【R18】君に長寿と繁栄を~淫紋を解呪するたったひとつの冴えたやりかた~

テキイチ

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34. すさんだ町 ③

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 ジェラールがもう一度概要をまとめてくれる。
 被害は十数件。シリウスが出没するのはほとんど夜だ。被害者はほとんど若い男性で、噛みつかれ、火を噴かれ、大怪我を負っている。シリウスに襲われた心当たりを訊ねても、「何もしていないのに急に襲われた」と異口同音に言っているとのこと。リリアンはジェラールの言い方が気になって訊ねる。

?」
「一件だけ、昼に被害にあった人がいる。この方だけ女性だ」
「何が違ったのかしら?」
「わからない。この方はパンを奪われている」
「あら?」

 アニエスが入口を見て声を上げるので、二人も振り向く。ブノワだ。

「ああ、ちょうどよかった。ジェラール、パンとおかずをくれない?」

 食堂の前で別れてから、まだ四半刻三十分程度しか経っていない。ジェラールは乞われるままに背嚢からパンと保存食を出し、ブノワへ渡す。

「これでいいか?」
「ありがとう」

 ブノワは受け取るともそもそ食べる。酒場で過ごしたにしてはあまりにも早いので、思わずリリアンは訊ねた。

「ブノワ? 飲みに行ったんじゃなかったの?」
「行ったけど。不味かったから、出てきた」
「残念だったわね。次のお酒はあたりだといいけど」
「……いや、もういいかな」

 酒好きなブノワにしては珍しい、とリリアンは思う。ブノワは食べ終えると、「部屋に戻ってもう寝るから、詳細は明日教えて」と言い、立ち去った。

「相変わらず自由だな……」
「ブノワは一を聞いて十を知るタイプだし、私と違ってすぐ的確に動けるから」
「リリアンは言われたことをきちんとこなしているし、細やかな気配りに助けられているわ」

 アニエスに気配りと言われ、さっきまでブノワがいた席が少し気になった。他に人がいないとはいえ、持ち込んだものを食べてよかったのか、と。リリアンは受け付けにいる宿屋の主人をそっと見る。口の端を少しだけ上げた主人と目が合い、リリアンは思わずびくりとした。注意こそされないが、見られている。早く立ち去った方がいい、とリリアンは思い、気になった点を伝える。

「ありがとう。私は明日、聞き取り調査をした方がいいと思ったの」
「聞き取り調査? 誰に?」
「女性の被害者と道沿いの民家に。状況確認がしたいし、資料に書かれていない情報が得られるかもしれないから」
「確かに今のままだとシリウスがいつどこに出没するかわからないから効率が悪い。聞き取り調査をすれば情報を絞り込めるかもしれないな」
「あと、結構長居したから、もう解散した方がいいと思うわ」

 三人は宿屋の主人に休憩所を使わせてくれた礼を言い、部屋へ戻る。主人は相変わらず口の端を少しだけ上げていた。
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