102 / 201
後日譚・取り違えたその後の二人
101 にくいあんちくしょう ①
しおりを挟む
天使かと思った。
魔法球に従って辿り着いたのは、古いお屋敷。ゴシックホラーかなんかに出てきそうな、ちょっとおどろおどろしい雰囲気。
古めかしいノッカーを叩くが、全く反応がない。どうしろと。
しばし思案し、裏口がないか探索することにした。
果たして裏口はあったので、遠慮なく侵入する。神託の相手なんだから、まあ、許してくれるだろ。っていうか、許せ。
よく晴れた昼下がり、大木の近くにきらきらと光るものがある。
ある、ではなく、いた。
近づいてみると、小さな女の子。髪が風になびいて光っていたのだ。俺の気配を感じたのか、振り向いた。
抜けるような白い肌に、薄桃色の頬、大きな瞳は繊細なまつ毛でふちどられ、唇は薄く紅が光り、どこかなまめかしい。そして、華奢な体躯にそぐわない、大きくふっくらした胸。
絵に描いたような美少女で、俺は一発で落ちてしまった。
「ジュリ、エッタ……?」
これが、俺の相手ですか?! 神様! ありがとう! はやる想いを抑えきれないからか、声がかすれる。
「……そうだけど。なんか用? あんたは誰?」
あれ? なんか、雰囲気違くない?
「君の神託の相手、ルーカ」
「ふーん……。ルーカ、あの巣、取ってくれない? 届かないの」
「……スズメバチの巣に見えますが、あれ?」
「あれ。呪術で使うから」
「おい! 刺されたらヤバイだろ!!」
「私は痛覚ないから刺されても痛くないし、腫れや毒は解毒術でなんとかすればいいし」
「やんのは俺だろ!」
「だって届かないんだもん」
結局、防御の呪術やら解毒術やらいろいろ駆使されて、スズメバチの巣やら蛇の卵やらイモリの大群やら毒蜘蛛の幼虫やら、日が暮れるまでグロいものを大量に獲らされた。これで恋心を保てという方が無理だと思う。
「……夕飯、どうなさいますか、お嬢様」
「私、作れないから、なんか適当に食べて」
部屋の中は見事にぐっちゃぐちゃである。畜生、絶対、明日片づけてやる。
「作れないって……お前一人みてーだし、今までどうやって生きてきたんだよ」
「味なんかわからないし。栄養価の高い野菜かじったりしてた」
「は?」
耳を疑う。味なんかわからない?
「痛覚ないだの、味わかんねえだの、この部屋の惨状だの、お前、感覚ないのかよ!」
「そう。ルーカにしては鋭いわね」
? 訳わからん。って、ルーカにしてはってなんだ、ルーカにしてはって!
「私は魔力と引き換えに、かなり感覚を失っているの。今、人並みに持っているのは、視覚と触覚くらい。嗅覚もないし、聴覚もちょっと弱い」
嗅覚がないなら、味覚が鈍るのも仕方ないか、と妙な納得をする。
「でも、お前、いい匂いするぞ?」
「そうなの?」
甘い、花のようなかぐわしい香りがして、悩ましくはあった。主に下半身が。
恋心はものの五分で消えたけど、ヤリたい気持ちはむしろ増している。たぶん俺、疲れてんだと思う。疲れてる時ほどヤリたくなるし。種の保存。
魔法球に従って辿り着いたのは、古いお屋敷。ゴシックホラーかなんかに出てきそうな、ちょっとおどろおどろしい雰囲気。
古めかしいノッカーを叩くが、全く反応がない。どうしろと。
しばし思案し、裏口がないか探索することにした。
果たして裏口はあったので、遠慮なく侵入する。神託の相手なんだから、まあ、許してくれるだろ。っていうか、許せ。
よく晴れた昼下がり、大木の近くにきらきらと光るものがある。
ある、ではなく、いた。
近づいてみると、小さな女の子。髪が風になびいて光っていたのだ。俺の気配を感じたのか、振り向いた。
抜けるような白い肌に、薄桃色の頬、大きな瞳は繊細なまつ毛でふちどられ、唇は薄く紅が光り、どこかなまめかしい。そして、華奢な体躯にそぐわない、大きくふっくらした胸。
絵に描いたような美少女で、俺は一発で落ちてしまった。
「ジュリ、エッタ……?」
これが、俺の相手ですか?! 神様! ありがとう! はやる想いを抑えきれないからか、声がかすれる。
「……そうだけど。なんか用? あんたは誰?」
あれ? なんか、雰囲気違くない?
「君の神託の相手、ルーカ」
「ふーん……。ルーカ、あの巣、取ってくれない? 届かないの」
「……スズメバチの巣に見えますが、あれ?」
「あれ。呪術で使うから」
「おい! 刺されたらヤバイだろ!!」
「私は痛覚ないから刺されても痛くないし、腫れや毒は解毒術でなんとかすればいいし」
「やんのは俺だろ!」
「だって届かないんだもん」
結局、防御の呪術やら解毒術やらいろいろ駆使されて、スズメバチの巣やら蛇の卵やらイモリの大群やら毒蜘蛛の幼虫やら、日が暮れるまでグロいものを大量に獲らされた。これで恋心を保てという方が無理だと思う。
「……夕飯、どうなさいますか、お嬢様」
「私、作れないから、なんか適当に食べて」
部屋の中は見事にぐっちゃぐちゃである。畜生、絶対、明日片づけてやる。
「作れないって……お前一人みてーだし、今までどうやって生きてきたんだよ」
「味なんかわからないし。栄養価の高い野菜かじったりしてた」
「は?」
耳を疑う。味なんかわからない?
「痛覚ないだの、味わかんねえだの、この部屋の惨状だの、お前、感覚ないのかよ!」
「そう。ルーカにしては鋭いわね」
? 訳わからん。って、ルーカにしてはってなんだ、ルーカにしてはって!
「私は魔力と引き換えに、かなり感覚を失っているの。今、人並みに持っているのは、視覚と触覚くらい。嗅覚もないし、聴覚もちょっと弱い」
嗅覚がないなら、味覚が鈍るのも仕方ないか、と妙な納得をする。
「でも、お前、いい匂いするぞ?」
「そうなの?」
甘い、花のようなかぐわしい香りがして、悩ましくはあった。主に下半身が。
恋心はものの五分で消えたけど、ヤリたい気持ちはむしろ増している。たぶん俺、疲れてんだと思う。疲れてる時ほどヤリたくなるし。種の保存。
0
あなたにおすすめの小説
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる