183 / 198
番外!!
181 スタンダード(神様はいつもきまぐれ) ⑫
しおりを挟む
川崎とレイはどうすればよかったんだろうと、川崎と再会してから何度も考えている。
おそらく、医療なり福祉なりの適切な機関を介し、専門職の手を借りて、レイの不安を分散できればよかったのだろう。底の抜けたバケツから流れるような不安を、川崎一人が受け止めるのではなく。でもそれは結果論だし、レイがその提案を受け入れたとも思えない。
そして、これはたぶん俺が当事者ではないからこそ言えることなんだ。当事者は、そこまで冷静になれない。これは逆に、当事者じゃないからこその的確さ、ともいえる。
閉じた世界にいると、同じことを延々と繰り返してしまう。選択肢がそれしかないから。むしろ永遠に繰り返したいと欲する人間もいるかもしれない。二人だけの箱庭は、あまりにも美しいから。
時に、大切な相手に真剣に受け止めてもらうより、知らない人間に流し聞いてもらう方が気持ちの整理ができたりすることがある。
そして、こうなってほしいと心から願っていたことが叶うよりも、なぜか、たいして意味のないくだらないことに思いがけず救われることもあって。
「弱い紐帯の強み」という言葉を思い出す。大学に入ってすぐ、社会学だっただろうか、一般教養の授業で習った。
転職経験者にアンケート調査をしたところ「転職の際に役立った情報は、さほど親しくない人から得られたことが多い」という結果が出たそうなのだ。
転じて「有益な情報はつながりの弱い人達からもたらされる」という意味で使われることが多い言葉だ。親しい、似たような思考回路の人から、新規性のある情報や画期的な打開策は、実は得にくいということ。
俺は当時まだ人との関わりを復活させることができていなかった。大学に入ったら変わらなければと思っていたし、このままではよくないと危機感を覚えてもいた。でも、もう一歩踏み出す勇気がなくて。
授業でこの言葉を習った日の午後、俺はようやく軽音部のドアを叩いた。
今、俺は、あの時と同じような分岐点にいるのではないだろうか。
おそらく、医療なり福祉なりの適切な機関を介し、専門職の手を借りて、レイの不安を分散できればよかったのだろう。底の抜けたバケツから流れるような不安を、川崎一人が受け止めるのではなく。でもそれは結果論だし、レイがその提案を受け入れたとも思えない。
そして、これはたぶん俺が当事者ではないからこそ言えることなんだ。当事者は、そこまで冷静になれない。これは逆に、当事者じゃないからこその的確さ、ともいえる。
閉じた世界にいると、同じことを延々と繰り返してしまう。選択肢がそれしかないから。むしろ永遠に繰り返したいと欲する人間もいるかもしれない。二人だけの箱庭は、あまりにも美しいから。
時に、大切な相手に真剣に受け止めてもらうより、知らない人間に流し聞いてもらう方が気持ちの整理ができたりすることがある。
そして、こうなってほしいと心から願っていたことが叶うよりも、なぜか、たいして意味のないくだらないことに思いがけず救われることもあって。
「弱い紐帯の強み」という言葉を思い出す。大学に入ってすぐ、社会学だっただろうか、一般教養の授業で習った。
転職経験者にアンケート調査をしたところ「転職の際に役立った情報は、さほど親しくない人から得られたことが多い」という結果が出たそうなのだ。
転じて「有益な情報はつながりの弱い人達からもたらされる」という意味で使われることが多い言葉だ。親しい、似たような思考回路の人から、新規性のある情報や画期的な打開策は、実は得にくいということ。
俺は当時まだ人との関わりを復活させることができていなかった。大学に入ったら変わらなければと思っていたし、このままではよくないと危機感を覚えてもいた。でも、もう一歩踏み出す勇気がなくて。
授業でこの言葉を習った日の午後、俺はようやく軽音部のドアを叩いた。
今、俺は、あの時と同じような分岐点にいるのではないだろうか。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
その溺愛も仕事のうちでしょ?〜拾ったワケありお兄さんをヒモとして飼うことにしました〜
濘-NEI-
恋愛
梅原奏多、30歳。
男みたいな名前と見た目と声。何もかもがコンプレックスの平凡女子。のはず。
2ヶ月前に2年半付き合った彼氏と別れて、恋愛はちょっとクールダウンしたいところ。
なのに、土砂降りの帰り道でゴミ捨て場に捨てられたお兄さんを発見してしまって、家に連れて帰ると決めてしまったから、この後一体どうしましょう!?
