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18. お買い物とジェラールの夢 ①
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翌日、ブノワは魔石を服飾小物に加工してくれる仕立て屋へリリアンを案内してくれた。首飾りはオーレルからもらったものがあるし、指輪は水仕事が多いから石が傷みそうで、腕輪は雑事をこなすのに邪魔かもしれないとリリアンが迷っていたところ、ブノワから「腰巻はどうか」と提案されたのだ。
普段ブノワはリリアンと連れ立って歩くことはない。ブノワは自由を好むので、一緒に行動するのは目的地に向かう時と、常宿から食堂へ行く時くらいだ。リリアンはここぞとばかりに観察する。
アニエスが纏っているものも上質で美しいが、用意されたものを着ているだけだと言っていたし、一緒に過ごしていて本人は飾ることに無頓着であることもよくわかった。
対してブノワは洒落者だ。気に入ったものしか身に着けないと本人が言っていたし、報酬も服飾品に消えることが多いらしい。あとは酒で、よく一人で飲みに行っている。だが、酔って乱れたところをリリアンは一度も見たことがない。彼の行動はいつも洒脱だ。
小さな蒼い石が嵌められた細い金の簪がちらりと見え、おしゃれだなとリリアンは思う。銀髪に紛れているし、繊細な細工なので暗い場所だとそこまで目立たないが、陽光に照らされると美しい光を放つ。差し色になっていて綺麗だ。
「他のアクセサリーは銀なのに、簪は金なのね」
「これは、ただの飾りだからね。仕事道具じゃないものは、気に入っている、ただそれだけでいい」
「蒼い石が映えて、とっても素敵ね!」
リリアンの言葉に、ブノワは何も答えず、やわらかく笑んだ。
ほどなく店に着き、ブノワは扉を開いた。軽やかに澄んだ呼び鈴の音がする。店員はブノワの姿を認めると、すぐに奥へ行き、立派な装束の男性を連れてきた。店長だとブノワがリリアンに紹介すると、彼は頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
「今日は煙水晶を腰巻に仕立ててほしい。リリアン、石を出して」
リリアンは袋から煙水晶を出し、店長に渡す。透明感がある優しい焦げ茶色はやはり落ち着くなとリリアンは思う。店長は煙水晶をじっくり眺め、感嘆したように言った。
「とてもよい煙水晶ですね。カットが美しく、内包物もない。一級品です」
目利きである店長から褒められて、リリアンはとても嬉しくなった。
店長は店員に指示を出す。ほどなく店員はいくつか生地を抱えて戻ってきた。
「加護を重視するなら、銀糸のみで織られた布がよいですが、少し重くてごわつきがあるのが難点です」
店長はリリアンに生地を見せた。銀の布は美しいがなんだか仰々しい。さわってもいいかと訊ねると快諾されたので、リリアンはそっと生地にふれた。店長の言う通り少し硬い。生地を広げてもらい、下から持ち上げるようにすると、重みがあるのもよくわかった。体力はあるが非力なリリアンには、扱いが難しい気がする。
「おすすめは絹に銀糸を織り込んだものです。絹の軽やかさと艶を保ったまま、銀で強化付与できますし、色の種類も豊富です」
リリアンはとりどりの色布に見とれていた。どれも織りが凝っていて、角度によって模様が浮き上がって見える。色によって模様が違うところもリリアンの心をくすぐった。
淡いピンク色の布がとても綺麗に見え、リリアンは惹きつけられた。花模様の織りも非常に凝っていて可愛らしい。
「リリアン、これがいい?」
「ええ。とても素敵だと思うけれど……煙水晶と合うかしら?」
「石の色が落ち着いているので、甘くなりすぎず、素敵に仕上がると思います」
店長はリリアンの腰回りを測り、何かご希望はありますかと彼女に訊ねた。「綺麗だと嬉しいけれど、具体的にはよくわからないです」とリリアンが正直に言うと、「お任せいただければ素敵に仕上げてみせます」と店長は返してくれる。リリアンが「店長さんの素敵な感性にお任せします」と言うと、店長は笑顔で頷いてくれた。
店長が週明けにはお渡しできますと約束したので、ブノワが取りに行くと告げ、二人は店を出た。
「ブノワ、本当に感謝しているわ。私一人では、どこに行っていいかも何をすればいいのかもわからなかったし、とても助かったの」
