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02. 出発 ②
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リリアンが王都へ旅立つ前夜、マルセルは娘の部屋にやってきた。
「王都は物騒だ。護身用に持っていきなさい」
マルセルがリリアンに渡したのは銀色の小刀だ。Vulcānusという文字が刻まれているのを見て、リリアンは微笑む。ウゥルカーヌスは異国の鍛冶の神の名で、父は自信作にこの文字を刻むのだ。小刀を鞘から抜くと、細身の刃が大変美しく光った。
「ありがとう。持ち歩くようにするわ」
「リリアン。儂は廃業することになっても致し方ないと思っている。できることはした。王都へは、お前の大切なものを見つけるために行きなさい」
「わかったわ」
マルセルが出ていくと、リリアンは父の言葉を反芻する。大切なもの。
自分には特別な才能は何もない。でも、王都で何か自分だけのものをつかむんだ。リリアンはひそかにそう決意していた。
翌朝、マルセルとオーレルに見送られ、リリアンは王都へ旅立つことになった。
「姉ちゃんに餞別」
「餞別?」
オーレルはリリアンの右手に何かを握らせた。手を開くと、金鎖がチャラリと小さな音を立てる。薄紅色の石を下げた首飾りだ。優しい色の薔薇石英は、百合の形に彫り込まれていた。
「姉ちゃんの名前にちなんで彫ってみた。ピンクの百合は『富と繁栄』って花言葉らしいし、今回の旅にぴったりだろ」
「オーレル、あんたこんなに綺麗なものを作れたの? すごいわね」
「姉ちゃんは装飾品に興味ないから、言っても仕方ないかと思って」
「そんなことはないけど。ありがとう。大切にするわ」
「着けてみなさい」
マルセルに命じられ、リリアンはおそるおそる首飾りを掛ける。父が首飾りの細工をあまりにもまじまじと見つめるので、姉弟は気まずい表情を浮かべた。
「父ちゃん、あんまり見ないでくれよ……」
「お前は手を抜いた駄作を人に贈るのか?」
「そんな失礼なことは、しないけど」
「ならば、見てもいいだろう」
マルセルは一通り見終わると、リリアンに言った。
「くれぐれも無理はせず、生きることを最優先しなさい」
「わかったわ」
「元気でな」
そのままマルセルが家に戻ろうとするので、オーレルはぼそりと訊ねる。
「……父ちゃん、そんなまじまじ見といて、一言もなし?」
「意見を聞きたいのか?」
「……いや、いいけど……」
マルセルがそのまま行ってしまったので、オーレルはため息を吐く。
「姉ちゃん、元気で」
「お父さんと喧嘩しないでよ」
「……父ちゃんの方から仕掛けてこなければ」
リリアンはこれまで以上に二人の仲が心配になったが、なるようにしかならない。お父さんをよろしくね、とオーレルに言い、リリアンは笑顔で出発した。オーレルは少し冴えない表情だったが、リリアンが見えなくなるまで見送ってくれた。
「王都は物騒だ。護身用に持っていきなさい」
マルセルがリリアンに渡したのは銀色の小刀だ。Vulcānusという文字が刻まれているのを見て、リリアンは微笑む。ウゥルカーヌスは異国の鍛冶の神の名で、父は自信作にこの文字を刻むのだ。小刀を鞘から抜くと、細身の刃が大変美しく光った。
「ありがとう。持ち歩くようにするわ」
「リリアン。儂は廃業することになっても致し方ないと思っている。できることはした。王都へは、お前の大切なものを見つけるために行きなさい」
「わかったわ」
マルセルが出ていくと、リリアンは父の言葉を反芻する。大切なもの。
自分には特別な才能は何もない。でも、王都で何か自分だけのものをつかむんだ。リリアンはひそかにそう決意していた。
翌朝、マルセルとオーレルに見送られ、リリアンは王都へ旅立つことになった。
「姉ちゃんに餞別」
「餞別?」
オーレルはリリアンの右手に何かを握らせた。手を開くと、金鎖がチャラリと小さな音を立てる。薄紅色の石を下げた首飾りだ。優しい色の薔薇石英は、百合の形に彫り込まれていた。
「姉ちゃんの名前にちなんで彫ってみた。ピンクの百合は『富と繁栄』って花言葉らしいし、今回の旅にぴったりだろ」
「オーレル、あんたこんなに綺麗なものを作れたの? すごいわね」
「姉ちゃんは装飾品に興味ないから、言っても仕方ないかと思って」
「そんなことはないけど。ありがとう。大切にするわ」
「着けてみなさい」
マルセルに命じられ、リリアンはおそるおそる首飾りを掛ける。父が首飾りの細工をあまりにもまじまじと見つめるので、姉弟は気まずい表情を浮かべた。
「父ちゃん、あんまり見ないでくれよ……」
「お前は手を抜いた駄作を人に贈るのか?」
「そんな失礼なことは、しないけど」
「ならば、見てもいいだろう」
マルセルは一通り見終わると、リリアンに言った。
「くれぐれも無理はせず、生きることを最優先しなさい」
「わかったわ」
「元気でな」
そのままマルセルが家に戻ろうとするので、オーレルはぼそりと訊ねる。
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「意見を聞きたいのか?」
「……いや、いいけど……」
マルセルがそのまま行ってしまったので、オーレルはため息を吐く。
「姉ちゃん、元気で」
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