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本編
10 サキュバスリリスにできること ①
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リリスは落ち込んでいた。ヴォルフィにサキュバレした上、身体の関係まで持ってしまった。緊急措置であるし、非常に丁寧かつ優しく抱かれ、しかも相手はひそかに想いを寄せていたヴォルフィなのだから、幸運だと判断する人もいるかもしれない。だが、リリスは心が通じ合ってからの初体験に憧れていたのだ。選択肢が他になかったとはいえ、なかなか気持ちは割り切れない。そういうことはある。
ヴォルフィから「僕があなたの精気提供者になります」と言われても、気まずさもあり、リリスはなかなか店へ足を運ぶことができなかった。初めてなのにずいぶん乱れて、媚びた声を上げ、身体は楽しんでしまったことが、恥ずかしくてたまらない。たぶん、痛いまま終わった方が、仕方なかったと行為を正当化することができた。下手に快楽を知ってしまったから、余計ヴォルフィのことを欲しくなっている。
それから二週間、リリスはひたすら自宅と職場の往復に徹した。根性でなんとかしようとしたのだが、完全にふらふらで、まるでやり過ごせていない。朦朧とする頭では他の手を思いつかず、リリスは仕方なくヴォルフィの店を訪ねた。ヴォルフィはリリスの姿を認めるなり、即、奥の部屋へ案内し、厳命した。
「夜中に一人で帰るのは絶対にやめてください。最近、通り魔事件が多発していて危険なんです。目覚めたらリリスさんがいなくなっていて、とても心配でした」
「ごめんなさい……」
リリスがしょんぼりした表情を浮かべたので、ヴォルフィは気遣うように優しい声音で続ける。
「怒っているのではないんですよ。リリスさんが安全で健康な生活を送れるように、移動は明るい時間にしてほしいですし、せめて週一回は来てもらいたいんです」
「でも、ヴォルフィさんに迷惑では……」
「迷惑なことなんか何もないですし、リリスさんが来ない方が心配で困ります」
「ヴォルフィさんがよくても、他に気にする人がいたり……」
「僕に恋人はいないですし、もちろん妻もいません。いたらさすがにしません」
リリスはどさくさに紛れて気になっていたことを訊ね、誰かを裏切り悲しませるような真似をヴォルフィにさせていないことにはほっとした。
リリスは覚悟を決め、再び週に一度、店に通うようになった。ヴォルフィの厚意に甘えることにしたのだ。これ以上よい方法をリリスは思いつかなかったから。
どれくらいのペースなら大丈夫なのだろうとリリスは不安に思う。そもそもサキュバスが人間の男をとっかえひっかえするのは、精気を吸われる負担が大きいからだ。恩人を腎虚で殺す訳にはいかない。普通の人間が多い場所での暮らしがまだ浅い上、元々男性との関わりがほとんどなかったので、基準がわからない。ヴォルフィはやや線が細いので、余計身体が心配になってしまうのだ。いつも休日を使わせてしまう訳でもあり、広義で自分は彼の恋路も邪魔しているのではないかとリリスは思う。リリスと一緒に過ごす時間が増えることは、ヴォルフィの出会いの機会を奪うことでもあるから。
ヴォルフィから「僕があなたの精気提供者になります」と言われても、気まずさもあり、リリスはなかなか店へ足を運ぶことができなかった。初めてなのにずいぶん乱れて、媚びた声を上げ、身体は楽しんでしまったことが、恥ずかしくてたまらない。たぶん、痛いまま終わった方が、仕方なかったと行為を正当化することができた。下手に快楽を知ってしまったから、余計ヴォルフィのことを欲しくなっている。
それから二週間、リリスはひたすら自宅と職場の往復に徹した。根性でなんとかしようとしたのだが、完全にふらふらで、まるでやり過ごせていない。朦朧とする頭では他の手を思いつかず、リリスは仕方なくヴォルフィの店を訪ねた。ヴォルフィはリリスの姿を認めるなり、即、奥の部屋へ案内し、厳命した。
「夜中に一人で帰るのは絶対にやめてください。最近、通り魔事件が多発していて危険なんです。目覚めたらリリスさんがいなくなっていて、とても心配でした」
「ごめんなさい……」
リリスがしょんぼりした表情を浮かべたので、ヴォルフィは気遣うように優しい声音で続ける。
「怒っているのではないんですよ。リリスさんが安全で健康な生活を送れるように、移動は明るい時間にしてほしいですし、せめて週一回は来てもらいたいんです」
「でも、ヴォルフィさんに迷惑では……」
「迷惑なことなんか何もないですし、リリスさんが来ない方が心配で困ります」
「ヴォルフィさんがよくても、他に気にする人がいたり……」
「僕に恋人はいないですし、もちろん妻もいません。いたらさすがにしません」
リリスはどさくさに紛れて気になっていたことを訊ね、誰かを裏切り悲しませるような真似をヴォルフィにさせていないことにはほっとした。
リリスは覚悟を決め、再び週に一度、店に通うようになった。ヴォルフィの厚意に甘えることにしたのだ。これ以上よい方法をリリスは思いつかなかったから。
どれくらいのペースなら大丈夫なのだろうとリリスは不安に思う。そもそもサキュバスが人間の男をとっかえひっかえするのは、精気を吸われる負担が大きいからだ。恩人を腎虚で殺す訳にはいかない。普通の人間が多い場所での暮らしがまだ浅い上、元々男性との関わりがほとんどなかったので、基準がわからない。ヴォルフィはやや線が細いので、余計身体が心配になってしまうのだ。いつも休日を使わせてしまう訳でもあり、広義で自分は彼の恋路も邪魔しているのではないかとリリスは思う。リリスと一緒に過ごす時間が増えることは、ヴォルフィの出会いの機会を奪うことでもあるから。
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