【R18】人の好みは説明できない

テキイチ

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第十章 扉が閉じて別の扉が開く

284 人生は選択の連続である ⑥

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 小学生の頃、祖父母がゲーム機を買ってくれた。最初は楽しく遊んでいたけれど、姉が私にも使わせろとうるさかったから、なんだかやる気が失せてしまって、結局そこまでハマることはなかった。後からやり始めた姉の方が、がぜん強くなったと思う。姉はゲーム全般強い。才能もあるだろうけど、負けず嫌いな部分が大きい気がする。

 もう好きにしてくれと思い、本を読み始めた。最初は実家にあった世界名作全集を読んでいたけれど、これも姉が「私にも読ませろ」とうるさく言ってきたから、学校の図書館に通って読むようになった。その頃、一気に目が悪くなったなあ、なんてことを思い出す。

 戦うことを放棄したのだ。面倒だから。
 そんな僕が勇者というのは、しっくりこない。
 そして、僕が今いるのは平和な世界だから、戦う必要もない。

「若葉ちゃん」
「なあに?」
「大丈夫?」

 一瞬、若葉ちゃんの動きが止まった。

「いや……。就職活動と卒論、大変そうだから」
「大丈夫だよ! 早くいろいろ終わらせたいな!」

 会話はそこで終わる。
 違和感を覚えているのは、単に僕と土屋さんの勘違いかもしれない。若葉ちゃんの気持ちを勝手に推測して決めつけるのも、本人が言おうとしないことを無理に聞き出すのも、きっとよくない。
 杞憂の語源のように、「もし天地が崩落して身の寄せ場がなくなったら」なんて、考えても仕方がないのだ。



 考えるべきなのは、現実に存在すること。
 目の前のハードルを一つ一つ越えていけば、なんとかなるはずだ。

 自分で選んだ水色と焦げ茶のストライプのネクタイを締め、黒いスーツを纏う。若葉ちゃんがくれたトートバッグの中にはシャープペンシルもある。
 就職に関する情報収集は、仁科さんが最大限協力してくれた。
 これで駄目ならば、僕の実力が足りなかっただけだ。
 でも、きっと大丈夫。

「渋沢新さん、ですね」

 書類を眺めている面接官に問われたので、僕ははっきり答えた。

「はい。新しい一万円札の渋沢です」
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