【R18】取り違えと運命の人

本編・取り違えと運命の人

090 これからもどうぞよろしく ①

　神官様が私達の訴えを認めてくださったので、魔法球を返還し、神殿の記録を修正していただくことになった。手続きに数時間かかるので、その間にお昼でも食べようと、神殿の町出身のルーカさんにベジタリアン御用達のお店へご案内していただくことにした。

「これ、ほんとに、肉類入ってないんですか……？」

　びっくりして訊ねる。おいしいし、バラエティ豊か。

「ええ。ここほどいろんな味の料理出してくれる店、神殿の町でも他にはないです。さすがに毎日ここで食える訳じゃないので、自然と自分で料理するようになりました」

　なるほど、ルーカさんの料理の腕は、必要に迫られて上達したのか。
　野菜不足にならないようにと気をつけてはいたけど、リカルド肉好きだからつい肉に偏っちゃう傾向あったし、これは参考にしなければ、とレシピを推測しながら味わう。
　リカルドとジュリエッタさんは、言葉も発せず、夢中で食べ続けている。意外とこの二人、似た者同士かもしれない。

　全員が食べ終わっても手続き完了の時刻までしばらくある。ルーカさんがお得意様だったおかげで、お店の方も笑顔でごゆっくりと言ってくださったので、もう少しお店に残らせていただくことにした。
　しばらく世間話をした後、あ！　となにか思い出したように、リカルドが袋から鏡を取り出して言う。

「あの、これ、お返しします。その代わり、せっかくお会いできたのもなにかの縁なので、ご連絡先を教えていただけませんか」
「別にこの鏡、ずっと持ってていいのに」
「いえ！　もし、お取り込み中にご連絡してしまったら、大変、大変、申し訳ないので！」

　リカルドがあんまり勢い込んで言うので、ジュリエッタさんはぽかんとしてる。
　ルーカさんが苦笑しながら「お互いにな」とつぶやき、鏡を受け取ってくれた。「ですよね！」とリカルドはうなずいている。リカルド、確かに人付き合い上手な方だと思うけど、なに、その、一体感。

　そうこうしている内に手続き完了の時刻になったので、お店を出て再度神殿に行く。申し出ると、神殿の記録には、私達二組が晴れて正式な運命の人同士として認められたことが記載されていた。

『魔法球の取り違えをもって神託が成就した』

　この、たった一行が足されただけなのに。昨日とは全く違う気分で、駅へと向かうことができた。