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本編・取り違えと運命の人
015 リカルドの誕生祝い ①
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リカルドがやってきて一か月半ほど経った。
今日は休日で、お昼から町でデートすることになっているんだけど、朝食後、お互いそのままテーブルでのんびりと過ごしている。どちらともなく、なにをするでもなく、ただなんとなく一緒に。それが思いのほか、自然なんだよね。結婚するまで、私は一人でいる時間がないとだめな人間だと思ってたけど、リカルドは一緒にいて、全然苦じゃない。
元気で明るくて子供みたいに表情豊か。それは確かにそうなんだけど、それだけだったら、こんなに居心地よくないんじゃないかな。最初の印象よりもリカルドはいろんな面を持ってる気がしてる。
そこまで考えて、はたと気づいた。
リカルドは会話上手でさりげなくいろいろ訊ねてくるし、意外と察しもいいから、魔法球を使わなくても私のことを既にある程度知っている。
でも、私は口下手でなにから訊ねていいかよくわからないし、今まで彼氏がいたこともないから察しも悪くて、リカルドのことをあまり知らない。
というか、元気とか明るいとかよく笑うとか、浮かぶのは印象ばかりで、情報として知ってることって、実はあんまりない?
そこで、訊ねてみることにした。
「ねえ」
「ん、なに?」
「リカルドの誕生日って、いつ?」
「ええと」
リカルドが告げた日を聞いて、私は思わず立ち上がってどなってしまった。
「ば、ばか!」
だって、その日から、もう、一か月近くも経ってたから。
「ええと、ごめん。そんなに怒ると思ってなくて……」
私の反応にリカルドは困った顔をしてる。
「うう、どなってごめんなさい……。私がもっと早く訊ねればよかった……」
「ええと、その日も、ごはんすごくおいしかったし、その、気持ちよかったし、俺、大満足だったから、それで充分だったんだ」
それを聞いて、思わず涙がこぼれてしまった。
「ジュ、ジュリエッタ! ご、ごめん!! ほんと、俺が悪かったから、泣かないで!!」
あわてて席を立ったリカルドが、あやすように私を抱きしめる。
「ばかぁ……ばか、ばか、ちゃんとお祝いしたかったのに……!」
「うん、ごめん。俺が悪かった。ほんと、反省してる!」
「リ、リカルド……ごめんー!!」
あまりに悔しくて、情けなくて、リカルドに強く抱きつく。
考えたらわかるじゃない。リカルドなら、誕生日なんて、訊ねられるまで言う訳ないって。人のためになにかするばっかりで、なにかしてもらうなんて考えない人だから。
どうして今まで訊ねようとしなかったんだろう。確かに今まで彼氏がいたことはなかったし、イベントごとにも興味がないとはいえ、大切な伴侶なのに。自分にひどくむかついた。やだ、もう、なんでこんなひどいことしちゃったんだろう。しかも、そんな私を、リカルドはあたりまえのように許してくれたばかりでなく、自分が悪かったとまで言って……。リカルドが優しければ優しいほど、自分の思いやりのなさがつらくなった。
「今日!」
リカルドの顔を見上げ、叫ぶように宣言する。
「きょ、今日?」
「お祝いするから! 一か月遅れた分、盛大に!!」
きっと、私は今、涙と鼻水でひどい顔してる。けど、そんなことはどうでもいい。痛恨の失敗したけど、そのままにするなんて、絶対に絶対に嫌だ!
「そ、そんな、無理しなくていいよ。ほんと、ジュリエッタと毎日過ごせることだけで、俺、充分満足してるし……」
リカルドがそんな風に言うのが、なんだか無性に許せなくて、思わず叫んでしまう。
「私には、リカルドの誕生日をお祝いする権利がある! それを奪わないでよ!!」
もうなにを言ってるんだか、自分でもよくわからない。ひどい目に合わせておいて、更に責めてるし、私。でも、このままお祝いしなかったら、絶対、私はこれからずっと後悔すると思った。
リカルドは苦笑しながら、私の涙を指でぬぐう。
「ええと、俺、ジュリエッタに気をつかわせたくなくて誕生日言わなかったんだけど、かえってひどいことしたんだね。ごめん。その、今日、お祝いしてくれる?」
「……うん!!」
私のために祝われることを決めてくれた、リカルドの優しさが、とても沁みた。
今日は休日で、お昼から町でデートすることになっているんだけど、朝食後、お互いそのままテーブルでのんびりと過ごしている。どちらともなく、なにをするでもなく、ただなんとなく一緒に。それが思いのほか、自然なんだよね。結婚するまで、私は一人でいる時間がないとだめな人間だと思ってたけど、リカルドは一緒にいて、全然苦じゃない。
元気で明るくて子供みたいに表情豊か。それは確かにそうなんだけど、それだけだったら、こんなに居心地よくないんじゃないかな。最初の印象よりもリカルドはいろんな面を持ってる気がしてる。
そこまで考えて、はたと気づいた。
リカルドは会話上手でさりげなくいろいろ訊ねてくるし、意外と察しもいいから、魔法球を使わなくても私のことを既にある程度知っている。
でも、私は口下手でなにから訊ねていいかよくわからないし、今まで彼氏がいたこともないから察しも悪くて、リカルドのことをあまり知らない。
というか、元気とか明るいとかよく笑うとか、浮かぶのは印象ばかりで、情報として知ってることって、実はあんまりない?
そこで、訊ねてみることにした。
「ねえ」
「ん、なに?」
「リカルドの誕生日って、いつ?」
「ええと」
リカルドが告げた日を聞いて、私は思わず立ち上がってどなってしまった。
「ば、ばか!」
だって、その日から、もう、一か月近くも経ってたから。
「ええと、ごめん。そんなに怒ると思ってなくて……」
私の反応にリカルドは困った顔をしてる。
「うう、どなってごめんなさい……。私がもっと早く訊ねればよかった……」
「ええと、その日も、ごはんすごくおいしかったし、その、気持ちよかったし、俺、大満足だったから、それで充分だったんだ」
それを聞いて、思わず涙がこぼれてしまった。
「ジュ、ジュリエッタ! ご、ごめん!! ほんと、俺が悪かったから、泣かないで!!」
あわてて席を立ったリカルドが、あやすように私を抱きしめる。
「ばかぁ……ばか、ばか、ちゃんとお祝いしたかったのに……!」
「うん、ごめん。俺が悪かった。ほんと、反省してる!」
「リ、リカルド……ごめんー!!」
あまりに悔しくて、情けなくて、リカルドに強く抱きつく。
考えたらわかるじゃない。リカルドなら、誕生日なんて、訊ねられるまで言う訳ないって。人のためになにかするばっかりで、なにかしてもらうなんて考えない人だから。
どうして今まで訊ねようとしなかったんだろう。確かに今まで彼氏がいたことはなかったし、イベントごとにも興味がないとはいえ、大切な伴侶なのに。自分にひどくむかついた。やだ、もう、なんでこんなひどいことしちゃったんだろう。しかも、そんな私を、リカルドはあたりまえのように許してくれたばかりでなく、自分が悪かったとまで言って……。リカルドが優しければ優しいほど、自分の思いやりのなさがつらくなった。
「今日!」
リカルドの顔を見上げ、叫ぶように宣言する。
「きょ、今日?」
「お祝いするから! 一か月遅れた分、盛大に!!」
きっと、私は今、涙と鼻水でひどい顔してる。けど、そんなことはどうでもいい。痛恨の失敗したけど、そのままにするなんて、絶対に絶対に嫌だ!
「そ、そんな、無理しなくていいよ。ほんと、ジュリエッタと毎日過ごせることだけで、俺、充分満足してるし……」
リカルドがそんな風に言うのが、なんだか無性に許せなくて、思わず叫んでしまう。
「私には、リカルドの誕生日をお祝いする権利がある! それを奪わないでよ!!」
もうなにを言ってるんだか、自分でもよくわからない。ひどい目に合わせておいて、更に責めてるし、私。でも、このままお祝いしなかったら、絶対、私はこれからずっと後悔すると思った。
リカルドは苦笑しながら、私の涙を指でぬぐう。
「ええと、俺、ジュリエッタに気をつかわせたくなくて誕生日言わなかったんだけど、かえってひどいことしたんだね。ごめん。その、今日、お祝いしてくれる?」
「……うん!!」
私のために祝われることを決めてくれた、リカルドの優しさが、とても沁みた。
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