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21. お買い物とジェラールの夢 ④
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リリアンは背嚢を下ろすために、肩紐を腕から抜こうとした。だが、首飾りが引っ掛かり、なかなか抜けない。ジェラールはリリアンに動かないように言い、肩紐に絡んだ鎖をそっと解く。いいと言われたので、リリアンは無事に背嚢を下ろし、ジェラールに渡した。
「リリアンは、家族と仲がいいんだな」
「え? 確かに険悪ではないけど……」
仲がいいと言えるのかは微妙では、とリリアンは思う。リリアンとオーレルは一緒に出歩いたりしなかったし、内向的なオーレルの気持ちは今一つつかめないと思っていた。
「この首飾り、弟さんが作ってくれたんだろう? こんな美しい細工、大切に思ってないとできないんじゃないか?」
そう言われてリリアンは首飾りを外し、まじまじと見る。確かに美しい。出発以来ずっと着けていて、胸元は自分では見えないので、最近ではあまり意識しなくなっていた。
「ピンクの百合は『富と繁栄』って花言葉らしくて。餞として私の名前にちなんで、作ってくれたの」
「そうか。いいな、きょうだいがいるのは」
「ジェラールは一人っ子なの?」
「俺に……家族はいない。魔物に襲われて、俺だけが生き残った」
父親と母親、そして生まれるはずだったきょうだい、三人の命が一度に奪われた。ジェラールは母親に喜んでほしくて山に花を探しに行っていたため、難を逃れたのだ、という。
「その時摘んできたのが、その首飾りみたいなピンクの百合だったんだ。『富と繁栄』って意味なのか」
「……うん」
「俺にとっての富は、長生きすることだな」
リリアンはいたたまれなくなり、小さな声で言う。
「ごめんなさい」
「何が?」
「ジェラールの家族のこと、知らなくて……」
「謝ることはない。リリアンには言っていなかったし、知らないのは当然だろう」
ジェラールはさらりと言う。
「さびしい思いをするこどもが一人でも少なくなる世界にしたい。それに、俺の家族はもう生きてはいないけど、ずっと大切だ」
「私の母も亡くなっているけど、ずっと大切よ」
誰もが命の危険を感じずにのんびり過ごせる平和な世界にしたい、そのために戦っているのだとジェラールは言う。食堂でブノワとアニエスが言っていた「世界平和」の意味が重さを増した。
「ジェラールは平和な世界になったらどうしたいの?」
「そうだな……。ずっと殺したり壊したりばかりしてきたから、何か作り出すようなことをしたいな」
言っているジェラール自身に自虐の意識はないのかもしれないが、リリアンの胸は少し痛む。
「そんな。ジェラールが戦ってくれたおかげで、安全に暮らせるようになった人がたくさんいるのに」
「そう思ってくれるなら、戦ったかいがあるな」
ジェラールはしばらく黙っていたが、口を開く。
「あとは、誰よりも大切だと思える女性と所帯を持って、ずっとなかよく暮らしたいな。……それが俺の夢」
名の知れた勇者としては、本当にささやかな夢。だが、幼い頃に家族を亡くし天涯孤独で育ったジェラールにとって、おそらくとても重要で切実なものなのだとリリアンは感じた。
「そうなんだ。素敵ね!」
ジェラールはリリアンの言葉にはにかんだような笑みを浮かべ、槍の練習をしてくると言って立ち上がった。
「リリアンは、家族と仲がいいんだな」
「え? 確かに険悪ではないけど……」
仲がいいと言えるのかは微妙では、とリリアンは思う。リリアンとオーレルは一緒に出歩いたりしなかったし、内向的なオーレルの気持ちは今一つつかめないと思っていた。
「この首飾り、弟さんが作ってくれたんだろう? こんな美しい細工、大切に思ってないとできないんじゃないか?」
そう言われてリリアンは首飾りを外し、まじまじと見る。確かに美しい。出発以来ずっと着けていて、胸元は自分では見えないので、最近ではあまり意識しなくなっていた。
「ピンクの百合は『富と繁栄』って花言葉らしくて。餞として私の名前にちなんで、作ってくれたの」
「そうか。いいな、きょうだいがいるのは」
「ジェラールは一人っ子なの?」
「俺に……家族はいない。魔物に襲われて、俺だけが生き残った」
父親と母親、そして生まれるはずだったきょうだい、三人の命が一度に奪われた。ジェラールは母親に喜んでほしくて山に花を探しに行っていたため、難を逃れたのだ、という。
「その時摘んできたのが、その首飾りみたいなピンクの百合だったんだ。『富と繁栄』って意味なのか」
「……うん」
「俺にとっての富は、長生きすることだな」
リリアンはいたたまれなくなり、小さな声で言う。
「ごめんなさい」
「何が?」
「ジェラールの家族のこと、知らなくて……」
「謝ることはない。リリアンには言っていなかったし、知らないのは当然だろう」
ジェラールはさらりと言う。
「さびしい思いをするこどもが一人でも少なくなる世界にしたい。それに、俺の家族はもう生きてはいないけど、ずっと大切だ」
「私の母も亡くなっているけど、ずっと大切よ」
誰もが命の危険を感じずにのんびり過ごせる平和な世界にしたい、そのために戦っているのだとジェラールは言う。食堂でブノワとアニエスが言っていた「世界平和」の意味が重さを増した。
「ジェラールは平和な世界になったらどうしたいの?」
「そうだな……。ずっと殺したり壊したりばかりしてきたから、何か作り出すようなことをしたいな」
言っているジェラール自身に自虐の意識はないのかもしれないが、リリアンの胸は少し痛む。
「そんな。ジェラールが戦ってくれたおかげで、安全に暮らせるようになった人がたくさんいるのに」
「そう思ってくれるなら、戦ったかいがあるな」
ジェラールはしばらく黙っていたが、口を開く。
「あとは、誰よりも大切だと思える女性と所帯を持って、ずっとなかよく暮らしたいな。……それが俺の夢」
名の知れた勇者としては、本当にささやかな夢。だが、幼い頃に家族を亡くし天涯孤独で育ったジェラールにとって、おそらくとても重要で切実なものなのだとリリアンは感じた。
「そうなんだ。素敵ね!」
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