寿命が来るまでお元気で

ゆれ

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 村のためにご尽力いただくのですからこのくらいは当然ですと有り難い申し出があり、ふたりは村長の屋敷に逗留させてもらえることになった。湯をいただき、食事を済ませて、与えられた客間で寛ぐ。我が家よりも数段立派な風呂や夕餉にまごつきながらも、これはただの行楽などではないので来良は集めた事実を頭の中で整理していた。
 ほんとうに片時も離れようとしないため、こうして仕事で家を空けることも想定し、人間らしい自然な振る舞いに慣れさせていただけあって朱炎は今のところ疑られていないようだ。兄弟と呼ぶには容姿が似ておらず助手で通したらちょっとむくれていたのが可愛い。よもや馬鹿正直につがいの相手だなんて言えるわけがない。中身は年齢という概念の通用しない存在でも仮初めの姿は少年なのだ。へたをすると来良が咎められてしまう。

「うーん……やっぱり俺にはあやかしじゃねえように思える」
「おん」

 結界の御蔭で低級なものには姿もみえなくなっているらしいが、気配ごと感じないのだから恐らく存在してないだけだろうと思われた。朱炎の妖気に怖れをなしてなりをひそめている可能性はまだ潰せてないけれど、それは明朝にでもうまくすれば判明するかもしれない。昼間訪ねた家はすべて娘達に監視をつけるよう頼んであるので、当面その結果を待つくらいしかすることはなかった。
 まだ青い香りもただよう新しい畳の上に見るからにふかふかの布団が二組、若干離して敷いてある。移動の疲れもあって誘惑を撥ね退けるのは難しかった。いつもよりかなり早い時間だが眠ってしまうかと欠伸をかみ殺しつついざっていくと、何かが腰に取りついてくる。

「なんだよ?」
「腹減った」
「えー……」

 変化へんげしている時はくちから食べられるけれど、あやかしの主食はあくまで精気なので満たされることはないらしい。なまの死骸ならまだしも丁寧に調理したものではほとんど残ってない。しかも朱炎のような上級のあやかしともなれば死骸ですらくちには合わず、幸か不幸か来良のそれがお気に召したわけなのだが。

「イヤここ人んちだから」
「結界張りゃあいいだろうが」

 面倒くさそうに答えながらもう青年の姿へ揺らいで変わっていくので不穏で仕方ない。合わせをかいくぐって浴衣の中に侵入してきた手が、まだやわらかい来良の茎を握り込む。ささやかな体温をすりつけるみたいに指を動かされてピクンと反応してしまった。

「……ッあ、」

 ゆっくりと畳に寝かされて、不埒な手遊びはやめないまま朱炎も並んで横たわりくちを吸ってくる。はぐはぐと下唇を食まれる子どもっぽい手管とは裏腹に指は的確に来良を追い上げ、早くも水っぽい音がしだすのに頬が上気した。
 客人の動向に聞き耳を立てるような不躾な家人はいないだろうが、自宅じゃない場所で秘め事をして平気でいられるほど常識をかなぐり捨てた覚えはない来良にはそういう問題でもない。そのくせ身体はいつもより昂って、あっという間に充填を終えた。白皙の美貌をもった青年に赤い舌で熱心に舐られ、あつく潤んだ粘膜で包み込まれれば誰だってどんな聖人だってそうなると言いたい。

 敏感なくびれを指で弾かれたり強めの加減で幹を扱かれたりと奉仕は惜しみない。借り物の衣服や部屋を汚さないためにはそれが早道とわかってはいるが、股座に躊躇なく顔をうずめられ、深々と喉奥まで咥え込まれてはひとたまりもなかった。そもそも来良は平生からそういう欲に馴染みがなく、それどころではなく、ひたむきに清廉に生きてきたのだ。ここへきてまさかこんなにも淫蕩に耽る羽目になるとは両親に合わせる顔がない。未だに何故か舌の上に浮いている開の文字に責められるようで、来良はきつく眉根を寄せるとぐっと奥歯を噛んだ。

「ぁび、もう、……んっ、よせ」

 てめえがさっさと達けとばかりに穂先に舌を捩じ込まれる。びりっと痛みにも似た快感に襲われたと思うと胴が震えて、気づけば朱炎の喉に射ち出していた。

「……ふっ、……~~ッッぁうっ!」
「んく、」
「はぁっ……は、ああ……」

 全身のこわばりが一遍に弛緩してくったりと畳に投げ出される。敏感になった銃口をじゅうっと勢いよく吸い上げられ、残滓も分泌液も何もかも搾り取られた。来良を丹念に舐めてきれいにすると今度は己の指の股まで徹底的にしゃぶるものだから見ていられない。照れ散らかす主などまったく頓着せずに、朱炎は満足そうに笑んで少年の姿に戻った。

 まだしどけなく脚をさらしたまま放心していると白い子どもがじっと窓のほうを見る。這っていって覗き込むとこんな時間に誰かが出掛けていくのが見え、一瞬で手足に力が戻った。黒い長着を羽織って歩きながら帯を締める。念のため護符ふだも携えて急いであとを追う。尾行に明かりを持っていくわけにはいかないので素早く目印を決めた。
 長い黒髪に赤い紐が揺れている。楚々とした後ろ姿はたぶん村長の一人娘・幸芽こうめのものだろう。

「う、わっ」
 
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