【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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26. 恋の吊り橋理論 ①

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 今回の依頼主は王立植物研究所だ。「世界の果ての薬草」は実在する。ただ、標高の高い場所に少数しか生息していないし、あまり保存が利かない。研究者は人工繁殖の仕組みと保存方法を長い時間を費やして考え、一応の解を出した。ただし理論値でしかないので、成功するかはわからない。

 実験するためにこれまでよりもたくさんの採集が必要で、費用を出してくれるよう、研究所は王に申し出た。だが「魔物が跋扈し周辺国との小競り合いが絶えない現状ではいくら金があっても足りない。よって、確実性がないものに国費は出せない」と却下されてしまったのだ。世知辛い話である。予算申請を諦めた研究所は群衆からの資金調達クラウドファンディングに頼り、今回の依頼に充てた、とリリアンは聞いている。

 研究者は、民話の「騎士が極寒の山へ向かい、薬草が枯れてしまわないように水の魔法がかけられた籠に入れる」という場面に目を向けた。「世界の果ての薬草」が実在する以上、これはただのおとぎ話ではなく、記録であり手掛かりなのだと考えたのである。つまり、温度と湿度と密閉が鍵なのではないか、と。

 これまで研究所の採集は春の半ばに行われていた。生息地までただでさえ険しい道のりなので、暑すぎず寒すぎない時季なら研究者の体力を無駄に消耗せずに済むと考えたのである。植物なので水分には気を使っていたが、温度と空気との接触にはそこまで注意を払っていなかった。

 今回、あえて晩夏に計画を実行するのは、研究者の意地である。冷気と湿度の調整が利き真空状態を保てる魔法仕掛けのはこに採集する。これで駄目ならば、もうこの計画は無に帰してもいい。どうせ国から費用は出ない。リリアンが受付嬢から資料と一緒に聞いた事情はここまでである。

「ブノワはまた遅刻なの?」
「大丈夫かしら?」
「肝心の匣を作るのがブノワの役目だからな。大変なんだろう」
「……本当に面倒だった」

 先に待っていた三人の前にブノワがあらわれた。いつも飄々としている彼が、珍しく目の下に隈を作り、顔色も冴えない。

「はい。この函、重いし、天地無用だから。ジェラールが持って」
「わかった」

 ジェラールは匣を受け取ると、背嚢の中へ丁寧にしまった。
 そこからは登山である。いつもみんなで移動する時は楽しい話をしてくれるブノワが、今日はひたすら黙々と歩き続けている。大丈夫かしら? やはり体調が気になってリリアンがチラチラ見ていると、ブノワはあからさまに眉をひそめた。本当に珍しいなと思い、リリアンは目線を辿る。
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