27 / 293
第一章 スパイダー
27.
しおりを挟む
「優しくされたくないんだろ?」
僕は笑うと、横へ押し倒すようにして笑香をベッドに押しつけた。笑香はもちろん全力であらがったが、思っていたよりすぐに力つきてしまう。
「もう抵抗しないのか?」
ぐったりと倒れる笑香の姿に、僕は初めて自分の腕力を実感した。
子供の頃は笑香の方が僕より大きかったのに。
両手を押さえて抵抗をふせぎ、組み伏せた笑香を真上から見下ろす。大きくあえいで息を吐き出し、笑香は僕を見ようともしない。僕はわずかに苦笑した。
「ほら、肩が震えてる。怖いなら怖いって言えばいいのに」
のしかかろうとした瞬間、笑香がぽつりとつぶやいた。
「ほんとうは、やさしいひとなのに……」
思ってもいなかった反応に、僕は一瞬動きを止めた。
「あなたは、いつも優しくて……。いつも私のそばにいてくれて、私のことを守ってくれて」
僕を見上げて言葉を重ねる。
「私はずっとあなたのことが好きだった」
「やめろ」
僕は吐き捨てた。
「買いかぶるな。今までの僕は全部演技だ。そんなの本当の僕じゃない」
「違うわ」
笑香は強く否定すると、凛とした口調で言葉を続けた。
「十年間もただ嘘だけで演じ続けられるわけがない。わたしだって……そうよ、私だってずっとあなたのそばにいたのよ。今の史郎君が本当だとしても、ずっと一緒にいてくれたあの史郎君だって嘘じゃない。──私は史郎君が好き。本当に、あなたのことが好きなの」
再び僕から視線をそらす。
「お願い……私に好きでいさせて。もうこれ以上、ひどいことしないで……」
僕は奥歯を噛みしめた。笑香の手首を押さえた指が、容赦なくその肌に食い込む。
「嘘をつくな」
笑香が痛そうに眉をしかめる。
僕は息だけでつぶやいた。
「そんなわけがない。そんなこと、誰が信じるか! ──僕はあんなふうにはならない。あんな……、あんな母親みたいに全部をなくすことはしない‼」
「し……ろうくん……?」
笑香が大きく瞳を見開く。僕はその上におおいかぶさった。
「い──や、あ‼」
笑香は叫び、激しく背中をのけぞらせた。僕は強引に笑香を抱きしめ、その唇を奪った。深く唇を重ね合わせて無理やり舌を差し入れる。
「う……!」
次の瞬間、僕はうめくとはじかれたように体を離した。笑香が舌に噛みついたのだ。
笑香はずるずると身を引くと、息を切らして僕のベッドの背もたれへともたれかかった。開かれたシャツの前を合わせ、大きな瞳で僕を凝視する。そのまなじりから涙が一筋こぼれ落ちた。
笑香に噛まれた舌先で僕は自分の唇を舐めた。唾液に鉄の味が混じる。
「──今日はまだいい」
僕は低く言い置いた。
「今日は、まだ許すよ。逃げることも、拒否することも。……でもあらかじめ言っておく。夏休みが始まったら、今度こそ僕は君を抱くよ。それだけは覚えておいてくれ」
ゆっくりと自分の身を起こし、笑香がのったベッドから離れる。
非情な僕の宣告に、僕を見上げた笑香の双眸は絶望の色で蝕まれていた。
僕は笑うと、横へ押し倒すようにして笑香をベッドに押しつけた。笑香はもちろん全力であらがったが、思っていたよりすぐに力つきてしまう。
「もう抵抗しないのか?」
ぐったりと倒れる笑香の姿に、僕は初めて自分の腕力を実感した。
子供の頃は笑香の方が僕より大きかったのに。
両手を押さえて抵抗をふせぎ、組み伏せた笑香を真上から見下ろす。大きくあえいで息を吐き出し、笑香は僕を見ようともしない。僕はわずかに苦笑した。
「ほら、肩が震えてる。怖いなら怖いって言えばいいのに」
のしかかろうとした瞬間、笑香がぽつりとつぶやいた。
「ほんとうは、やさしいひとなのに……」
思ってもいなかった反応に、僕は一瞬動きを止めた。
「あなたは、いつも優しくて……。いつも私のそばにいてくれて、私のことを守ってくれて」
僕を見上げて言葉を重ねる。
「私はずっとあなたのことが好きだった」
「やめろ」
僕は吐き捨てた。
「買いかぶるな。今までの僕は全部演技だ。そんなの本当の僕じゃない」
「違うわ」
笑香は強く否定すると、凛とした口調で言葉を続けた。
「十年間もただ嘘だけで演じ続けられるわけがない。わたしだって……そうよ、私だってずっとあなたのそばにいたのよ。今の史郎君が本当だとしても、ずっと一緒にいてくれたあの史郎君だって嘘じゃない。──私は史郎君が好き。本当に、あなたのことが好きなの」
再び僕から視線をそらす。
「お願い……私に好きでいさせて。もうこれ以上、ひどいことしないで……」
僕は奥歯を噛みしめた。笑香の手首を押さえた指が、容赦なくその肌に食い込む。
「嘘をつくな」
笑香が痛そうに眉をしかめる。
僕は息だけでつぶやいた。
「そんなわけがない。そんなこと、誰が信じるか! ──僕はあんなふうにはならない。あんな……、あんな母親みたいに全部をなくすことはしない‼」
「し……ろうくん……?」
笑香が大きく瞳を見開く。僕はその上におおいかぶさった。
「い──や、あ‼」
笑香は叫び、激しく背中をのけぞらせた。僕は強引に笑香を抱きしめ、その唇を奪った。深く唇を重ね合わせて無理やり舌を差し入れる。
「う……!」
次の瞬間、僕はうめくとはじかれたように体を離した。笑香が舌に噛みついたのだ。
笑香はずるずると身を引くと、息を切らして僕のベッドの背もたれへともたれかかった。開かれたシャツの前を合わせ、大きな瞳で僕を凝視する。そのまなじりから涙が一筋こぼれ落ちた。
笑香に噛まれた舌先で僕は自分の唇を舐めた。唾液に鉄の味が混じる。
「──今日はまだいい」
僕は低く言い置いた。
「今日は、まだ許すよ。逃げることも、拒否することも。……でもあらかじめ言っておく。夏休みが始まったら、今度こそ僕は君を抱くよ。それだけは覚えておいてくれ」
ゆっくりと自分の身を起こし、笑香がのったベッドから離れる。
非情な僕の宣告に、僕を見上げた笑香の双眸は絶望の色で蝕まれていた。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる