6 / 201
本編・取り違えと運命の人
005 選択 ②
しおりを挟む
「ジュリエッタ……」
ささやかれた次の瞬間、軽くついばむようなキスを落とされる。び、び、びっくりした!
「ジュリエッタ、目、まんまる……」
リカルドさんがふにゃりと笑う。
「だ、だ、だって! いきなり、するから……!」
「だって、したかったから……」
そう言うと、リカルドさんはゆっくりと私を抱きしめた。うわ……!
「ねえ、ジュリエッタ。一つお願いがあるんだけど」
しばらく私を抱きしめたままじっとしていたリカルドさんが、小さな声で言う。
「な、なんですか?」
「……名前、呼んでほしい…………」
身体越しにリカルドさんの鼓動が伝わってくる。かなり早い。どきどきしてるの、私だけじゃないんだ。思わずリカルドさんの顔を見上げる。
「呼んでないの、バレてました……?」
「うん。いつ、呼んでくれるかなって、ちょっと、期待してた……」
あ……。あんなに笑顔の人に、こんなさびしげな顔をさせてしまった……。これまでの満面の笑みとのギャップに、なんだかひどく胸が痛んだ。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい! その、嫌とかじゃなくて……。私、男の人と付き合ったことなくて、そういうの慣れてないから、なんか……恥ずかしかったんです」
しばしの沈黙ののち、リカルドさんが一言。
「リカルド」
「うぇ?」
「リカルド。言ってみて」
「リカ、ルド」
「続けて」
「リカル、ド。……リカルド」
「へへっ、呼んでもらっちゃった!」
リカルドさんはとっても嬉しそうに笑った。そして、もう一度私を抱きしめる。
「……今日、初めて会ったからさ。まだ無理っていうなら、もちろんそれでもいいんだ」
耳元でささやくように言われて、どきどきする。
「でも、俺は、一目で君のこと、大好きになってしまった。できれば、したい」
「え……っと」
「その、今日、よければ…………もう一度、名前呼んで」
ぎゅっと抱きしめられているから、リカルドさんの顔は見えない。でも、きっと、さっきみたいに、さびしげな顔をしてるんだと思う。声が、身体が、震えてる。
嫌だな。リカルドさんには、ずっと笑顔でいてほしい。あの、おひさまみたいな笑顔で。そんな思いが込み上げてきて、えーい、女は度胸! ともう一度、お風呂場のテンションに戻る。
「……私の相手、もの静かで大人な感じの人がいいかなあ、あまりにも元気なタイプだと、なに話していいかわかんないし、と、思っていました。だから、最初は、なんだかテンション高くて、どうしようかと」
ははは、と力ない笑い声が聞こえる。
「でも、一緒にいるとなんだかいつのまにか時間が過ぎてるし、とても気配りが細やかな人だって気づいたの。『まだ無理っていうなら、それでもいい』とか、逃げ道まで用意してくれたりして。わざわざそんなこと言わずに、始めてしまったっていいはずなのに」
笑い声が止まってしまった。かまわず続ける。
「そんな、おひとよしとなら、きっと大丈夫って思ったの…………リカルド」
この時から、私の中で、彼の名前が呼び捨てに変わったから、きっとターニングポイントだったんだと思う。
「ジュリエッタ……」
かすれた声が聞こえたので、顔を見ようと少し身体を動かすと、リカルドの力が抜けて、解放された。
「拒まれるかなって、思った」
「拒まなかったわ」
リカルドが少し赤くなって呆けてるので、顔を両手で挟み、私からそっとキスをした。した後、恥ずかしくなって、つい下向いちゃったけど。
「……女の子にここまでしてもらって、勇気出ないとか、男がすたるなあ」
ゆっくりと、リカルドから押し倒される。
「お許しを得たので。嫌だったら、言ってね」
この期に及んで、また、逃げ道を作ってくれちゃうリカルドに、くすりと笑ってしまう。
「やっぱり、ジュリエッタ、笑った方がいい」
そう言うとリカルドは軽くキスを落として、夜着のボタンを少しずつ外してくれる。
リカルドの愛撫は、とても繊細だった。大切に大切に、壊れ物を扱うように、丁寧に私の身体にふれてくれて、少しあった破瓜の不安は霧散した。
ささやかれた次の瞬間、軽くついばむようなキスを落とされる。び、び、びっくりした!
「ジュリエッタ、目、まんまる……」
リカルドさんがふにゃりと笑う。
「だ、だ、だって! いきなり、するから……!」
「だって、したかったから……」
そう言うと、リカルドさんはゆっくりと私を抱きしめた。うわ……!
「ねえ、ジュリエッタ。一つお願いがあるんだけど」
しばらく私を抱きしめたままじっとしていたリカルドさんが、小さな声で言う。
「な、なんですか?」
「……名前、呼んでほしい…………」
身体越しにリカルドさんの鼓動が伝わってくる。かなり早い。どきどきしてるの、私だけじゃないんだ。思わずリカルドさんの顔を見上げる。
「呼んでないの、バレてました……?」
「うん。いつ、呼んでくれるかなって、ちょっと、期待してた……」
あ……。あんなに笑顔の人に、こんなさびしげな顔をさせてしまった……。これまでの満面の笑みとのギャップに、なんだかひどく胸が痛んだ。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい! その、嫌とかじゃなくて……。私、男の人と付き合ったことなくて、そういうの慣れてないから、なんか……恥ずかしかったんです」
しばしの沈黙ののち、リカルドさんが一言。
「リカルド」
「うぇ?」
「リカルド。言ってみて」
「リカ、ルド」
「続けて」
「リカル、ド。……リカルド」
「へへっ、呼んでもらっちゃった!」
リカルドさんはとっても嬉しそうに笑った。そして、もう一度私を抱きしめる。
「……今日、初めて会ったからさ。まだ無理っていうなら、もちろんそれでもいいんだ」
耳元でささやくように言われて、どきどきする。
「でも、俺は、一目で君のこと、大好きになってしまった。できれば、したい」
「え……っと」
「その、今日、よければ…………もう一度、名前呼んで」
ぎゅっと抱きしめられているから、リカルドさんの顔は見えない。でも、きっと、さっきみたいに、さびしげな顔をしてるんだと思う。声が、身体が、震えてる。
嫌だな。リカルドさんには、ずっと笑顔でいてほしい。あの、おひさまみたいな笑顔で。そんな思いが込み上げてきて、えーい、女は度胸! ともう一度、お風呂場のテンションに戻る。
「……私の相手、もの静かで大人な感じの人がいいかなあ、あまりにも元気なタイプだと、なに話していいかわかんないし、と、思っていました。だから、最初は、なんだかテンション高くて、どうしようかと」
ははは、と力ない笑い声が聞こえる。
「でも、一緒にいるとなんだかいつのまにか時間が過ぎてるし、とても気配りが細やかな人だって気づいたの。『まだ無理っていうなら、それでもいい』とか、逃げ道まで用意してくれたりして。わざわざそんなこと言わずに、始めてしまったっていいはずなのに」
笑い声が止まってしまった。かまわず続ける。
「そんな、おひとよしとなら、きっと大丈夫って思ったの…………リカルド」
この時から、私の中で、彼の名前が呼び捨てに変わったから、きっとターニングポイントだったんだと思う。
「ジュリエッタ……」
かすれた声が聞こえたので、顔を見ようと少し身体を動かすと、リカルドの力が抜けて、解放された。
「拒まれるかなって、思った」
「拒まなかったわ」
リカルドが少し赤くなって呆けてるので、顔を両手で挟み、私からそっとキスをした。した後、恥ずかしくなって、つい下向いちゃったけど。
「……女の子にここまでしてもらって、勇気出ないとか、男がすたるなあ」
ゆっくりと、リカルドから押し倒される。
「お許しを得たので。嫌だったら、言ってね」
この期に及んで、また、逃げ道を作ってくれちゃうリカルドに、くすりと笑ってしまう。
「やっぱり、ジュリエッタ、笑った方がいい」
そう言うとリカルドは軽くキスを落として、夜着のボタンを少しずつ外してくれる。
リカルドの愛撫は、とても繊細だった。大切に大切に、壊れ物を扱うように、丁寧に私の身体にふれてくれて、少しあった破瓜の不安は霧散した。
0
あなたにおすすめの小説
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる