。

「わたしはセシリアさんが相応しいと思います」
「……理由は?」
「セシリアさんはとてもしっかりしていて、それに優しいです! そして心も強くって。王妃としての役目を果たせるのは、セシリアさん以外にいないと思います!」
「……そうか。参考にしよう。さて、ここからは君のことについて聞かせてもらおうか」
「あ、はい!」


 ☆


 それから三十分ほど会話を続けた後、タズハは城を後にした。
 そうして屋敷に向かっている道中。

「あの、ノノイさん」
「はい」
「ノノイさんはわたしのお世話をしたいって立候補してくれたって、さっき陛下が言ってましたけど……」
「ええ、その通りです」
「ど、どうしてわたしなんかを?」
「妹の大切なお友達ですから」
「妹? えっ……えっ!? ってことはもしかして!?」
「はい。ランラの姉です。妹と仲良くしていただいて、ありがとうございます」

 ノノイは小さく頭を下げた。
 それを見て、タズハははえーとする。
 まさかランラさんのお姉ちゃんだったとは。

「ああ、いえ! こ、こちらこそです!」

 タズハもぺこりと礼を返す。
 するとノノイは「ふふっ」と笑った。

「機会は少ないかもしれませんが、またランラと会う時があったらぜひ仲良くしてあげてください。それとわたしも。短い間ですが、これからもよろしくお願いしますね」
「もちろんです! よろしくお願いします!」





「――あら、お帰りなさい」
「あっ、今お戻りに?」

 屋敷に戻ると、タズハは五人の少女たちに出迎えられた。
 偶然会った風を装っているが、面談の内容を聞き出すためにずっと待っていたことはすぐにわかった。
 そうでなければ、エントランスホールにいるわけがない。

「陛下との面談はいかがでした?」

 そして案の定、何を聞かれたか教えろ、と圧をかけてきた。
 それをタズハは「何も言うなと言われてるので」で切り抜けると、そのままセシリアの部屋に。

「――わっ、よかったですね!」
「はいっ!」

 お願いしたいことは既にゼイナスが動いてくれていたことを話すと、セシリアは自分のことのように喜んでくれた。
 それが嬉しくて、タズハはニコニコ笑顔に。

「あとねあとね、陛下、セシリアさんのこと覚えてましたよ!」
「ほ、ほんとですか!?」
「うん! それにね、ブレ――」
「タズハ様」

 ノノイに遮られ、タズハははっとする。
 そうだ、ブレスレットのことは口止めされているんだった。

「と、とにかく! 陛下はちゃんと覚えてました! よかったですね!」
「はいっ!」

 今度はタズハが自分のことのように喜んだ。


 ☆


 三日後。
 いってらっしゃいと、セシリアを送り出してから数時間。
 部屋にやってきたセシリアは顔を伏せていた。

 タズハはその様子を不審に思いながら「お帰りなさい」と声をかける。
 それでようやく彼女は顔を上げた。
 その瞳は赤く充血しており、頬には水が通ったような跡があった。

「……何があったんですか?」
「……ゼイナス様に、『君を選ぶことはない』と」
「えっ?」

 タズハは言葉を失った。
 ゼイナスは今でもセシリアが贈ったブレスレットをつけていたので、好意を持っていると信じて疑わなかった。
 だから、まさかそんなことを言うなんて想像もしていなかった。

 セシリアはドレスの袖で目を拭うと、タズハを見る。

「ですから、タズハさん、お願いします。どうか王妃になって、ゼイナス様のことを隣で支えてあげてください」
「えっ、わ、わたしが?」
「はい。タズハさんならきっと、ゼイナス様が求めるいい妃になれますから」

 セシリアがぎこちなく笑う。
 その姿はあまりにも痛々しかった。

 タズハは必死に頭を働かせる。
 しかし、気の利いた言葉は何も思い浮かばなくて。

「……うん」

 ただ一言、そう返すことしかできなかった。
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