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本編
11 夏の麻 ⑥
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☆+゜*。:゜☆゜:。*゜+☆
ミウちゃんがいなくなったはねやでツバサくんはぼんやり店番をしています。
「ただいま」
「ミウちゃん! 心配したんだよ。帰ってこなかったらどうしようと思ってた」
ツバサくんが言うと、ミウちゃんはさらりと返します。
「ツバサのために旅に出たんだから、帰ってくるに決まってる」
「み、店だって開けっぱなしで! 不用心!」
「開けとかないとツバサが入れないし、置き手紙も見られないじゃない」
「と、扉に貼っておくとか……」
「そうしたら、ツバサ、拒絶されたと思って無駄に悲しんだり、面倒なことになるでしょ」
意外と見抜かれている。
くやしいのにうれしい、そんな奇妙な気持ちを、ツバサくんはゆっくり味わいました。
ミウちゃんは背中に抱えた麻袋をおろします。
ふくらんだ麻袋を開くと、中から出てきたのはたくさんの虹色の羽です。
「この羽ならきっと折れた翼も大丈夫」
ツバサくんの翼に、ミウちゃんは丁寧に美しい羽を埋め込んでくれます。この羽は誂えたようにぱちんとハマります。白い翼に一筋の虹がかかったようです。
そっと翼を動かしてみると、きちんと動きました。
「動いた! ぼく、また飛べるんだね」
「翼、捨てなくてよかったね」
ツバサくんはお礼にミウちゃんを抱えて空を飛びました。再び飛べたことよりも、ミウちゃんが空の旅を喜び、楽しそうな顔をしているのが、ツバサくんはずっとずっと嬉しかったのでした。
☆+゜*。:゜☆゜:。*゜+☆
翌朝、爽やかな気分で目が覚めた。隣を見ると、美羽は気持ちよさそうに安眠している。去年の夏、寝苦しそうだったから、今年はシーツを麻にした。作戦成功。
美羽はいつでも低空飛行だ。夏はぐったりしてるし、冬はこたつか布団で丸まってるし、春と秋はぼんやりしている。調子のいい時がないのか。
「幸せそうな顔して」
思わず頬をつつく。やわらかい。
美羽は何事にも無頓着で、自分にも手を掛けない。これからも気づかれないうちに、心地よく過ごせるようにしていこう。
「とりあえず、美羽が寝てる間に、なんか旨いもん作るか」
夏は簡単に食事抜いちゃうからな、こいつ。栄養あるもん食わせないと。気合い入れて作ろう。
美羽の耳にそっとくちづける。
俺は鼻歌を口ずさみながら、ベッドを後にした。
ミウちゃんがいなくなったはねやでツバサくんはぼんやり店番をしています。
「ただいま」
「ミウちゃん! 心配したんだよ。帰ってこなかったらどうしようと思ってた」
ツバサくんが言うと、ミウちゃんはさらりと返します。
「ツバサのために旅に出たんだから、帰ってくるに決まってる」
「み、店だって開けっぱなしで! 不用心!」
「開けとかないとツバサが入れないし、置き手紙も見られないじゃない」
「と、扉に貼っておくとか……」
「そうしたら、ツバサ、拒絶されたと思って無駄に悲しんだり、面倒なことになるでしょ」
意外と見抜かれている。
くやしいのにうれしい、そんな奇妙な気持ちを、ツバサくんはゆっくり味わいました。
ミウちゃんは背中に抱えた麻袋をおろします。
ふくらんだ麻袋を開くと、中から出てきたのはたくさんの虹色の羽です。
「この羽ならきっと折れた翼も大丈夫」
ツバサくんの翼に、ミウちゃんは丁寧に美しい羽を埋め込んでくれます。この羽は誂えたようにぱちんとハマります。白い翼に一筋の虹がかかったようです。
そっと翼を動かしてみると、きちんと動きました。
「動いた! ぼく、また飛べるんだね」
「翼、捨てなくてよかったね」
ツバサくんはお礼にミウちゃんを抱えて空を飛びました。再び飛べたことよりも、ミウちゃんが空の旅を喜び、楽しそうな顔をしているのが、ツバサくんはずっとずっと嬉しかったのでした。
☆+゜*。:゜☆゜:。*゜+☆
翌朝、爽やかな気分で目が覚めた。隣を見ると、美羽は気持ちよさそうに安眠している。去年の夏、寝苦しそうだったから、今年はシーツを麻にした。作戦成功。
美羽はいつでも低空飛行だ。夏はぐったりしてるし、冬はこたつか布団で丸まってるし、春と秋はぼんやりしている。調子のいい時がないのか。
「幸せそうな顔して」
思わず頬をつつく。やわらかい。
美羽は何事にも無頓着で、自分にも手を掛けない。これからも気づかれないうちに、心地よく過ごせるようにしていこう。
「とりあえず、美羽が寝てる間に、なんか旨いもん作るか」
夏は簡単に食事抜いちゃうからな、こいつ。栄養あるもん食わせないと。気合い入れて作ろう。
美羽の耳にそっとくちづける。
俺は鼻歌を口ずさみながら、ベッドを後にした。
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