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03. 出発 ③
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数日かけて王都に着くと、リリアンはまず目当ての店に向かった。
「綺麗なものに興味がない訳じゃないのよ。あまりお金を掛けられなかったのと、気恥ずかしかっただけで」
誰に話すともなくリリアンはぼそりとつぶやくと、深呼吸をし、入店した。彼女が入ったのは王都でも人気の下着屋である。
リリアンは流行の服を持っていない。背格好が近かったので、いつも亡くなった母の服を着ている。「もっと着飾ったらいいのに! せっかく可愛いのにもったいない!」と近所のご婦人達によく言われるので、そのたびに彼女は「家計のことを考えたら、贅沢はできないですよ」と笑顔で返していた。だが、それは建前で、おしゃれに関心はあるものの、男所帯なのもあり、女性らしいものを選択するのに少し戸惑いがあったのである。
リリアンの母は着飾ることにさほど興味がなかったようで、ごく簡素な意匠の服しか残されていなかった。流行り廃りにそこまで影響がなく、古着なので汚れてもかまわない。気負わずに着られる服は、リリアンにとって楽ではあった。
下着は服と違って外から見てわかるものではないし、よほど特殊な意匠でなければ動きの邪魔もしない。リリアンの家では家事を分担していて、洗濯は交代で三人分まとめて行っている。姉弟が年頃になり、下着だけはそれぞれ自分で洗うことになった。その頃からリリアンは綺麗な下着をひっそり楽しむようになったのである。
村では見たことのない繊細で美しいレースの下着が店内にはたくさんあり、リリアンは目移りした。どれも欲しくなってしまう。
今回一番の目的はガーターベルトである。マルセルがくれた小刀を持ち歩く方法を考えた時に、ちょうどいい気がしたのだ。ガーターベルトに小刀を隠し持てば、不意の暴漢にも対応できる。もともと憧れていたのだが、村で売られていたごく簡素な造りのものには食指が動かなかったのもあり、王都の店で買おうと決めていた。
ガーターベルトの実物を見て、レースは小刀を取り出す際に引っ掛かると気づき、リリアンは結局飾りのないものを選んだ。憧れよりも機能、リリアンはいつもそう判断する。ただ、淡いピンク色のなめらかな生地はとてもさわり心地がよく、非常に洗練された意匠だったので、妥協した気持ちにはならなかった。
その代わり、ではないが、リリアンは美しいレースが施された下着を三組購入した。洗い替えて順番に着ける方が長持ちするから。そう自分に言い聞かせるようにして、リリアンは手持ちの娯楽費を全て使ったのだった。彼女に他の趣味はない。
宿に着き、リリアンはガーターベルトに細工をした。さすがにそのままで小刀を仕込めるような仕様にはなっていない。色が似た端切れを縫い付け、小刀を入れられるようにした。
なんだかお父さんが守ってくれているみたい。そんなことを思いながら、リリアンは眠りに就いた。
「綺麗なものに興味がない訳じゃないのよ。あまりお金を掛けられなかったのと、気恥ずかしかっただけで」
誰に話すともなくリリアンはぼそりとつぶやくと、深呼吸をし、入店した。彼女が入ったのは王都でも人気の下着屋である。
リリアンは流行の服を持っていない。背格好が近かったので、いつも亡くなった母の服を着ている。「もっと着飾ったらいいのに! せっかく可愛いのにもったいない!」と近所のご婦人達によく言われるので、そのたびに彼女は「家計のことを考えたら、贅沢はできないですよ」と笑顔で返していた。だが、それは建前で、おしゃれに関心はあるものの、男所帯なのもあり、女性らしいものを選択するのに少し戸惑いがあったのである。
リリアンの母は着飾ることにさほど興味がなかったようで、ごく簡素な意匠の服しか残されていなかった。流行り廃りにそこまで影響がなく、古着なので汚れてもかまわない。気負わずに着られる服は、リリアンにとって楽ではあった。
下着は服と違って外から見てわかるものではないし、よほど特殊な意匠でなければ動きの邪魔もしない。リリアンの家では家事を分担していて、洗濯は交代で三人分まとめて行っている。姉弟が年頃になり、下着だけはそれぞれ自分で洗うことになった。その頃からリリアンは綺麗な下着をひっそり楽しむようになったのである。
村では見たことのない繊細で美しいレースの下着が店内にはたくさんあり、リリアンは目移りした。どれも欲しくなってしまう。
今回一番の目的はガーターベルトである。マルセルがくれた小刀を持ち歩く方法を考えた時に、ちょうどいい気がしたのだ。ガーターベルトに小刀を隠し持てば、不意の暴漢にも対応できる。もともと憧れていたのだが、村で売られていたごく簡素な造りのものには食指が動かなかったのもあり、王都の店で買おうと決めていた。
ガーターベルトの実物を見て、レースは小刀を取り出す際に引っ掛かると気づき、リリアンは結局飾りのないものを選んだ。憧れよりも機能、リリアンはいつもそう判断する。ただ、淡いピンク色のなめらかな生地はとてもさわり心地がよく、非常に洗練された意匠だったので、妥協した気持ちにはならなかった。
その代わり、ではないが、リリアンは美しいレースが施された下着を三組購入した。洗い替えて順番に着ける方が長持ちするから。そう自分に言い聞かせるようにして、リリアンは手持ちの娯楽費を全て使ったのだった。彼女に他の趣味はない。
宿に着き、リリアンはガーターベルトに細工をした。さすがにそのままで小刀を仕込めるような仕様にはなっていない。色が似た端切れを縫い付け、小刀を入れられるようにした。
なんだかお父さんが守ってくれているみたい。そんなことを思いながら、リリアンは眠りに就いた。
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