上 下
57 / 352
第二章 真実はプディングの中に

056 僕の彼女と念願の姫初め ⑦

しおりを挟む
 翌朝、チェックアウトまで少しいちゃいちゃして、近所のファミレスで朝食を食べて、若葉ちゃんを家まで送ることにした。
 家の近くまで来たと若葉ちゃんの自己申告があったので、そろそろ別れの挨拶をしようかと思った時。

「お兄ちゃん……」

 お兄ちゃん? 若葉ちゃんの視線の先を追っていくと、そこには若い男性が立っていた。身長こそ僕と同じくらいだけど、体格がいいので圧倒的に大きい感じがする。そしてジャケットの中のシャツが派手な色柄で、なんだかそれが妙にぴったりハマッていて、ちょっとヤのつく自由業の方に見える。
 男性がゆっくり近づいてくるのを見て、若葉ちゃんは僕の前に立ちふさがり、叫ぶように言う。

「昨日、新くんの誕生日だったの! 新年最初かつ新世紀の始まりの日生まれだから、新!」

 若葉ちゃん、下の名前だけそんな詳細に教えても仕方ない。

「渋沢新です。若葉さんと真剣にお付き合いしています。よろしくお願いします」

 僕はそう言って頭を下げる。男と朝帰り、そういうことをしてきたのは明白なんだから、せめて挨拶はきちんとしようと思った。

「ボーダーコリー渋沢……」

 ぼそりとつぶやかれ、え? っと思ったけど、お兄さんはすぐに続ける。

「若葉の兄のひびきです。どうぞよろしく。渋沢くん、妹を送ってくれてありがとう」

 若葉ちゃんとお兄さんは二人とも目鼻立ちが整っている。兄妹だけあって造作は似ているけれど、印象はずいぶん違う。若葉ちゃんは可愛らしいやわらかい印象だけど、お兄さんは眼光鋭くて男らしく精悍な印象。笑顔を浮かべてくれてるけど、目は笑ってない。まあ、それはあたりまえか。

「家族には、若葉は俺と途中で合流したって伝えるから。それじゃ」

 そう言ってお兄さんは若葉ちゃんの腕をつかみ、家へと向かう。

「ちょっと、お兄ちゃん……! 新くん、またね!」

 若葉ちゃんがあわててそう言うから、またねと手を振る。

 二〇二一年、波乱の幕開け。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

吉田定理の短い小説集(3000文字以内)

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

官能令嬢小説 大公妃は初夜で初恋夫と護衛騎士に乱される

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:314

あまり貞操観念ないけど別に良いよね?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,824pt お気に入り:2

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:18,406pt お気に入り:3,526

幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:77

裏切り愛

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:285pt お気に入り:0

処理中です...