【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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24. 恋とはどんなものかしら ③

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「そろそろ本題に入ってもいいか」

 ジェラールが話を戻す。アニエスの状況を見て考えたのだろう、彼はできる限り簡潔に今回の案件の道順確認、懸念、必要物品等々を伝え、満場一致で解散ということになった。リリアンは「さすが、事務所から最短で立ち去れるように、毎回脳内で必要事項を組み立てていた人だ」と的外れなことを思った。

 リリアンとアニエスは連れ立って部屋に戻る。扉を閉め、リリアンはアニエスにそっと訊ねてみた。

「アニエスも、結婚が義務なの?」
「私は結婚を避けるために冒険者になったの」

 アニエスは淡々と返す。リリアンは勇気を出して訊ねた。

「よかったら、聞かせてほしい。ずっと気になっていたの。どうして二人は貴族なのに、わざわざ冒険者になったんだろうって。でも、詮索したい訳ではないの。無理には言わなくていい」

 貴族の、しかも女性が、わざわざ冒険者になることは普通ない。何か事情があるのだろうとはうすうす感じていたが、リリアンは聞けないままでいた。

「ブノワのことは知らない」

 リリアンの言葉にアニエスはやはり淡々と返す。話す気はないのだろうとリリアンが諦めかけた時に、アニエスはぼそりと続けた。

「なぜ聞きたいの?」
「友達だからよ……」

 おこがましかったかもしれないとリリアンは少しうつむく。貴族のアニエスは平民の自分のことを、友達とは思っていないかもしれないから。
 アニエスがごろりとベッドに横たわったので、リリアンもつられて隣のベッドに横たわる。

「ずっと一番になれなかった」

 アニエスは淡々と話す。いつもと変わらない調子のはずなのに、なんだか切実なものを感じて、リリアンはアニエスを見つめる。目が合ったので小さく頷くと、アニエスはほんの少し笑んだ。

「私は辺境伯の娘なの。姉と兄と弟がいる」

 辺境伯の娘。貴族の爵位について、リリアンはよくわからない。だが、国境を護る重要な地位であることは刀鍛冶の家業から知っているし、アニエスの剣捌きにも納得がいった。

「姉は、典型的な貴族女性。たくさんの求婚者から一番条件のよい伯爵家を選んで嫁いでいった。あまり気が合わなかったし、実家にもほとんど帰ってこないから、よくわからない。兄とは仲がよかったし、補佐ができたらと思って、幼い頃から剣技を磨いたわ。でも、兄は弟の稽古は付けても、私には無理するなと言って見てくれなかった。戦場では、弟より、活躍したのに」

 リリアンの胸はずきんと痛む。

「騎士団に所属する魔術師に魔力の所持量が多いって言われたの。武術は見てもらえなくても、魔術なら一番になれるかもしれないし、役に立てるかもしれない。そう思って、必死に勉強して、王都の学院に編入したの。でも、魔術科にはブノワがいて、どうしても、首位を取れなかった」
「ブノワとはもともと知り合いだったの!」
「当時からあの調子で飄々としていて、全然歯が立たなくて、悔しかった」

 きっと、ブノワは努力している姿など全く見せずに、優雅にさらりとこなしていたのだろう。血のにじむような努力を繰り返していただろうアニエスの悔しい気持ちは、リリアンにも想像がついた。

「悔しかったから、神学科に転科したの。首席で卒業したわ」
「わあ! すごい! おめでとう! よくがんばったね!」
「そんなこと言ってくれたの、リリアンだけよ」
「え……」

 アニエスは微笑むが、リリアンの気持ちは沈んでしまう。せっかく首席を取ったのに、家族は誰も褒めてくれなかったのだろうか、と。
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