※この作品はエブリスタさんにも掲載しております。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ワケあって、お見合い相手のイケメン社長と山で一夜を過ごすことになりました。
紫月あみり
恋愛
※完結! 焚き火の向かい側に座っているのは、メディアでも話題になったイケメン会社経営者、藤原晃成。山奥の冷えた外気に、彼が言い放った。「抱き合って寝るしかない」そんなの無理。七時間前にお見合いしたばかりの相手なのに!? 応じない私を、彼が羽交い締めにして膝の上に乗せる。向き合うと、ぶつかり合う私と彼の視線。運が悪かっただけだった。こうなったのは――結婚相談所で彼が私にお見合いを申し込まなければ、妹から直筆の手紙を受け取らなければ、そもそも一ヶ月前に私がクマのマスコットを失くさなければ――こんなことにならなかった。彼の腕が、私を引き寄せる。私は彼の胸に顔を埋めた……
雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
和泉 花奈
恋愛
主人公の観月 奈緒(25)は、ある日突然仕事に行けなくなり、ずっとお家の中に引きこもっている。
そんな自分を変えたくて足掻き苦しんでいるが、なかなかあと一歩が踏み出せずにいる。
勇気を出して家から出た奈緒は、たまたまぶつかった須藤 悠翔という男に出会い、運命が大きく揺れ動く。
※突然で申し訳ないのですが、投稿方式を変えました。
これまで1〜3話をまとめて1話にしておりますが、各話1話ずつそれぞれで公開することにしました。
急な変更に伴い、読者の皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
これからも引き続き作品の応援をよろしくお願い致します。
2025/10/21 和泉 花奈
求婚されても困ります!~One Night Mistake~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「責任は取る。僕と結婚しよう」
隣にイケメンが引っ越してきたと思ったら、新しく赴任してきた課長だった。
歓迎会で女性陣にお酒を飲まされ、彼は撃沈。
お隣さんの私が送っていくことになったんだけど。
鍵を出してくれないもんだから仕方なく家にあげたらば。
……唇を奪われた。
さらにその先も彼は迫ろうとしたものの、あえなく寝落ち。
翌朝、大混乱の課長は誤解していると気づいたものの、昨晩、あれだけ迷惑かけられたのでちょーっとからかってやろうと思ったのが間違いだった。
あろうことか課長は、私に求婚してきたのだ!
香坂麻里恵(26)
内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部営業
サバサバした性格で、若干の世話焼き。
女性らしく、が超苦手。
女子社員のグループよりもおじさん社員の方が話があう。
恋愛?しなくていいんじゃない?の、人。
グッズ収集癖ははない、オタク。
×
楠木侑(28)
内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部課長
イケメン、エリート。
あからさまにアプローチをかける女性には塩対応。
仕事に厳しくてあまり笑わない。
実は酔うとキス魔?
web小説を読み、アニメ化作品をチェックする、ライトオタク。
人の話をまったく聞かない課長に、いつになったら真実を告げられるのか!?
先輩、お久しぶりです
吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社
秘書課
×
藤井昂良 大手不動産会社
経営企画本部
『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。
もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』
大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。
誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。
もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。
――それも同じ会社で働いていた!?
音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。
打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……
デキナイ私たちの秘密な関係
美並ナナ
恋愛
可愛い容姿と大きな胸ゆえに
近寄ってくる男性は多いものの、
あるトラウマから恋愛をするのが億劫で
彼氏を作りたくない志穂。
一方で、恋愛への憧れはあり、
仲の良い同期カップルを見るたびに
「私もイチャイチャしたい……!」
という欲求を募らせる日々。
そんなある日、ひょんなことから
志穂はイケメン上司・速水課長の
ヒミツを知ってしまう。
それをキッカケに2人は
イチャイチャするだけの関係になってーー⁉︎
※性描写がありますので苦手な方はご注意ください。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※この作品はエブリスタ様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる