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17. 名前とお買い得物件 ④
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「その煙水晶はいいだろう。透明感があって」
「煙水晶っていうんですか? この石」
「ああ。黒水晶ほど圧を掛けてこないが、守護の力は強い。穏やかで地道な石だ」
「ちなみに、おいくらですか?」
魔石には値札が付いていないので、手持ちの金で足りるか心配になったリリアンは訊ねた。店主はリリアンに金額を告げる。あまりにも安く、リリアンは耳を疑った。
「ええ? こんなに大粒で、素敵な石なのに!」
「相場だよ。煙水晶はあまり人気がないんでねえ。もっとわかりやすく鮮やかな色の石や、ギラギラと輝く石が好まれる。だが、儂もこれはいい石だと思う」
「これにします!」
リリアンは即決した。会計を済ませると、店主はそっけなく包装し、リリアンに渡す。
「あの、私、リリアンといいます。エドモンってあなたのお名前ですか?」
「いかにも。儂はエドモンだ」
「これからもよろしくお願いします。エドモンさん」
リリアンは店主とこれからも長く付き合いたいのに、名乗っていなかったことに今更気づいたのだ。エドモンは「また何かあれば気軽に来ればいい、リリアン」と言った。エドモンがほんの少し微笑んでくれたことをリリアンは見逃さず、とても嬉しく思った。
「リリアンは何の魔石を選んだの?」
食堂へ向かう道すがら、アニエスが訊ねてくる。
「うん! 煙水晶にしたの!」
「煙水晶しかなかったの?」
「いろいろあったけど……。すっごく安かったし、一番安心したから!」
「安いって……」
二人の会話を聞いていたブノワがくすくす笑う。
「いいんじゃない? 石との相性は大事だし」
「そうだけど……」
「気に入ったものが安い。それはお買い得で、価値があるってことじゃない?」
ブノワの言葉にリリアンはほっとする。効果が高いと挙げられた黒水晶よりも、持っていて安心感のある煙水晶がいいと思った。その選択は間違っていないと肯定してもらった気がしたのだ。
「リリアン、見せてよ」
「うん!」
リリアンはアニエスに煙水晶を差し出す。横から覗き見たブノワは目を丸くする。
「え? 裸石なんだ?」
「ええ? 魔石って、アニエスみたいに袋に入れておくものじゃないの?」
アニエスは魔石をいくつかの袋に入れて持ち歩いている。ブノワが「そんな扱い方をしていると石に傷がつくぞ」と脅したが、「石は飾りじゃない。すぐに取り出せるように種類ごとに分けているし、実際に見て、ふれて、使ってこそでしょう!」と力強く言っていたのをリリアンは覚えていたのだ。
「あれは石オタクだから参考にならない。普通は装飾品にして身に着けるんだ。こんな風に」
ブノワはリリアンの目の前で両手を広げた。全ての指に指輪が嵌められている。どれもいぶし銀で、黒水晶が埋め込まれたものだ。リリアンはブノワに合っていると思った。リリアンから見たブノワは、最初に抱いたチャラい印象が薄れ、親しみやすくも本心が読めない頭脳派へと変わっている。
「ブノワ、魔石を加工してくれる店に、リリアンを案内してやってくれ」
ジェラールがそう言うと、ブノワは快諾した。
「煙水晶っていうんですか? この石」
「ああ。黒水晶ほど圧を掛けてこないが、守護の力は強い。穏やかで地道な石だ」
「ちなみに、おいくらですか?」
魔石には値札が付いていないので、手持ちの金で足りるか心配になったリリアンは訊ねた。店主はリリアンに金額を告げる。あまりにも安く、リリアンは耳を疑った。
「ええ? こんなに大粒で、素敵な石なのに!」
「相場だよ。煙水晶はあまり人気がないんでねえ。もっとわかりやすく鮮やかな色の石や、ギラギラと輝く石が好まれる。だが、儂もこれはいい石だと思う」
「これにします!」
リリアンは即決した。会計を済ませると、店主はそっけなく包装し、リリアンに渡す。
「あの、私、リリアンといいます。エドモンってあなたのお名前ですか?」
「いかにも。儂はエドモンだ」
「これからもよろしくお願いします。エドモンさん」
リリアンは店主とこれからも長く付き合いたいのに、名乗っていなかったことに今更気づいたのだ。エドモンは「また何かあれば気軽に来ればいい、リリアン」と言った。エドモンがほんの少し微笑んでくれたことをリリアンは見逃さず、とても嬉しく思った。
「リリアンは何の魔石を選んだの?」
食堂へ向かう道すがら、アニエスが訊ねてくる。
「うん! 煙水晶にしたの!」
「煙水晶しかなかったの?」
「いろいろあったけど……。すっごく安かったし、一番安心したから!」
「安いって……」
二人の会話を聞いていたブノワがくすくす笑う。
「いいんじゃない? 石との相性は大事だし」
「そうだけど……」
「気に入ったものが安い。それはお買い得で、価値があるってことじゃない?」
ブノワの言葉にリリアンはほっとする。効果が高いと挙げられた黒水晶よりも、持っていて安心感のある煙水晶がいいと思った。その選択は間違っていないと肯定してもらった気がしたのだ。
「リリアン、見せてよ」
「うん!」
リリアンはアニエスに煙水晶を差し出す。横から覗き見たブノワは目を丸くする。
「え? 裸石なんだ?」
「ええ? 魔石って、アニエスみたいに袋に入れておくものじゃないの?」
アニエスは魔石をいくつかの袋に入れて持ち歩いている。ブノワが「そんな扱い方をしていると石に傷がつくぞ」と脅したが、「石は飾りじゃない。すぐに取り出せるように種類ごとに分けているし、実際に見て、ふれて、使ってこそでしょう!」と力強く言っていたのをリリアンは覚えていたのだ。
「あれは石オタクだから参考にならない。普通は装飾品にして身に着けるんだ。こんな風に」
ブノワはリリアンの目の前で両手を広げた。全ての指に指輪が嵌められている。どれもいぶし銀で、黒水晶が埋め込まれたものだ。リリアンはブノワに合っていると思った。リリアンから見たブノワは、最初に抱いたチャラい印象が薄れ、親しみやすくも本心が読めない頭脳派へと変わっている。
「ブノワ、魔石を加工してくれる店に、リリアンを案内してやってくれ」
ジェラールがそう言うと、ブノワは快諾した。
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