【R18】サキュバスリリスの相手は一人

テキイチ

文字の大きさ
29 / 51
ヴォルフィ視点

29 薬師ヴォルフィの理想と現実・その2 ①

しおりを挟む
「また怪我ですか?」
「あはは、うっかり藪に突っ込んじまってさあ!」
「僕のことをうっかり者だなんて言えないですよ」

 警邏隊の犬獣人の腕は棘だらけだった。ざっと見てわかる箇所は鑷子ピンセットで抜いたが、小さいものが残っているかもしれない。

「まだ棘が刺さっている気がするところはありますか? フェルディナントさん」
「んー、なんか左手の人差し指がまだチクチクする」

 ヴォルフィは注意深く犬獣人の人差し指を観察する。確かに茶色いものがあった。ヴォルフィは針をランプの火であぶり、犬獣人の指にそっと近づける。

「やだ、怖い」
「棘が小さすぎて、鑷子では抜けそうにないんです」
「熱っ!」
「消毒代わりだから、諦めてください」
「痛っ!」
「思っていたよりも深く刺さっていて…………取れた」

 ヴォルフィは針ですくうように棘を取り出した。棘は細いものの思いの外長かったので、刺さったままでは左手を使うのがつらかったはずだ。ヴォルフィは犬獣人の指に消毒液を流し掛ける。

「沁みる!」
「藪に突っ込んだ時はもっと痛かったはずです。我慢してください」

 手当てが終わり、会計を済ませると、犬獣人はヴォルフィに切り出す。

「ヴォルフィ、店は忙しい?」
「…………みなさんが健康なのは、本当にいいことですよ」
「確かにな」

 犬獣人は胸元から折り畳んだ紙を取り出してヴォルフィに渡した。

「もし余裕があるなら、大量に発注してもいい?」

 ヴォルフィは丁寧に紙を開き、目を通す。薬の注文書だ。

「いっつも発注がギリギリだから、薬師のみなさんから嫌がられちゃってさあ」

 確かに種類が多いので、手間を考えると嫌がられるのもわかる。だが、閑古鳥が鳴いているこの店なら、なんとかこなせなくもない。

「こちらこそ、ぜひお願いします」
「できれば今後も継続して、注文受けてほしいんだけど」
「え!」

 ヴォルフィはもう一度注文書を見直した。工程が単純な作り置きのきく薬も、作るのに手間がかかる割に日持ちはしない薬も、全て納期は「最短」と書かれている。

「今回はかかりきりで作るので大丈夫です。ただ、これからも続けてご注文いただくというお話なら、薬によって納品できるまでの日数が違うので、ご期待に沿えないかもしれません。納品までに何日必要かを表にまとめますから、今後はその表に基づいてご注文ください」
「へえ! それ、俺も助かる! 早く決めろってしつこく言ってるのに、なんだかんだでいっつも後回しにされてさあ! 薬師のみなさんに申し訳なかったんだわ!」

 犬獣人はカラカラと笑う。少し待ってもらい、納期の表をまとめ、犬獣人に渡しながらヴォルフィは言う。

「今回のご注文分は三日後にお渡しします」
「早い!」
「……他に仕事がないですからね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

処理中です...