「これくらいならお安い御用だよ。また何かあったら遠慮なく言って。俺はこのまま自分の用を済ませるから、解散ってことでいい?」
「もちろん。ブノワ、ありがとう!」
普段ブノワはリリアンと連れ立って歩くことはない。ブノワは自由を好むので、一緒に行動するのは目的地に向かう時と、常宿から食堂へ行く時くらいだ。リリアンはここぞとばかりに観察する。
アニエスが纏っているものも上質で美しいが、用意されたものを着ているだけだと言っていたし、一緒に過ごしていて本人は飾ることに無頓着であることもよくわかった。
対してブノワは洒落者だ。気に入ったものしか身に着けないと本人が言っていたし、報酬も服飾品に消えることが多いらしい。あとは酒で、よく一人で飲みに行っている。だが、酔って乱れたところをリリアンは一度も見たことがない。彼の行動はいつも洒脱だ。
小さな蒼い石が嵌められた細い金の簪がちらりと見え、おしゃれだなとリリアンは思う。銀髪に紛れているし、繊細な細工なので暗い場所だとそこまで目立たないが、陽光に照らされると美しい光を放つ。差し色になっていて綺麗だ。
「他のアクセサリーは銀なのに、簪は金なのね」
「これは、ただの飾りだからね。仕事道具じゃないものは、気に入っている、ただそれだけでいい」
「蒼い石が映えて、とっても素敵ね!」
リリアンの言葉に、ブノワは何も答えず、やわらかく笑んだ。
ほどなく店に着き、ブノワは扉を開いた。軽やかに澄んだ呼び鈴の音がする。店員はブノワの姿を認めると、すぐに奥へ行き、立派な装束の男性を連れてきた。店長だとブノワがリリアンに紹介すると、彼は頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
「今日は煙水晶を腰巻に仕立ててほしい。リリアン、石を出して」
リリアンは袋から煙水晶を出し、店長に渡す。透明感がある優しい焦げ茶色はやはり落ち着くなとリリアンは思う。店長は煙水晶をじっくり眺め、感嘆したように言った。
「とてもよい煙水晶ですね。カットが美しく、内包物もない。一級品です」
目利きである店長から褒められて、リリアンはとても嬉しくなった。
店長は店員に指示を出す。ほどなく店員はいくつか生地を抱えて戻ってきた。
「加護を重視するなら、銀糸のみで織られた布がよいですが、少し重くてごわつきがあるのが難点です」
店長はリリアンに生地を見せた。銀の布は美しいがなんだか仰々しい。さわってもいいかと訊ねると快諾されたので、リリアンはそっと生地にふれた。店長の言う通り少し硬い。生地を広げてもらい、下から持ち上げるようにすると、重みがあるのもよくわかった。体力はあるが非力なリリアンには、扱いが難しい気がする。
「おすすめは絹に銀糸を織り込んだものです。絹の軽やかさと艶を保ったまま、銀で強化付与できますし、色の種類も豊富です」
リリアンはとりどりの色布に見とれていた。どれも織りが凝っていて、角度によって模様が浮き上がって見える。色によって模様が違うところもリリアンの心をくすぐった。
淡いピンク色の布がとても綺麗に見え、リリアンは惹きつけられた。花模様の織りも非常に凝っていて可愛らしい。
「リリアン、これがいい?」
「ええ。とても素敵だと思うけれど……煙水晶と合うかしら?」
「石の色が落ち着いているので、甘くなりすぎず、素敵に仕上がると思います」
店長はリリアンの腰回りを測り、何かご希望はありますかと彼女に訊ねた。「綺麗だと嬉しいけれど、具体的にはよくわからないです」とリリアンが正直に言うと、「お任せいただければ素敵に仕上げてみせます」と店長は返してくれる。リリアンが「店長さんの素敵な感性にお任せします」と言うと、店長は笑顔で頷いてくれた。
店長が週明けにはお渡しできますと約束したので、ブノワが取りに行くと告げ、二人は店を出た。
「ブノワ、本当に感謝しているわ。私一人では、どこに行っていいかも何をすればいいのかもわからなかったし、とても助かったの」
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「もちろん。ブノワ、ありがとう!」
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