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本編
◇ 第七夜 ②
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アレクサンドルも寝台に入ってくると、コンスタンツェは半身を起こし、小さな声で彼に訊ねた。
「陛下が……サーシャではなくアレクサンドル陛下として閨教育を施してくださるのでは、いけなかったのですか……」
「皇帝が相手だと最初からわかっていると、姫君の遠慮と緊張が解けず、上手くいかないことも少なくないのです。身分の低い者に奉仕させると言えば、力が抜け、大抵の姫君は上手く受け止められるようになりますし……」
ここでアレクサンドルは一旦言葉を止め、不敵に微笑んだ。
「卑しい者に身体を扱われる羞恥心と背徳感が、姫君のできあがりを早めることも多いのです。コンスタンツェもそうだったでしょう?」
コンスタンツェの頬に朱が走った。アレクサンドルの言う通り、羞恥心と背徳感が彼女の身体を濡らし、拓いていったことは、否定できなかったからである。
「サーシャという名も、嘘ではないのです。家族と親しい者達からは、そう呼ばれています」
アレクサンドルの言葉を聞き、コンスタンツェは彼の目を見た。六日間隠されていた、美しい翠の瞳。小さく息を吐き、コンスタンツェは口を開く。
「私からも一つ、告白させてくださいませ」
「なんでしょうか」
「コニーは家族と親しい友人だけに許した愛称です」
「それは……」
「サーシャに一目で心を奪われてしまいました。けれども私はアレクサンドル陛下に嫁ぐ身。この想いは殺さなければなりません。ただ、かりそめの閨であっても、私の心を奪った方に、この名で呼ばれたかったのです」
コンスタンツェの言葉を聞き、アレクサンドルは彼女をそっと抱きしめた。
「ああ、心が二つあります。コンスタンツェがサーシャを想ってくださったことと、アレクサンドルのために純潔を守ってくださったこと。私はどちらも嬉しいのです」
「アレクサンドル陛下……」
「姫君の身体が解れ、同意を得られたならば、六日目、つまり婚礼の前に交わってもよいと、許されてはいるのです。相手を違えている訳ではないのですから。けれども、皇后になる者として毅然とした態度を取ってくださったあなたが、私はとても愛おしい」
アレクサンドルはコンスタンツェの頤にふれ、くちづけた。かりそめの六夜には一度も奪わなかった唇。
「陛下が……サーシャではなくアレクサンドル陛下として閨教育を施してくださるのでは、いけなかったのですか……」
「皇帝が相手だと最初からわかっていると、姫君の遠慮と緊張が解けず、上手くいかないことも少なくないのです。身分の低い者に奉仕させると言えば、力が抜け、大抵の姫君は上手く受け止められるようになりますし……」
ここでアレクサンドルは一旦言葉を止め、不敵に微笑んだ。
「卑しい者に身体を扱われる羞恥心と背徳感が、姫君のできあがりを早めることも多いのです。コンスタンツェもそうだったでしょう?」
コンスタンツェの頬に朱が走った。アレクサンドルの言う通り、羞恥心と背徳感が彼女の身体を濡らし、拓いていったことは、否定できなかったからである。
「サーシャという名も、嘘ではないのです。家族と親しい者達からは、そう呼ばれています」
アレクサンドルの言葉を聞き、コンスタンツェは彼の目を見た。六日間隠されていた、美しい翠の瞳。小さく息を吐き、コンスタンツェは口を開く。
「私からも一つ、告白させてくださいませ」
「なんでしょうか」
「コニーは家族と親しい友人だけに許した愛称です」
「それは……」
「サーシャに一目で心を奪われてしまいました。けれども私はアレクサンドル陛下に嫁ぐ身。この想いは殺さなければなりません。ただ、かりそめの閨であっても、私の心を奪った方に、この名で呼ばれたかったのです」
コンスタンツェの言葉を聞き、アレクサンドルは彼女をそっと抱きしめた。
「ああ、心が二つあります。コンスタンツェがサーシャを想ってくださったことと、アレクサンドルのために純潔を守ってくださったこと。私はどちらも嬉しいのです」
「アレクサンドル陛下……」
「姫君の身体が解れ、同意を得られたならば、六日目、つまり婚礼の前に交わってもよいと、許されてはいるのです。相手を違えている訳ではないのですから。けれども、皇后になる者として毅然とした態度を取ってくださったあなたが、私はとても愛おしい」
アレクサンドルはコンスタンツェの頤にふれ、くちづけた。かりそめの六夜には一度も奪わなかった唇。
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