【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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20. お買い物とジェラールの夢 ③

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 宿に戻るとリリアンはブノワの部屋を訪ねた。ブノワが「絶対に一人じゃないと嫌だ」と宣言しているので、男子達は別々の部屋に泊まっているのだ。
 ブノワが扉を開けたので、リリアンは言う。

「ブノワ! この背嚢に、火除けの魔法をかけてほしいの!」
「いいけど……。外に出る?」
「なぜ? ここで掛ければいいじゃない?」

 きょとんとした様子のリリアンに、ブノワは苦笑する。

「……まあいいか。そんなに手間はかからないし。おいで」

 リリアンはブノワの部屋に入る。着道楽で服がたくさんあるだろうとリリアンは思っていたのだが、無駄なものは何一つ置かれていない。

「もしかして、ブノワも魔法仕掛けの袋を持っているの?」
「え?」
「この背嚢、ジェラールに買ってきたんだけど、魔法仕掛けでいろんなものが入るの! ただ、燃えたら物が取り出せなくなるから、火除けの魔法を掛けてもらったらいいってお店の人に言われて。だからお願い!」
「なるほど。ジェラールのために買ったのか」

 ブノワは微笑むと、背嚢を受け取り、詠唱する。ブノワの手から青白い光が放たれ、背嚢を包み込んだ。しばらくして光が消えると、ブノワはリリアンに背嚢を返す。

「はい。これでいいよ。ジェラールなら外で槍の練習をしてるから、渡しに行ったらいい」
「ありがとう!」

 リリアンがブノワの部屋から出ようとした時、洒落た鞄が目に入った。嫌いな食べものリストを書いてくれた時に紙とペンを取り出した鞄。きっとこれが魔法仕掛けの鞄なんだ、とリリアンは納得した。

 リリアンが外に出ると、確かにジェラールはいた。槍は持参しているが地面に置いていて、本人も座っている。休憩中なのだろう。ちょうどいいとリリアンは思い、彼に駆け寄る。

「ジェラール! ちょっといいかしら?」
「大丈夫だが、どうかしたか?」
「よかったら使ってほしいものがあって、持ってきたの」

 リリアンは背嚢をジェラールに手渡す。ジェラールは不思議そうな表情でリリアンに訊ねた。

「これは?」
「あのね、ジェラールのために何も買ってないのがずっと気になっていて……。魔石の費用の残りで買ったの。よかったら使って!」

 ジェラールに気兼ねなく受け取ってもらえるように、リリアンは嘘を吐いた。
 魔石の料金がずいぶん安くついたので、リリアンは残額をジェラールに返金しようとしたのだ。けれどもジェラールは「必要経費として渡したのだから、残りも好きにしていい」と言い、頑として受け取らなかった。
 結局リリアンは残額をパーティー全体のために少しずつ使っている。リリアン個人のお金とは思えないので、好きにしていいなら、食材を少しいいものにしたり、野営用の天幕の修繕費用にしたり、みんなが少しでも心地よく過ごせるように使いたいと思ったのだ。

「背嚢ならもう持っているが?」
「いつも荷物を持ってもらっているから、もちろん知っているわ。これは、普通の背嚢ではないの。魔法仕掛けで、見た目よりも入るし、重さを感じないのよ」

 ジェラールは試しに槍を背嚢に入れてみた。明らかに背嚢より長い槍が、するすると吸い込まれる。持ち上げても確かに背嚢そのものの重さしか感じられず、ジェラールは感嘆の声を上げた。

「すごいな」
「でしょう? いつもパーティーの荷物を持ってもらっているから、よかったらジェラールに使ってもらえたらと思って」
「だが……こんなにすごいものなら、リリアンが使った方がよいのでは? 荷物が軽くて済むぞ」

 言われてみたらそうかもしれない、とリリアンは思う。むしろ、その方がジェラールに迷惑を掛けなくていいかもしれない、とも。だが、それではジェラールへの贈り物にならない。
 リリアンは方便を思いつき、そっと背嚢を手に取り、背負う。

「ほら、この背嚢は男性用だから、私が背負っても大きすぎるでしょう。それに……私はジェラールに贈りたくて買ったから、ジェラールが使ってくれたら嬉しいの」

 リリアンの言葉にジェラールは穏やかに微笑み、礼を言う。

「ありがとう。じゃあ、遠慮なく使わせてもらう」
「こちらこそ、いつもありがとう」
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