【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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25. 恋とはどんなものかしら ④

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「卒業と同時に、実家に帰って来いって言われたの。お前にはもったいないくらいの求婚状も届いているから、結婚しろって」
「……お相手は?」
「知らない。釣り書きも読まなかった。私の人生には関係ないから」

 アニエスがこてんと頭を横に倒したので、リリアンには表情が見えなくなった。

「実家の駒としては役立てるのかもしれない。でも、私は私自身を認めてほしいし、自分の力を活かして生きていきたかった。学院になんとか職を斡旋してもらえないか頼んだけど、実家が手を回したのか、駄目で。首席なんて、まるで意味がない」
「それで、冒険者に」
「紹介状がないから、冒険者ギルドもなかなか登録できなくて、拾ってくれたのは『白い死神』だけだった」

 奇しくも似た流れで「白い死神」に辿り着いているが、アニエスの場合は他に手がなかったことがリリアンにもわかり、いたたまれなかった。自分のように考えなしに無謀な動きを取った訳ではなく、どんどん選択肢が奪われていった結果だ、とリリアンは胸が痛くなる。

「ブノワとはどうやって再会したの? 連絡取ってたの?」
「まさか。連絡先なんて全然知らなかった。なかなかいい案件を紹介してもらえずに困っていたら、魔術師とパーティーを組まないかと事務所から打診されたの。会ってみたらブノワで、びっくりしたわ」
「すごい偶然もあったものね」
「悔しいけれど、ブノワの実力は確かだし、生きるために利用してやろうと思ったの。手を組んだ理由は、それだけ」

 リリアンは少し考える。実力のあるアニエスとは違い、自分にできることは雑用だけだ。でも、自分にできることで生きていきたい気持ちはわかるし、何か成し遂げられたらという思いもある。せめて力になりたいと伝えたくて、リリアンは口を開く。

「私はたいしたことはできないけれど、仲間としてアニエスに協力したいと思っているわ」
「……友達でしょう?」
「うん……!」

 相変わらずアニエスの顔は見えないけれど。距離が少し近づいた気がして、リリアンはとても嬉しく思った。



 翌日、アニエスが再び石の見本市へ行くのを見送った後、リリアンはいそいそと包みを開けた。

「わあ、可愛い……!」

 店の雰囲気が洗練された大人の印象であったし、店長も「甘くなりすぎない」と言っていたので、リリアンは飾り気のないものになるのだろうと予想していた。布がとても可愛らしいので、それで充分だと思ってもいた。

 実際に出来上がったものは、リボン結びの飾りがついた意匠で、中心に煙水晶スモーキークオーツが据えられていた。リボン結びが型崩れせず邪魔にもなりにくいように、本当に結ぶのではなく布を縫い合わせて成形している。金具を嵌めるだけで着脱できるようになっているのも利便がいい。腰巻の縁には同じ布でプリーツがあしらわれていて、可愛らしい上にレースよりも丈夫そうだ。こんなに素敵に仕上げてくださるなんて、店長さんにお任せして本当によかったとリリアンは思う。

 リリアンはさっそく腰巻を着け、姿見に映してみる。リリアンの普段着は本当に簡素なので、少しだけ腰巻が目立つ。でも、リリアンの顔立ちには似合っているように感じた。
 眺めているだけでどきどきするし、実際に身に着けると更に嬉しい。もしかすると、恋をしたらこんな風にときめくのかもしれない。恋を知らないリリアンは、そんな風に想像を巡らせた。
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