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後日譚・取り違えたその後の二人
118 その闇に射す光 ⑥
「バッカじゃないの?」
突然の私の罵倒に、リカルドは鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしている。鳩に豆鉄砲を食らわせたことはないけれど。
「明らかに彼女、あんたにベタ惚れだったでしょうが! 惚れた男と引き離されて幸せになれる訳? それともあんた、ぽっと出の男にあっさり負ける程度のちっぽけな愛情しか注いでなかったの? 急に言い渡された運命がなんぼのもんよ! そんなに大事だったらちゃんと奪い取りなさいよ! 選べるんだから!!」
リカルドは私の勢いに押されたのか、床にへたり込んでしまった。下の方から私に話しかけてくるからか、なんだか歪んで見える。
「……目が、覚めました」
そうだろうそうだろう。心の底から、地獄の底から反省しろ!
「俺、ジュリエッタじゃないと、だめです。ルーカさんには渡せない。奪いに行きます」
リカルドはそう宣言すると、袋をごそごそあさり、私に差し出した。
「ごめんなさい。つらい思いさせて。俺、女性に泣かれるの、本当にだめなんです」
目の前に出されたハンカチと、リカルドの言葉から、思わず頬に手を当てる。
「俺の判断は、あなたからルーカさんを奪うことでもあったんですよね。ごめんなさい」
私が一向にハンカチを受け取らないから、リカルドが頬をぬぐってくれた。
「ジュリエッタさん、魔力で跳んでくれませんか? ルーカさんのところまで。一緒に運命を変えに行きましょう」
戦友になりましょうと手を差し出されたので、握り返す。意外と似た者同士というのは、リカルドも感じていたのかもしれない。
魔力でジュリエッタさんの家まで跳ぶと、リカルドとジュリエッタさんはあっさりうまくまとまった。用事が済んだので、早くルーカと帰りたい。私達の家に。けれども、私はなにを言えばいいのかわからない。
「バカはあんたでしょ。なにぼんやりしてんの? 帰るわよ、ルーカ」
さりげなさを装って、ぶっきらぼうに声を掛ける。
「なんで?」
なんでって。
一緒にいたいからに決まっている。けれど、疑問を投げかけられ、立ち竦んでしまった。ルーカがそう思っていないのなら、私はどう言えばいいのだろう。
「あんたがいないと、ごはんがおいしくないのよ!」
自棄になって、もう、思いついたことを、半ば叫ぶように伝えた。
「それが、お前の『運命』の答?」
「……そうよ」
自分でも、なにを言っているのか、全然わからないけれど。
私の言葉に、ルーカはくすくすと笑いながら立ち上がった。
「それなら、つきあってやるよ」
ルーカがどうしてこの言葉に説得されたのか、未だにわからない。
「味覚ないから、以前はどうでもよかったのにね、飯なんて」
家に着くなり、ルーカがそう話し掛けてくる。
「……あんたと一緒に食べると、おいしいってどういうことか、わかるから。一度、そのよさを知ってしまったら、知らなかった頃にはもう、戻れないでしょう」
私はもう、ルーカがいる状態を知ってしまった。第六感なんかいらない。五感を全て堪能できるのはとても幸せで、普通の女の子として生きていていいと言ってもらえているような気がする。ううん、もう五感だっていらない。ルーカがそばにいるなら。大好きなルーカが。
私は思わず縋りつくようにルーカの袖を握ってしまった。
「お願いしてみ。叶えてやるから」
長い長い沈黙の後、ルーカがこう言った。
願っていいんだろうか、あなたを。ルーカの顔を見る勇気が出ない。でも、ここで伝えなかったら、一生後悔する。そんな気がした。
「ずっと一緒にいて……」
「うん」
ルーカは、小さく、でもはっきりと肯定し、ゆっくり抱きしめてくれる。
「俺のこと、どう思ってるの?」
今まで最中にしか聞かれなかったこと。素面で言っても、大丈夫だろうか。
「……好き……」
声が聞こえなかったのか、問いただされる。
「嫌い? 嫌いなヤツにずっと一緒にいてほしいの?」
「好き……ルーカ、大好き……」
勇気を振り絞って言葉にすると、ルーカは今までで一番にこにこしながら、私に優しく語りかけてくれた。
「うん。俺もジュリエッタのこと、大好き。俺、もう、一生奴隷でいいや」
キスが降ってきて、もう一度ぎゅっと抱きしめられた時、私の方こそ恋の奴隷だと思った。
突然の私の罵倒に、リカルドは鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしている。鳩に豆鉄砲を食らわせたことはないけれど。
「明らかに彼女、あんたにベタ惚れだったでしょうが! 惚れた男と引き離されて幸せになれる訳? それともあんた、ぽっと出の男にあっさり負ける程度のちっぽけな愛情しか注いでなかったの? 急に言い渡された運命がなんぼのもんよ! そんなに大事だったらちゃんと奪い取りなさいよ! 選べるんだから!!」
リカルドは私の勢いに押されたのか、床にへたり込んでしまった。下の方から私に話しかけてくるからか、なんだか歪んで見える。
「……目が、覚めました」
そうだろうそうだろう。心の底から、地獄の底から反省しろ!
「俺、ジュリエッタじゃないと、だめです。ルーカさんには渡せない。奪いに行きます」
リカルドはそう宣言すると、袋をごそごそあさり、私に差し出した。
「ごめんなさい。つらい思いさせて。俺、女性に泣かれるの、本当にだめなんです」
目の前に出されたハンカチと、リカルドの言葉から、思わず頬に手を当てる。
「俺の判断は、あなたからルーカさんを奪うことでもあったんですよね。ごめんなさい」
私が一向にハンカチを受け取らないから、リカルドが頬をぬぐってくれた。
「ジュリエッタさん、魔力で跳んでくれませんか? ルーカさんのところまで。一緒に運命を変えに行きましょう」
戦友になりましょうと手を差し出されたので、握り返す。意外と似た者同士というのは、リカルドも感じていたのかもしれない。
魔力でジュリエッタさんの家まで跳ぶと、リカルドとジュリエッタさんはあっさりうまくまとまった。用事が済んだので、早くルーカと帰りたい。私達の家に。けれども、私はなにを言えばいいのかわからない。
「バカはあんたでしょ。なにぼんやりしてんの? 帰るわよ、ルーカ」
さりげなさを装って、ぶっきらぼうに声を掛ける。
「なんで?」
なんでって。
一緒にいたいからに決まっている。けれど、疑問を投げかけられ、立ち竦んでしまった。ルーカがそう思っていないのなら、私はどう言えばいいのだろう。
「あんたがいないと、ごはんがおいしくないのよ!」
自棄になって、もう、思いついたことを、半ば叫ぶように伝えた。
「それが、お前の『運命』の答?」
「……そうよ」
自分でも、なにを言っているのか、全然わからないけれど。
私の言葉に、ルーカはくすくすと笑いながら立ち上がった。
「それなら、つきあってやるよ」
ルーカがどうしてこの言葉に説得されたのか、未だにわからない。
「味覚ないから、以前はどうでもよかったのにね、飯なんて」
家に着くなり、ルーカがそう話し掛けてくる。
「……あんたと一緒に食べると、おいしいってどういうことか、わかるから。一度、そのよさを知ってしまったら、知らなかった頃にはもう、戻れないでしょう」
私はもう、ルーカがいる状態を知ってしまった。第六感なんかいらない。五感を全て堪能できるのはとても幸せで、普通の女の子として生きていていいと言ってもらえているような気がする。ううん、もう五感だっていらない。ルーカがそばにいるなら。大好きなルーカが。
私は思わず縋りつくようにルーカの袖を握ってしまった。
「お願いしてみ。叶えてやるから」
長い長い沈黙の後、ルーカがこう言った。
願っていいんだろうか、あなたを。ルーカの顔を見る勇気が出ない。でも、ここで伝えなかったら、一生後悔する。そんな気がした。
「ずっと一緒にいて……」
「うん」
ルーカは、小さく、でもはっきりと肯定し、ゆっくり抱きしめてくれる。
「俺のこと、どう思ってるの?」
今まで最中にしか聞かれなかったこと。素面で言っても、大丈夫だろうか。
「……好き……」
声が聞こえなかったのか、問いただされる。
「嫌い? 嫌いなヤツにずっと一緒にいてほしいの?」
「好き……ルーカ、大好き……」
勇気を振り絞って言葉にすると、ルーカは今までで一番にこにこしながら、私に優しく語りかけてくれた。
「うん。俺もジュリエッタのこと、大好き。俺、もう、一生奴隷でいいや」
キスが降ってきて、もう一度ぎゅっと抱きしめられた時、私の方こそ恋の奴隷だと思った。
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