ディスコミュニケーション

テキイチ

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communication 08

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「父の事業が傾いてね。幸い提携先が見つかったから、なんとか会社の存続はできそうなんだけど、ここの学費を払うような余裕はもうないの」
「そう、なんだ」
「だから転校するけど、私、絶対、このまま終わる気、ないから」
「ふうん」
「つれないなあ。ねえ、志望校はどこ?」
「なんで?」
「たぶん、同じだと思うけど、念の為確認したくて」

 私が大学名を告げると、彼女はにっこり微笑んだ。

「入学式に、会場前で待ち合わせよう」
「え?」
「これからの過酷な生活が始まるんだから、励みの一つくらい、あってもいいと思って」
「なにそれ」
「合格しない限り行かないから、会っちゃったら、その時は諦めて友達になってよ」
「ほんと、一方的」
「ねえ! この賭け、乗らない?」

 そう言って、彼女は私を射抜くようにじっと見つめ、私は目が離せなくなってしまった。

「賭けは、成立しない」
「そっか」
「だって、もう友達だから」

 そう言った瞬間、彼女は今までで一番嬉しそうに笑った。

「祖父の言ってた通りだなあ」
「なにが?」
「本当にほしいものがあれば、普通の人が気を遣って引くところで、もう一押ししろ」
「迷惑な……」
「でも、今まで勝率十割だよ?」
「今までどんだけゴネてきたのさ」
「礼は失せず、変に遠慮するなってことだと解釈してる!」

 ちょっと、どきっとした。今までの人生、仕方ないと諦めてきたことはたくさんあるけど、一押しする方向を知っていれば諦めずに済んだこともあるのでは、と思ったのだ。文化資本がなく、追いつめられた状態の私には、選択肢が見えなかっただけで。人に頼ったり、弱みを見せるのが嫌で、自分でなんとかする方法ばかり考えてきたけど、遠慮せずに訊ねてみれば、もっと適切な解決方法に辿りつけたのかもしれない。そんな可能性に気づいた。

「どうかした?」
「いや、ちょっと、今までの人生を振り返ってた」
「人が真剣に話してるのに、意識飛ばさないでよ!」
「いいじゃん。友達なんだから、それくらい大目に見てよ」
「友達っていえば丸め込めると思ってるでしょ?」
「うん。許してよ」

 私はそう言ってにやりと笑い、手を出す。

「合格の願掛けも兼ねて、連絡先は聞かない。次は入学式で会おうよ、ハル」
「そう言いながら、自分が落ちないでよね、ユキ」

 ハルが笑顔で私の手を握り返す。一年半後の再会を約束して、別れた。
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